百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第364話 ゲーム会場へようこそ4

「ようこそ、おいでくださいました・・・皆様」
　メイドさんが、この不思議な部屋に集まった少女たちに向けて丁寧に頭を下げて挨拶した。
「・・・ふん、何がおいでくださいました・・・よ」
　明子の隣で、メイドさんに聞こえないくらいの小声で優菜が愚痴をこぼす。
　実際、優菜が文句を言いたくなるのもわかる気がする。この部屋に集められた参加者たちは自分の意志でここに来たわけではないからだ。
　いきなり、拉致同然に連れてこられたこの部屋で、いったい自分たちは何をさせられるというのかー
　この部屋を初めて訪れた明子と同じ境遇の子たちもいるのだろう。ひそひそと何やら言い合いながら、眼前で優雅にお辞儀をするメイドさんに抗議じみた目を向けている。
「ここは、我々のゲーム開催場所・・・この場所では、大会とは別に我らの裁量によって皆様に楽しんでいただけるよう、ちょっとした催しを提供しております」
「うううう」
「るるるる」
　メイドさんが説明をする傍らで、どう考えても彼女には不釣り合いな薄汚れた双子の少女が、野犬の如く唸り声を上げている。もしかしたら、人間の言葉を話せないんじゃないかと思ってしまうほどだった。
　ーそういや、インドで狼に育てられた子がいるって話、以前どこかで聞いたことがあるけどー
　実話かどうかははっきりしないが、もしそう言った野生動物に育てられた子供がいたなら、こういう姿になっていたとしてもおかしくはないーそう思えても不自然なところがないくらい野犬じみた少女たちだった。
　ただ、顔立ちは非常に整っている。それゆえに不気味でもあるのだがーあんなに可愛いのに惜しいな、と思う明子だったりする。
　ーおおっと、いけない・・・あたしは穂乃果一筋だったー
「ゲーム？」
　明子の隣にいた、顔を見たこともない少女が言った。印象としては、小柄なこともありよく動き回る小動物みたいな子だった。栗色の髪をポニーテールにまとめており、その髪型自体がリスの尻尾を連想させるものだった。実際、リスみたいに小回りが利いていそうな子ではある。
「一体、どんなゲームをやらせようって言うのよ？」
　腰に両手をあてがい、リス子さんはメイドさんに尋ねた。ちなみに、彼女の名前はわからないので、明子は自分の中でリス子さんと勝手に命名していた。
　リス子さんだけではなく、他に集められた少女たちも、口々にメイドさんに疑問をぶつけている。中には、さっさと元の場所へ帰せ、と文句を言う輩もいるようだった。
「まあ、毎回ゲーム内容は変わるんだけどね。ただ、罰ゲームが最悪なだけで・・・」
　このゲームに3度目の挑戦をする羽目になった優菜が、再び小声で零した。その隣で、美羽が軽く頷いている。
　ーよっぽど、やばい罰ゲームなんだろうな・・・絶対負けられないっていうくらいだからー
　明子が、どこか他人事のようにぼんやりと考えていると、突然メイドさんがポンポンと両手を叩いた。
「これから詳しいことについてご説明いたします」
　どうやら、このゲームの主催者であるメイドさんから説明が始まるらしい。明子をはじめ初参加者達は、おとなしく説明を待つことにした。