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第4章 更なる戦い
第352話 小川明子32
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「ん・・・」
昨夜はほとんど寝付けなかった・・・と思っていたが、多少は微睡みの中にいたらしい。
生欠伸を噛み殺しながら、小川明子はベッドから起き上がった。
「んん・・・気分悪い」
きちんと眠っていないせいだろうか。とにかく全身がだるく、ほとんど疲れが抜けているとは思えない状況だった。
「二度寝・・・っていう気分にもならないんだよな・・・」
記憶のことを気にし出したら、やはり眠れなかった。
「・・・顔、洗ってくるか」
寝起きの顔は不細工だーと自分に言い聞かせながらバストイレ同室の洗面所へと向かう。
「ああ、やっぱり寝起きの顔は、誰にも見せらんないや・・・」
目の下には見事な隈があった。明らかに、寝不足なのが丸わかりだった。
「ふいー、顔を洗うとさっぱりするなぁ」
眠気覚ましに洗顔を済ませ、ついでにトイレで他の用も足しておく。
そういや、ビジネスホテルなんて、泊まるの初めてだよな、私」
友達の家にお泊りしたことはあるものの、一人でビジネスホテルに宿泊したのは人生で初めてだったはずだ。日本にいた頃は、家族と一緒なら旅館には宿泊したことはあるが、そこはやはり、一人で泊まるのと勝手が違う。うるさい弟や妹の相手もしなければならないし、とにかく落ち着いていた記憶はない。
「・・・まあ、私自身も結構騒いで親に迷惑かけたけどさ」
日本にいる家族は、今頃どうしているだろうか。
運営側の説明によれば、この大会に参加している者達は全員が死亡扱いとなっているらしい。つまりは、この大会で殺し合いをさせようとも、その家族が騒ぐということもない。だからこそ、このデスゲームが成り立っているとも言えた。外部要因を可能な限り排除しなければ、とてもデスゲームなどやらせられないからだ。
「あたしら、あっちじゃあもう死んでることになってんだよね・・・さすがに、もう会いに行くのは無理だろうな」
死んだ人間が生き返るーなんてありえないーなどとは言えない。なぜなら、この大会の参加者自信が、一度死亡した後、運営側の手によって蘇生させられた人間ばかりだからだ。
要するに、この大会の運営側は、人の生死をコントロールするだけの技術力を持っているということになる。あるいは、人智を超えた超常的な能力を有しているのかもしれない。
「・・・あたしら、この先、本当にどうなっちゃうんだろうね・・・穂乃果」
この場にはいない想い人に語り掛ける明子。洗面所の鏡面の中の自分の顔は、心なしか頼りない表情になっている。自分らしくないと言いたいところだが、これから先のことを思えばどうしても不安を消し去ることができなかった。
「・・・今日はどうするかな」
これから先、行くアテがあるわけも出ない。かといって、このままここに留まっていれば、いずれはあの女ー昨日、さんざん自分のことを追い掛け回してくれたあいつに見つかるかもしれない。
「見つからないようにしなきゃ・・・どう考えても、あたしが適うような相手じゃなさそうだし」
慎重に、この街から離れる算段をつける明子ーまさか、今自分がいるホテルの3階に、想い人がいるとも知らずにー
昨夜はほとんど寝付けなかった・・・と思っていたが、多少は微睡みの中にいたらしい。
生欠伸を噛み殺しながら、小川明子はベッドから起き上がった。
「んん・・・気分悪い」
きちんと眠っていないせいだろうか。とにかく全身がだるく、ほとんど疲れが抜けているとは思えない状況だった。
「二度寝・・・っていう気分にもならないんだよな・・・」
記憶のことを気にし出したら、やはり眠れなかった。
「・・・顔、洗ってくるか」
寝起きの顔は不細工だーと自分に言い聞かせながらバストイレ同室の洗面所へと向かう。
「ああ、やっぱり寝起きの顔は、誰にも見せらんないや・・・」
目の下には見事な隈があった。明らかに、寝不足なのが丸わかりだった。
「ふいー、顔を洗うとさっぱりするなぁ」
眠気覚ましに洗顔を済ませ、ついでにトイレで他の用も足しておく。
そういや、ビジネスホテルなんて、泊まるの初めてだよな、私」
友達の家にお泊りしたことはあるものの、一人でビジネスホテルに宿泊したのは人生で初めてだったはずだ。日本にいた頃は、家族と一緒なら旅館には宿泊したことはあるが、そこはやはり、一人で泊まるのと勝手が違う。うるさい弟や妹の相手もしなければならないし、とにかく落ち着いていた記憶はない。
「・・・まあ、私自身も結構騒いで親に迷惑かけたけどさ」
日本にいる家族は、今頃どうしているだろうか。
運営側の説明によれば、この大会に参加している者達は全員が死亡扱いとなっているらしい。つまりは、この大会で殺し合いをさせようとも、その家族が騒ぐということもない。だからこそ、このデスゲームが成り立っているとも言えた。外部要因を可能な限り排除しなければ、とてもデスゲームなどやらせられないからだ。
「あたしら、あっちじゃあもう死んでることになってんだよね・・・さすがに、もう会いに行くのは無理だろうな」
死んだ人間が生き返るーなんてありえないーなどとは言えない。なぜなら、この大会の参加者自信が、一度死亡した後、運営側の手によって蘇生させられた人間ばかりだからだ。
要するに、この大会の運営側は、人の生死をコントロールするだけの技術力を持っているということになる。あるいは、人智を超えた超常的な能力を有しているのかもしれない。
「・・・あたしら、この先、本当にどうなっちゃうんだろうね・・・穂乃果」
この場にはいない想い人に語り掛ける明子。洗面所の鏡面の中の自分の顔は、心なしか頼りない表情になっている。自分らしくないと言いたいところだが、これから先のことを思えばどうしても不安を消し去ることができなかった。
「・・・今日はどうするかな」
これから先、行くアテがあるわけも出ない。かといって、このままここに留まっていれば、いずれはあの女ー昨日、さんざん自分のことを追い掛け回してくれたあいつに見つかるかもしれない。
「見つからないようにしなきゃ・・・どう考えても、あたしが適うような相手じゃなさそうだし」
慎重に、この街から離れる算段をつける明子ーまさか、今自分がいるホテルの3階に、想い人がいるとも知らずにー
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