百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第366話 ゲーム会場へようこそ6

「さて・・・」
　調整という言葉を聞き、怪訝そうな顔つきでメイドさんとその傍らの双子たちを見つめる強制参加者達。当のメイドさん自身はと言うと、自分を注視する参加者たちの顔を一人一人品定めでもするかのように見据えていた。
　どちらかというと、優菜の言うBチーム、つまりは明子たちの隣のチームの方に、メイドさんの注意が向いているようだった。
「あなた・・・」
　メイドさんは、たまたま目の合った少女ーおさげが特徴的で、顔立ちは小奇麗なものの、地味と言えば地味な娘であったーに語り掛けた。
「・・・え、私？」
　おさげの少女がぽかんと口を開けている。いきなり自分が呼ばれるとは思ってもみなかったのだろう。
　おそらくは、このゲームの初参加者、そしてー
「可哀そうだけど、彼女が犠牲者第一号になりそうね」
「・・・え？」
　傍らの優菜の呟きに、明子が振り向いて声を上げる。美羽も気の毒だと言わんばかりに、軽く頭を振っていた。
「犠牲者第一号って・・・？」
　優菜が、今にわかるわ、と小声で囁く。いやな予感がして、明子は思わず顔をひきつらせた。
　ーいったい、何が始まるって言うんだよぉー
　額に冷や汗が浮かび上がる。優菜と美羽のほか、既にこのゲームに参加したことのある他の者達からも、あきらめにも似たため息のようなものが漏れ始めていた。
「この場所に呼んでおいて申し訳ないのだけれど・・・あなたは必要ないわ」
「え、え・・・？」
　おさげの少女が戸惑いも隠さず、慌て始める。
　いきなり見知らぬ場所に連れてこられて、そして開始早々に「お前は必要ない」などと言われれば、誰であれ落ち着かなくなるのは当然のことだった。
「というわけで、調整はあなたで行います・・・お覚悟を」
　言い終わるが早いかーメイドさんは実に人間離れした動きでー
　パアアアン！
　メイドさんの右手には、いつの間にか銃が握られていたーそして、おさげの少女が倒れたのだった。

「あ、あ、ああああああっ！！」
　おさげの少女の絶叫が響き渡る。彼女は、左太ももを銃で撃たれていた。足を狙ったっことからもわかるように、致命的な部位は避けた形での発砲ーしかし。
「え、え？」
　明子のほか、このゲームの初参加者たちは戸惑いを隠せない。
　この大会のルール上、戦いをするにしても、まずは擬体を纏わなければならない。そのためには、相手との性行為を行う必要があるはずだ。さらに言えば、擬体を纏う場合、肉体的な苦痛は全て擬体が肩代わりしてくれるので、参加者たちは苦痛を感じることはないはずである。
　だが、見れば一目瞭然だが、今足を撃たれたおさげの少女はその苦痛に泣き叫び、地面をのたうち回っている。
　ほどなくして、他の参加者ー主に初参加の者達から凄まじい悲鳴が上がったー目の前で起きた惨劇に、恐慌状態に陥ったのだ。
　ーこれは・・・いったいどういうことなんだ・・・？ー
　明子はと言うと、悲鳴こそ上げてはいないものの、やはり目の前の惨状に理解が追い付いていなかった。
　優菜の言う調整って、まさかー
　明子の額から冷や汗が流れ、頬を伝い、カラフルな床にぽたりと落ちた。
　その床も、おさげの少女の血液により、鮮やかな紅に染まりつつあったー