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第4章 更なる戦い

第376話 ゲーム会場へようこそ16

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「それでは皆様、心行くまでゲームをご堪能ください」
 不敵な笑みを浮かべつつ、慇懃に頭を下げるメイドさんの言葉とともに、青い扉がゆっくりと開いていく。
「あれが・・・フィールドってやつなのか?」
 明子はごくりと唾をのみ込んだ。明子ばかりでなく、他の初参加者たちも同様だった。
「あ~あ、また始まっちゃったわね」
 それに対して、優菜や美羽のほか、このゲームに挑んだことのあるメンバーは落ち着き払った様子でその扉が開くのを眺めていた。
 青い扉はその見た目とは裏腹に、重々しくゆっくりと開いていく。まるで、もったいぶらせるかのような開き方だった。
 ーまあ、実際にもったいぶらせてるんだろうけどねー
 扉が開き切る前に、突如として部屋の中に突風が吹き荒れた。いや、突風ではなく、部屋の中の人間すべてが扉に吸い込まれ始めたのだーメイドさん達3人と、先ほどメイドさんが斬殺したおさげの少女の首なし死体を除いて。
「う、うわあああっ!!」
「きゃあああっ!!」
 部屋の中に、少女たちの悲鳴が響き渡った。特に、初参加組は突然のことにわけもわからず喚き散らしていた。
 扉の中は、これまた不思議な異空間ーまるで立体映像のようなものがいくつも浮かんではすぐに消えている。それらをじっくりと鑑賞している余裕は、残念ながらなかった。
「また吸い込まれるのね・・・全く、毎度の事とは言え、いやんなっちゃうわよ」
 優菜が肩を竦めながら愚痴をこぼす。ちなみに、彼女もまた扉に吸い込まれている最中だったが、全く慌てるそぶりも見せず、吸い込まれるがままにしていた。
 そして、それは美羽も同じことだった。
「今度のゲームフィールドは、いったいどんな場所になるんでしょうね・・・」
 美羽は、人差し指を唇に当てながら、考えるそぶりのままに吸い込まれていた。
「前みたいに、雪山とかは勘弁してほしいわね。ゲーム終わる前に遭難するか凍死しちゃうわよ」
「ああ・・・私も、寒い場所はちょっとご遠慮願いたいです」
 どうやら、二人は以前、雪山主体のフィールドでこのゲームに挑んだ経験があるらしい。
「あたしも、寒い場所はやだなぁ」
 明子も、寒いのは苦手である。最近は猛暑が取りざたされるが、寒いのに比べたらまだ暑い方がましだと思っているくらいだった。
「この先は、何でもありだからね・・・あのメイドさんの気分次第で、どこへでも飛ばされてしまうから」
 何でもあり、かー
 よく考えてみれば、いきなり明子たちをわけのわからない部屋へと連れ去り、さらにはこの理解不可能な異空間でゲームをさせようとする連中である。実際、何でもありなんだろう。
 しばらく異空間を彷徨っていると、前方に光が見えてきた。その光は強くなっていき、やがては目を開けていられないくらい眩しいものとなる。
「いよいよ、ね・・・」
「はい」
 優菜と美羽が頷き合う。どうやら、もうすぐゲームフィールドに到着するようだった。
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