百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
418 / 499
第4章 更なる戦い

第417話 ゲーム会場へようこそ57

しおりを挟む
「・・・ちぃっ」
 補助アイテム「ステルスコート」を使用した少女が、舌打ちしながら撤退を図る。森の前をうろついていた少女を仕留めようとしたところ、別の少女が彼女に覆いかぶさり、仕留め損ねたからだ。
「・・・ここは一旦退くか」
 まだ、姿を見られてはいないだろうが、もう一人の少女は不思議なことに、こちら側の動きが読めるらしい。なぜ見えていないはずなのに、動きが読まれているのかはよくわからないがー
「あの身のこなしからすれば・・・熟練者クラスか」
 あの身のこなしからすれば、あの少女は見かけによらずなかなかの使い手だ。これ以上下手に手出ししてこちらも痛い目を見るのだけは避けなければー
 おそらく、庇った方の少女はこのゲームばかりではなく、大会中既に何度も戦いを経験しているだろう。聞いた話では、達人クラスの使い手なら、視覚に頼らずとも気配やわずかな空気の流れだけで相手の位置や動きを知ることができるという。
「・・・他の仲間と合流する前に、一人くらいは仕留めたいと思っていたのだが」
 あのくらいの熟練者が敵チームにいるとなれば、例え透明化アイテムを持っていたとしても、襲撃は容易ではない。
 少女ー荒谷真紀は周囲には目もくれず、とにかくその場から離れることを優先した。常人とは比べ物にならないくらいのスピードで疾走し、湖からだいぶ離れた場所ー小さな農村らしきところまで戻ってきて、ようやく一息を着いた。
「ふう・・・」
 どうやら、追ってはこないようだ。
 万が一、あの熟練者が追いかけて来た場合、例え全力疾走であったとしても、とてもではないが逃げ切れる自信はなかった。相手の技量や力量を見抜く力は荒谷にはある。
「やれやれ・・・あんな奴がこのゲームに参加しているとはな・・・」
 補助アイテム「ステルスコート」を一旦は脱ぎ、近くの民家に身を寄せる荒谷。木造の建物の中には誰もおらず、簡易ベッドや台所、あとはテーブルがあるくらいだった。ファンタジー物の農家の家をそのまま再現したような作りで、お世辞にも広いとも豪華ともいえない。本当に一時的に体を休めるくらいしかすることはない場所だ。
 相手が追ってこなかったため、恐らくこの場所のことは知られていない。元より、水車小屋以外は何もないのどかな寒村だ。プレイヤーによっては気付かないまま通り過ぎてしまうかもしれないくらいの過疎村である。
 荒谷は、腰のベルトに挿していたもう一本の短刀をテーブルの上に置いて、しばらくの間それを見つめていた。
「・・・こんな武器じゃあ、あいつはやれないな」
 擬体化装備なら、あの熟練者とも戦えるだろうが、力の消耗は避けたいところだった。何せ、まだ他のメンバーと接触すらしていないのだ。
 さらには、この辺りのフィールドに魔物が出没しているのも確認している。消耗を避けるため、魔物に見つからぬようこの「ステルスコート」を装備して外を確認した。その数、ざっと10体くらいだろうか。
 擬体化装備を使えば勝てぬ連中ではないが、極力消耗は避けたかった。そのため、この「ステルスコート」を手に入れることができたのは僥倖と言うほかなかった。
 ちなみに、この「ステルスコート」は近くの洞窟の宝箱から見つけたーこの辺りは、RPGと同じ作りとも言えるだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...