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第4章 更なる戦い
第425話 ゲーム会場へようこそ65
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北条聡子はキーアイテム「どこかの鍵」を手に入れたー
「どこかのって・・・いったいどこの鍵なのかしら?」
荒谷が当然の疑問を零した。
もちろん、この屋敷に関係するものに違いは無かろうが、この屋敷は2階建てとは言えそれなりに広そうではある。探すのに手間がかかりそうだがー
「片っ端から試していくしかないんじゃない?」
どこかいたずらめいた表情と口調で北条が鍵を指先で摘まみ上げながら言う。
ーそれ、一応生首の口の中に入ってたものなんだけどなー
人の生首や殺し合いが当たり前のこの大会にいる以上、生前、かつて日本で暮らしていた頃の「常識」や「倫理」がだいぶ薄れていくような感覚に陥る時がある。
とある心理学の実験で、「閉鎖的な環境下における人間の権威への依存」を調べる試みが行われたことがあるが、これはのちにアイヒマン実験という俗称(正式名称はミルグラム実験というらしいのだが)で知られており、その結果だと、高い割合で、ごく一般的とされる人間が閉鎖されて強権的な環境下においては権威に対して従順になるということが確認されたらしい。
このアルカディア島は、いわゆる「権威」はないものの、閉鎖的な環境下に蜂がいなく、さらには大会参加者たちは常に自らの命を危険に晒されるという高ストレス下にいることから、参加者たちの一般常識とか倫理とか社会通念と言った概念が、少しずつではあるが希薄化していくのではないかと思われる。
そう考えると、何らの躊躇もなく生首の口の中に手を入れた北条の行為もさほど度を越したものとも言えないーが。
ー私達って、どう考えても人間終わってるわよねー
このアルカディア島での感覚が普通に置き換わっていくということは、それだけかつての感覚からかけ離れていくということでもあり、もう自分たちは取り返しのつかない道を歩んでいるのだということをまざまざと実感させられた。
「この建物ー見かけよりも結構広い作りなのよね」
そんな荒谷の思いを知ってか知らずかー北条はあくまでも淡々とした様子で、荒谷を置いて部屋の外へと出て行こうとする。
「あ、あのさ・・・」
「なによ?」
荒谷が訝し気にこちらを見る。
やはり、彼女からは生前の「普通」の感覚が失われているのではないだろうか。そうなれば、荒谷が何を言っても会話は通じないだろう。
荒谷は、軽く頭を振ると、
「・・・何でもないわ」
諦めたように北条に応えた。
「・・・おかしな人ね」
ー私からしてみれば、アンタの方がよっぽど変なんだけどー
そう言いたくなるのをこらえて、
「私も付き合うよ、鍵が合う部屋探し」
「・・・勝手にすれば」
にべもなく返されたが、てっきり断られるかと思っていたので、少しだけ意外な気がした。
荒谷は、石膏像の欠片に混じって転がっている少女の生首に軽く合掌してから北条の後に続き部屋を出た。
「どこかのって・・・いったいどこの鍵なのかしら?」
荒谷が当然の疑問を零した。
もちろん、この屋敷に関係するものに違いは無かろうが、この屋敷は2階建てとは言えそれなりに広そうではある。探すのに手間がかかりそうだがー
「片っ端から試していくしかないんじゃない?」
どこかいたずらめいた表情と口調で北条が鍵を指先で摘まみ上げながら言う。
ーそれ、一応生首の口の中に入ってたものなんだけどなー
人の生首や殺し合いが当たり前のこの大会にいる以上、生前、かつて日本で暮らしていた頃の「常識」や「倫理」がだいぶ薄れていくような感覚に陥る時がある。
とある心理学の実験で、「閉鎖的な環境下における人間の権威への依存」を調べる試みが行われたことがあるが、これはのちにアイヒマン実験という俗称(正式名称はミルグラム実験というらしいのだが)で知られており、その結果だと、高い割合で、ごく一般的とされる人間が閉鎖されて強権的な環境下においては権威に対して従順になるということが確認されたらしい。
このアルカディア島は、いわゆる「権威」はないものの、閉鎖的な環境下に蜂がいなく、さらには大会参加者たちは常に自らの命を危険に晒されるという高ストレス下にいることから、参加者たちの一般常識とか倫理とか社会通念と言った概念が、少しずつではあるが希薄化していくのではないかと思われる。
そう考えると、何らの躊躇もなく生首の口の中に手を入れた北条の行為もさほど度を越したものとも言えないーが。
ー私達って、どう考えても人間終わってるわよねー
このアルカディア島での感覚が普通に置き換わっていくということは、それだけかつての感覚からかけ離れていくということでもあり、もう自分たちは取り返しのつかない道を歩んでいるのだということをまざまざと実感させられた。
「この建物ー見かけよりも結構広い作りなのよね」
そんな荒谷の思いを知ってか知らずかー北条はあくまでも淡々とした様子で、荒谷を置いて部屋の外へと出て行こうとする。
「あ、あのさ・・・」
「なによ?」
荒谷が訝し気にこちらを見る。
やはり、彼女からは生前の「普通」の感覚が失われているのではないだろうか。そうなれば、荒谷が何を言っても会話は通じないだろう。
荒谷は、軽く頭を振ると、
「・・・何でもないわ」
諦めたように北条に応えた。
「・・・おかしな人ね」
ー私からしてみれば、アンタの方がよっぽど変なんだけどー
そう言いたくなるのをこらえて、
「私も付き合うよ、鍵が合う部屋探し」
「・・・勝手にすれば」
にべもなく返されたが、てっきり断られるかと思っていたので、少しだけ意外な気がした。
荒谷は、石膏像の欠片に混じって転がっている少女の生首に軽く合掌してから北条の後に続き部屋を出た。
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