百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第380話 ゲーム会場へようこそ20

　このゲーム内では、相手との性行為を伴うこともなく擬体化することができるー
　そして、それは初体験の明子にとっても例外ではなかった。
　ー不思議だ・・・なぜか擬体の纏い方が自然とわかる・・・ー
　まだ擬体を纏ったことのない明子でも、どうすれば擬体を纏うことができるのか、あとは武器の扱い方についてもおのずと理解できてきた。
「それじゃあ、各自、自分の獲物の見せ合いっこをしましょうか」
　言うが早いか、優菜は瞳を閉じ、何かを念じ始めた。すると、程なくして優菜の体の周りを光の粒子が覆っていく。それに伴い、彼女後ろにまとめ上げられた髪の毛も下からの風に煽られるかのように激しく靡いた。
　優菜の手に握られていたのは斧だった。
「これがあたしの擬体化武器ー言うまでもなく斧ってところね」
　細身で可愛らしい外見にも似合わず、使いこなす獲物はなかなかごついものだった。積極的で活発な性格の優菜に合っていると言えなくもない。
「それでは、次は私の番ですね」
　同様に、美羽も自身の擬体を纏い始める。優菜同様に瞳を閉じて意識を集中し始めると、彼女の周りでも光の粒子が渦巻き始めてその体を覆っていった。ふんわりとしたペパーミントの髪の毛もそれにあおられる形で波打った。
「私の擬体化武器は・・・御覧の通りレイピアです」
　美羽の擬体化武器は、細身の剣ーつまりはレイピアだった。斬撃よりも刺突を得意とする武器で、美羽が手にしていると確かに様になっているように思えた。
「さて、それじゃあ今度は明子の番よ」
　優菜が明子に擬体化武器の実体化を促してきた。
「イメージは、できますよね」
　2人は、さきほどメイドさんがおさげの少女を殺害し、自室にこもっていた時に、明子の事情をおおよそ伺っていた。もちろん、明子が擬体化経験皆無であることも、その時に確認していたのだった。
「わかる・・・なぜだか知らないけど、あたしもやり方がわかるよ」
「それじゃあ、やって見せて・・・焦らなくていいから」
　優菜に促され、明子は擬体化をするべく意識を集中し始めた。
　ー・・・できる！ー
　明子は瞳を閉じ、意識の深層にある「何か」に接触し始めた。すると、その「何か」が明子の意志に反応するかのように光を帯び始めたーそんな感覚だった。
　明子の周囲に、光の粒子が立ち込め始める。それが、彼女の全身に纏わりつくように運動し始めたのだ。
　ー両手？ー
　両手の甲が、なぜか火照っているように思えた。いや、彼女の体を取り巻いていた光の粒子は、今や彼女の両手の甲に集中して纏わりついていたのだった。
「・・・これが、あたしの・・・？」
　瞳を開けて、両手の甲を見る。そこには爪が装着されていたのだったー