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第4章 更なる戦い

第445話 ゲーム会場へようこそ85

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「大丈夫だ・・・いざという時のために、森の出口方面への目印となるものは残してある」
 戸隠は、いつでも森から抜け出せるように今まで来た道にそれとなく目印となるものを落としてきたのだ。それを辿っていけばこの森から抜け出すことができる。
「ああ・・・よかったぁ。私、こんなに暑くて暗い場所はもうたくさんです」
 水を飲んで一息ついたとはいえ、全身汗だくで、それこそブラウスが透けて見える有様だ。桐原からしてみれば、さっさとこの森をおさらばして汗を流し、着替えたいところだろう。
「そうだな・・・某としても、これ以上暗くなる前にこの森から出ることを推奨する」
 夜目が聞く戸隠と言えども、この森の視界の悪さに、さらに夜の漆黒の闇が加わると動きがとりにくくなる。ましてや、桐原を守りながら移動するとなれば、なおさらのことだった。
「多分、日が落ちるにはまだ時間があるだろう。桐原殿、もう少しここで体を休めてから森を脱出しよう」
 水を飲んで人心地ついたとはいえ、桐原の体力が完全に回復したわけではない。一刻も早く森から脱出したかった桐原であるが、戸隠に言われ、今はまだ休んでいた方がいいと判断した。
「そうですね・・・もう少し休憩してから動きましょうか」

 一方で、先ほど巨大な魔物と少女たちの戦いがあった地点ではー
「ハアハア・・・」
 3人の少女ー明子、優菜、美羽の3人が、息も絶え絶えにその場にへたり込んでいた。
 3人とも、全身頭から水をかぶったかのように汗だくで、もはや起き上がる気力さえないといった様子であった。
「畜生~あの恐竜もどき・・・なんてしつこくてしぶといんだよ」
 大の字に寝転がりながら、明子は先ほどまで生きていた恐竜型の魔物の死骸へと目を向けた。
 既に、その死骸からは黒い瘴気が立ち込め始めており、これからまもなく一切の痕跡を残すこともなく消滅していくであろうことが窺えた。
「・・・あたしらと違って、こいつらって死んだら消えてなくなるんだな」
 この大会においては、自分たち参加者は戦いに敗れた時点で首を刎ねられ梟首させられる。死後も晒し者になるわけだ。
「死んだらもはや用済みってことでしょ」
 優菜が明子の言に応える。大会運営側にとってみれば、魔物は単なるトラップやギミックと変わりはない。役目が終わればさっさと片付けられるだけの存在にすぎない。
 たとえどれだけ恐ろしく強い魔物であろうが、そこは関係ないのだろう。
「死んだ後も晒し者になるよりかはマシかもしれませんね」
 美羽の言葉にげんなりとする明子だった。
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