百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第460話 ゲーム会場へようこそ100

「あちらはあちらで楽しそうだな・・・」
「・・・そうですね」
　戸隠と桐原は、先ほどまで明子たちがしていたように、水浴びの真っ最中であった。と言っても、明子たちよりは成熟しているように見える2人ー明子たちのように水を掛け合うなどということもせず、小川の流れに任せるように体を水に浸しているといった感じだった。
　冷たい水と小川のせせらぎがとても心地よい。
　この森の中は高温多湿ー熱帯雨林もかくやといった環境である。厚い樹冠に覆われているためか、恐らく空気や湿気の逃げ道に乏しいのだろう。森の中にたまった熱はほとんど外に漏れることなく、湿気と共に森の中に滞留し続けている。
　当然ながら、この環境でずっと暮らしていれば、普通の人間なら熱中症で倒れてしまいかねない。
　実際に、先ほどまでの桐原がそれに近い状況だった。美羽たちがいなければどうなっていたことかー
「桐原殿、本当に体の方は大丈夫そうだな」
「ええ、おかげさまで」
　戸隠は、桐原の様子を見て、ふと彼女の服が水のために透けて見えることに気が付いた。
　桐原の体形は明子よりも優菜や美羽に近いものだ。要するに、乙女の凹凸がはっきりとわかる体つきである。尤も、それは戸隠にも当てはまることだった。
　暗殺を家業とする戸隠にとって、時としては「体を使ったお仕事」にも手を染めることがある。相手を、自らの体を使って誘惑し、そして仕留める。今までに、この体を駆使して裏のお仕事を行った回数は数知れずーである。
　言うまでもなく、その対象は男ーしかも大体が強欲親父たちばかりだったが、戸隠自信は同性でも相手にできるように、一通りの性技は仕込まれていた。要は「両刀使い」でもある。
　そんな彼女の体形が恵まれているのは言うまでもないが、桐原も負けず劣らずだ。
　ーおおっと、いかんいかんー
　邪念が頭を支配しかけたのを自覚して、戸隠は軽く頭を振った。
　ーそのような邪な気持ちで桐原殿を眺めては・・・某もだいぶ衰えたなー
　自らの不徳に恥じる戸隠。
「・・・どうしました、戸隠さん？」
　そんな彼女に対し、桐原が訝し気に尋ねてきた。小首を傾げ、黒々とした瞳を向けてくる姿は、どこか子猫を思わせるところがあり、なんとも魅力的であった。
「あ、いや・・・某もまだまだ修行が足りぬ、と思っておったところだ」
「・・・？」
　ーふう・・・ー
　戸隠は、さりげなく桐原から視線をずらし、アイテムの準備をしている明子たちの方を見やった。あちらはあちらで楽しく騒いでいるようだ。先ほどまで、あの恐竜型の魔物を相手に大立ち回りをしていたとは到底思えないくらいの能天気さだった。