百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第4章 更なる戦い

第431話 ゲーム会場へようこそ71

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 犬型の魔物の吐き出す黒い霧のようなブレスが、地面の草花を漆黒の消し炭へと変えていくー
「軽い軽い!」
 だが、荒谷は全く臆することなく魔物へと果敢に挑んでいった。
 相手の吐き出すブレスは、確かに威力は恐ろしいが、その攻撃の及ぶ範囲は直線状、つまりは、犬型の魔物の頭の向きさえ把握すれば容易にかわせるものなのだ。
 さらに言えば、魔物はこの攻撃を途中でやめることができないらしく、ブレスを吐いたら吐き切るまではそのまま吐き続けるしかない。
 その間に、荒谷は魔物の側面へと回り込み、攻撃を試みていた。
「・・・ギャ!!」
 魔物の哀れな断末魔の叫び声が辺りに響き渡る。荒谷の放った短刀が、見事に魔物の首を突いていたのだ。いかに魔物と言えども、首や心臓は急所である。
 魔物は、黒いブレスをそのまま垂れ流しながらのたうち回り、やがて痙攣しながら倒れ込んだ。その痙攣も収まると、完全に絶命したのか今度は全身が黒い瘴気となって立ち昇りながら消滅していく。
「・・・どんなものよ」
 誰が見ているというわけでもないが、思わず勝ち誇ってしまう荒谷。さすがに洞窟序盤の魔物よりは強い部類だが、それでも十分互角以上に戦えるという実感を持つことができた。
 しかしー
「ううう・・・」
「グルルルル・・・」
 どうやら、今の戦いに気が付いた他の魔物たちが、仲間を消滅させた荒谷を敵とみなしたのか、3匹で束になって荒谷に襲い掛かってきた。
「・・・今度は、3対1か・・・」
 多勢に無勢ーしかも相手は加減を知らない魔獣達だ。先ほどよりも状況は不利である。
 だがー
「・・・面白い!!」
 荒谷は、自分の置かれた不利な状況に、逆に闘志を燃やしていた。
 たった1匹だけでは張り合いもないし、そもそも北条にも相手にされないだろう。別に北条に認めてもらいたいわけでもないのだが、この程度で怖気づいていては北条に笑われるような気がした。
 実際、北条は笑うだろう。
 3匹の魔物は、荒谷の周囲を円状に取り囲んだ。魔物ながら知恵があるのだろう。獲物を逃がさないと同時に、一斉に飛び掛って仕留めることができるであろう間合いを探っているようだった。
「・・・ワン公にしては頭がいいな・・・でも、そんなんじゃ私には勝てないよ」
 荒谷を中心に、それぞれ120度の角度の位置で唸り声を上げる魔物たち。魔物ながらに、攻撃をするタイミングを計っているのだろう。
「・・・来る!!」
 咆哮しながら、魔物たちが一斉に飛び掛ってくる。牙や爪が陽の光に照らされて鈍く胡乱な輝きを帯びて、囲まれた哀れな少女を引き裂こうとする。
「私を・・・見くびるな!!」
 荒谷は高く飛んだ。擬体化能力のおかげなのか、その跳躍力は明らかに普通の人間のものを超えている。魔物たちは、飛び掛る勢いを殺し切れずに3匹とも鼻面をぶつけてしまった。
 犬らしい悲鳴が上がったのを聞いて、荒谷が口角を釣り上げた。
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