上 下
463 / 499
第4章 更なる戦い

第462話 ゲーム会場へようこそ102

しおりを挟む
「さて・・・今回の参加者の皆様方に敬意を表して・・・難易度をもう一段階上げましょうか」
 メイドさんの瞳が胡乱な輝きを帯びていた。彼女の口角は釣り上げられており、彼女がゲーム制作者として「いかに楽しんでいるのか」がよく表れているとも言えた。
「グルルルル」
「ガルルルル」
 傍らでお座りしている双子もどこか愉快気に唸り声をあげている。主人の愉悦を感じ取っているからだろう。ご主人様の喜びは、彼女たちにとっても喜びなのだ。
「フフフ・・・」
 メイドさんの脳裏に、かつて大会運営側とかわしたとある約束事がよぎっていた。

 メイドさんことー山下奈々がこの大会で殺害した少女の人数は、既に10人以上ーつまりは2桁に達している。この大会の中では、間違いなく成績上位者である彼女は、ある日、運営側から話を持ち掛けられたのだった。
 内容は「次作ゲーム」についてーだった。
「やあ、君が山下さんだね」
 奈々が、初めて結城司を目にした印象はー男か女かどっちなのかわからないーというものだった。全身を漆黒のローブに身を包み、フードも目深にかぶっていて、かすかに笑みを浮かべた口元しか顔を確認できない。声も、声変わり前の少年とも、少々低めの声の少女ともとれるもので、つい今しがた声をかけられたくらいではどっちなのかも判別できなかった。年齢的に若いのは確かだが、それ以外に男女を分ける特徴となるものが見当たらない。ローブを着込んでいることもあって、体型もいまいちよくわからず、背丈も、男でも女でもありそうなくらいのものー
「・・・こうして直接挨拶をかわすのは初めてだね。もちろん、僕らは大会の開会式の時に君たちのことを拝見させてもらったけど」
 どこか砕けた口調で語り掛けてくる司に対し、奈々は鋭い視線を向けた。
 既に10人以上、人の首を刎ねてきた身だ。既に、自分以外の人間は敵としか思えなくなっていたのだった。
 最初の1人を手にかけた時は、奈々も心が折れそうになった。何せ、このアルカディア島に来る前まで、日本で普通に暮らしてきたのだ。まあ、普通と少し違うと言っても、せいぜいが不良娘といったくらいのものだった。当然ながら、他者を傷つけることがあったとしても、相手を殺害して、ましてやその首を斬るなどということは、当時では考えられなかった。
 ゆえに、あの一条紗耶香の起こした事件を知った時は、さすがの彼女も戦慄したものだったーいくら自分が不良娘であったとしても、さすがにここまでのことはできないー
 だが、このアルカディア島に来て、自分が生き残るために、実際に一条紗耶香と同じことをした時、彼女の中の何かのスイッチが入ってしまった。
 最初の1人目の時は、吐きそうになった。2人目の時は、体に震えが走って止まらなかった。だが、3人目の時には、自分でも信じられないくらいに、落ち着いていた。自分の犯した殺害行為について、どこか俯瞰的に捉えている自分の姿があった。
 それ以降は、止まらなくなったー気が付いた時には、もうやめられなくなっていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...