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第4章 更なる戦い
第434話 ゲーム会場へようこそ74
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この後、他のチームのメンバーを発見した荒谷は、不意を突いて仕留めようとしたところ、戸隠に妨害されて一度村の方まで撤退せざるを得なくなった。
そして、戸隠達は脅威が去ったのを確認してから起き上がる。先ほどの襲撃者はおろか、魔物の姿もない。当分は襲われる心配もないだろう。
「あの・・・助けていただいてありがとうございました」
娘ー桐原真澄は戸隠に対して慇懃に頭を下げてお礼を言った。元々、礼儀正しい娘なのか、育ちの良さがよく伝わってきた。
「礼には及ばぬ」
戸隠は素っ気なく応えた。戸隠にとっては、日本にいた頃から要人警護などもしてきたこともあり、あれくらいのことは造作もないことだった。
「あ、あの・・・」
桐原が少し緊張気味で自己紹介を始めた。
「私は桐原真澄と言います。よろしければ、あなたのお名前をお聞かせ願えますか?」
「某は戸隠美鈴と申す。桐原真澄殿と言ったか・・・よき名前であるな」
戸隠の、かなり時代錯誤したようなものの喋り方に、戸惑いを隠せず困惑したような表情を浮かべる桐原。だが、自分の名前を褒められた以上、返事をしないのは失礼だと思い、
「ありがとうございます」
再び頭を下げて丁寧にお礼を述べる。そんな彼女の姿に、戸隠は苦笑しながら、
「いやいや、頭をお上げ下され。先ほども申した通り、礼を言われるほどの事ではない。それより・・・」
戸隠は、桐原が今しがた足を運ぼうとしていた近くの森の方へと目を向けた。
鬱蒼とした森林が生い茂っており、とてもではないが、中の様子はほとんど確認できそうもない。さらには、獣とも魔物とも取れないような奇声がたまに森の奥から聞こえてくるようにも思われた。
「お主・・・この森に一人で入ろうとしていたのか?」
戸隠に尋ねられて、桐原はバツが悪そうな顔しながら、
「・・・はい。他に行く当てもなかったので」
確かに、いきなりこのゲームの中に放り込まれてどこに向かえばいいのかわからないという事情はあっただろうが、しかしそれにしても、一人でこの森に入ろうとするのはいささか無謀過ぎる。
「この遊戯では、さっきの曲者ばかりではなく、物の怪の類も襲い掛かってくると聞くぞ・・・さすがに、一人でこの中に入ろうとするのはお勧めできぬ」
「そうですね・・・」
戸隠に諭されて、シュンとなって俯く桐原。そんな彼女を見て、
「いやいや、お主を責めているのではござらん。もしよかったら、某と共にこの森の中を探ってみてはいかがかと思うてな」
「え・・・?」
戸隠からの思わぬ申し出に目を大きく開く桐原であった。
そして、戸隠達は脅威が去ったのを確認してから起き上がる。先ほどの襲撃者はおろか、魔物の姿もない。当分は襲われる心配もないだろう。
「あの・・・助けていただいてありがとうございました」
娘ー桐原真澄は戸隠に対して慇懃に頭を下げてお礼を言った。元々、礼儀正しい娘なのか、育ちの良さがよく伝わってきた。
「礼には及ばぬ」
戸隠は素っ気なく応えた。戸隠にとっては、日本にいた頃から要人警護などもしてきたこともあり、あれくらいのことは造作もないことだった。
「あ、あの・・・」
桐原が少し緊張気味で自己紹介を始めた。
「私は桐原真澄と言います。よろしければ、あなたのお名前をお聞かせ願えますか?」
「某は戸隠美鈴と申す。桐原真澄殿と言ったか・・・よき名前であるな」
戸隠の、かなり時代錯誤したようなものの喋り方に、戸惑いを隠せず困惑したような表情を浮かべる桐原。だが、自分の名前を褒められた以上、返事をしないのは失礼だと思い、
「ありがとうございます」
再び頭を下げて丁寧にお礼を述べる。そんな彼女の姿に、戸隠は苦笑しながら、
「いやいや、頭をお上げ下され。先ほども申した通り、礼を言われるほどの事ではない。それより・・・」
戸隠は、桐原が今しがた足を運ぼうとしていた近くの森の方へと目を向けた。
鬱蒼とした森林が生い茂っており、とてもではないが、中の様子はほとんど確認できそうもない。さらには、獣とも魔物とも取れないような奇声がたまに森の奥から聞こえてくるようにも思われた。
「お主・・・この森に一人で入ろうとしていたのか?」
戸隠に尋ねられて、桐原はバツが悪そうな顔しながら、
「・・・はい。他に行く当てもなかったので」
確かに、いきなりこのゲームの中に放り込まれてどこに向かえばいいのかわからないという事情はあっただろうが、しかしそれにしても、一人でこの森に入ろうとするのはいささか無謀過ぎる。
「この遊戯では、さっきの曲者ばかりではなく、物の怪の類も襲い掛かってくると聞くぞ・・・さすがに、一人でこの中に入ろうとするのはお勧めできぬ」
「そうですね・・・」
戸隠に諭されて、シュンとなって俯く桐原。そんな彼女を見て、
「いやいや、お主を責めているのではござらん。もしよかったら、某と共にこの森の中を探ってみてはいかがかと思うてな」
「え・・・?」
戸隠からの思わぬ申し出に目を大きく開く桐原であった。
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