百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第4章 更なる戦い

第371話 ゲーム会場へようこそ11

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 ご主人様が隣の部屋で、自らのコレクションを鑑賞している間ー
「うううう」
「るるるる」
 ボロ着姿の双子の少女は、相も変わらず野犬のような唸り声を上げ続けていた。彼女たちが発言を許されているのは、唯一ご主人様だけが傍にいる時だけだ。今はご主人様は隣の部屋にいていないので、ここでおとなしくーと言えるのかどうかは怪しいのだがー留守番である。
 彼女たちは、かつては自らのご主人様であるメイドさんと戦い、そして敗れた少女たちだ。二人で挑み、そして二人とも敗れた。首を刎ねられたのは、二人ともほぼ同時だった。
 今の彼女たちには、その時の記憶はない。自分たちの名前さえ、忘却してしまった。しかし、だからこそ、忠実な飼い犬でいられるのだ。誰だって、かつては自分の命を奪った者を主人と崇めたくはないだろう。
 その当時の記憶の欠損分を埋める代わりに、偽りの記憶が与えられている。その偽りの記憶の中では、メイドさんはとても「お優しいご主人様」なのだ。
 優しくてお強いご主人様は、今日もたくさんの獲物を捕まえてこられた。だから私たちも頑張ってご主人様にご奉仕するのだー
「待たせたわね、お前たち」
 隣の部屋に、コレクションを置きに行っていたご主人様が帰ってきた。双子の少女たちは、隣の部屋に奈良部らえている少女たちの首には何の関心もなかったが、ご主人様がご満足だというのなら、それでいい。
「さあ、ゲームの参加者たちの下へ急ぐわよ」
 ご主人様の声は心なしか弾んでいる。そういえば、今日は久々にゲームをすることができるのだ。双子の少女たちにとっても、心待ちにしていた日だった。
「かしこまりました、ご主人様」
「どこまでもお供いたします」
 普段の姿からは信じられないほど、流ちょうな言葉を話す少女たち。ご主人様だけがいる場所では、人語を離すことを許可されている。記憶はなくしても、言葉までなくしたというわけではないのだ。
「いい子たちね・・・今回も、お前たちには働いてもらうわよ」
「かしこまりました、ご主人様」
「精一杯、務めさせていただきます」
 どこまでも従順な双子を見て、メイドさんの口の端が吊り上がる。
 ー私は、ここにきて自分だけの城を手に入れたー
 日本にいた頃であれば、どれだけ望んでも決して手に入ることのなかった、自分だけのお城。その城に集うのは、余興のために集められた哀れなプレイヤーとどこまでも愚かで、どこまでも従順な、犬のような双子の少女ー
 メイドさんが、双子の髪に手を触れた。それぞれの髪の毛を少し強めに引っ張る。
 痛みを伴うこの合図こそ、ゲーム会場への扉を開く儀式だった。
 二人の少女はそれぞれ手をかざし、そしてー
 総勢20名のプレイヤーを待たせたままの部屋へと通じる扉が現れたのだったー
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