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第4章 更なる戦い
第462話 ゲーム会場へようこそ102
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「さて・・・今回の参加者の皆様方に敬意を表して・・・難易度をもう一段階上げましょうか」
メイドさんの瞳が胡乱な輝きを帯びていた。彼女の口角は釣り上げられており、彼女がゲーム制作者として「いかに楽しんでいるのか」がよく表れているとも言えた。
「グルルルル」
「ガルルルル」
傍らでお座りしている双子もどこか愉快気に唸り声をあげている。主人の愉悦を感じ取っているからだろう。ご主人様の喜びは、彼女たちにとっても喜びなのだ。
「フフフ・・・」
メイドさんの脳裏に、かつて大会運営側とかわしたとある約束事がよぎっていた。
メイドさんことー山下奈々がこの大会で殺害した少女の人数は、既に10人以上ーつまりは2桁に達している。この大会の中では、間違いなく成績上位者である彼女は、ある日、運営側から話を持ち掛けられたのだった。
内容は「次作ゲーム」についてーだった。
「やあ、君が山下さんだね」
奈々が、初めて結城司を目にした印象はー男か女かどっちなのかわからないーというものだった。全身を漆黒のローブに身を包み、フードも目深にかぶっていて、かすかに笑みを浮かべた口元しか顔を確認できない。声も、声変わり前の少年とも、少々低めの声の少女ともとれるもので、つい今しがた声をかけられたくらいではどっちなのかも判別できなかった。年齢的に若いのは確かだが、それ以外に男女を分ける特徴となるものが見当たらない。ローブを着込んでいることもあって、体型もいまいちよくわからず、背丈も、男でも女でもありそうなくらいのものー
「・・・こうして直接挨拶をかわすのは初めてだね。もちろん、僕らは大会の開会式の時に君たちのことを拝見させてもらったけど」
どこか砕けた口調で語り掛けてくる司に対し、奈々は鋭い視線を向けた。
既に10人以上、人の首を刎ねてきた身だ。既に、自分以外の人間は敵としか思えなくなっていたのだった。
最初の1人を手にかけた時は、奈々も心が折れそうになった。何せ、このアルカディア島に来る前まで、日本で普通に暮らしてきたのだ。まあ、普通と少し違うと言っても、せいぜいが不良娘といったくらいのものだった。当然ながら、他者を傷つけることがあったとしても、相手を殺害して、ましてやその首を斬るなどということは、当時では考えられなかった。
ゆえに、あの一条紗耶香の起こした事件を知った時は、さすがの彼女も戦慄したものだったーいくら自分が不良娘であったとしても、さすがにここまでのことはできないー
だが、このアルカディア島に来て、自分が生き残るために、実際に一条紗耶香と同じことをした時、彼女の中の何かのスイッチが入ってしまった。
最初の1人目の時は、吐きそうになった。2人目の時は、体に震えが走って止まらなかった。だが、3人目の時には、自分でも信じられないくらいに、落ち着いていた。自分の犯した殺害行為について、どこか俯瞰的に捉えている自分の姿があった。
それ以降は、止まらなくなったー気が付いた時には、もうやめられなくなっていたのだ。
メイドさんの瞳が胡乱な輝きを帯びていた。彼女の口角は釣り上げられており、彼女がゲーム制作者として「いかに楽しんでいるのか」がよく表れているとも言えた。
「グルルルル」
「ガルルルル」
傍らでお座りしている双子もどこか愉快気に唸り声をあげている。主人の愉悦を感じ取っているからだろう。ご主人様の喜びは、彼女たちにとっても喜びなのだ。
「フフフ・・・」
メイドさんの脳裏に、かつて大会運営側とかわしたとある約束事がよぎっていた。
メイドさんことー山下奈々がこの大会で殺害した少女の人数は、既に10人以上ーつまりは2桁に達している。この大会の中では、間違いなく成績上位者である彼女は、ある日、運営側から話を持ち掛けられたのだった。
内容は「次作ゲーム」についてーだった。
「やあ、君が山下さんだね」
奈々が、初めて結城司を目にした印象はー男か女かどっちなのかわからないーというものだった。全身を漆黒のローブに身を包み、フードも目深にかぶっていて、かすかに笑みを浮かべた口元しか顔を確認できない。声も、声変わり前の少年とも、少々低めの声の少女ともとれるもので、つい今しがた声をかけられたくらいではどっちなのかも判別できなかった。年齢的に若いのは確かだが、それ以外に男女を分ける特徴となるものが見当たらない。ローブを着込んでいることもあって、体型もいまいちよくわからず、背丈も、男でも女でもありそうなくらいのものー
「・・・こうして直接挨拶をかわすのは初めてだね。もちろん、僕らは大会の開会式の時に君たちのことを拝見させてもらったけど」
どこか砕けた口調で語り掛けてくる司に対し、奈々は鋭い視線を向けた。
既に10人以上、人の首を刎ねてきた身だ。既に、自分以外の人間は敵としか思えなくなっていたのだった。
最初の1人を手にかけた時は、奈々も心が折れそうになった。何せ、このアルカディア島に来る前まで、日本で普通に暮らしてきたのだ。まあ、普通と少し違うと言っても、せいぜいが不良娘といったくらいのものだった。当然ながら、他者を傷つけることがあったとしても、相手を殺害して、ましてやその首を斬るなどということは、当時では考えられなかった。
ゆえに、あの一条紗耶香の起こした事件を知った時は、さすがの彼女も戦慄したものだったーいくら自分が不良娘であったとしても、さすがにここまでのことはできないー
だが、このアルカディア島に来て、自分が生き残るために、実際に一条紗耶香と同じことをした時、彼女の中の何かのスイッチが入ってしまった。
最初の1人目の時は、吐きそうになった。2人目の時は、体に震えが走って止まらなかった。だが、3人目の時には、自分でも信じられないくらいに、落ち着いていた。自分の犯した殺害行為について、どこか俯瞰的に捉えている自分の姿があった。
それ以降は、止まらなくなったー気が付いた時には、もうやめられなくなっていたのだ。
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