百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
421 / 499
第4章 更なる戦い

第420話 ゲーム会場へようこそ60

しおりを挟む
「誰もいない・・・のか」
 洞窟から戻った荒谷が発見した村には、人っ子一人見当たらなかった。
「当たり前か・・・このゲーム、参加者以外に人はいないだろうしな」
 魔物はいるのに、人はいない。それこそ、普通のゲームのようにNPCでもいれば少しは面白かったのだが、どうやらそこまで再現されてはいないようだった。
 寂れているとはいえ、誰も村人がいないというのなら、恐らくはゲーム参加者以外の人間はこの世界にはいないということなのだろう。
「まあ、誰もいないならいないで、勝手に使わせてもらうか」
 とりあえず、目についた家屋に入ってみることにする。ほとんどが壊れかけの家ばかりだが、一軒だけ立派な建物があった。おそらく、この辺りの地主、あるいは村長に当たる人物が住んでいる建物という位置づけなのだろう。
「この村にしてはかなりの立派な建物だ・・・気になるし、少し中を覗いてみようかな」
 家の扉を開いてみる。2階建ての建物の中は、人気がなく静まり返っていることもあり、昼間にも関わらず言い知れぬ怖さを感じさせた。
「やっぱり誰もいないな・・・」 
 玄関から入ってしばらくすると、2階へと続く階段があり、途中踊り場を経てさらに左右に階段が分かれていた。1階と2階の間の踊り場部分には、誰かの肖像画がかけられていた。
「・・・この家の人の肖像画なのかな」
 尤も、参加者以外には人が存在しない世界なので、実在の人物ではないだろう。あくまでもゲーム内の一オブジェクトに過ぎないものだ。
 とはいえ、やはりここまで立派な肖像画がかけられていると、変にリアルさが感じられる。
 肖像画は、初老の人物のものだった。荒谷は知らなかったが昔の西洋人のカイゼル髭をあやして軍服を着こんでいる肖像画で、なかなかの威厳を感じさせる。だが、それゆえにここには場違いなもののように思われた。
「この寂れた村に、こんな立派な人が住んでたっての?」
 荒谷の疑問も尤もである。確かに建物は立派だが、どう考えても過疎地同然のこの村には不釣り合いなものだった。
 疑問は尽きないが、ここはまあ、ゲームによくありがちなオブジェクトということで納得するしかないだろう。
 荒谷はさらに階段を上って2階へと向かった。
 1階もろくに調べていないのに、先に2階を調べるというのもおかしな気がしたが、別に調べる順番が定められているわけでもない。
 昼間だというのに、窓が少ないためか、廊下は薄暗い。こういう場所なら、サスペンス映画の撮影にはうってつけだろうーなどと考えていると。
 ガタン!!
「・・・ひぃっ!?」
 2階にあるいずれかの部屋から、何かを倒すような音が聞こえてきた。思わず引きつったような声を上げてしまう荒谷だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...