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第4章 更なる戦い
第350話 小川明子30
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「あらあら・・・」
ケライノーに頬を張られたというのに、相も変わらずの涼し気な顔つきで佇む優里。
「くっ・・・」
むしろ優里の頬を張ったケライノーの方が、屈辱的な表情をしている。
ーこいつ・・・わざとやられやがったな・・・ー
さっきの動きといい、明らかにこちらの運動能力を凌駕している。3人とも(穂乃果も入れれば4人になるが)、彼女の動きについていけず、穂乃果への接近を許してしまったのだ。当然、ケライノーに襟首をつかまれたのも、頬を張られたのもわざとということだろう。
「それでは、今日はほんのご挨拶ということで、ごきげんよう、皆様」
慇懃無礼というべきなのだろうか。挨拶こそ穏やかだが、どこか見下されているような気がする。
優里は、もうここに用はないと判断したのか、そのままエレベータに乗り込もうとする。
その時ー
「ああ、そうそう」
何かを思い出したかのように、にわかに4人の方へと振り返る優里。
「この辺りで、髪の毛の短い、どこか男の子っぽい子を見かけませんでしか?」
「はあ!?」
優里の言葉を聞いて、穂乃果の脳裏を真っ先によぎったのは、言うまでもなく小川明子の事であった。
ーまさかー
穂乃果が俯いて思案顔になる。まさかとは思うが、明子を探しているのだろうか、この人は。
とはいえ、今、優里から聞かされた特徴だけでは、明子だと断定するのは早計だ。同じ条件を満たす参加者など、他にいくらでもいるだろう。
「んな奴知らねえよ。あたしらだって、昨日ここに来たばっかりだしな」
ケライノーの代わりに、アエローが食って掛かるように答えた。そんなアエローに対し、オキュペテーが軽く肘打ちする。
「おい・・・」
あんまりこちらの状況が知られるようなことは喋るな・・・そう言おうとした時、
「そう・・・あなた方は、昨日初めてこの街を訪れたのね。道理で」
優里は穂乃果以外の3人の恰好を改めて見回してみた。明らかに、刑務官の制服ーただし、やたらとスカート丈の長さが短いのはご愛嬌というところだろうか。自分の好みではないものの、この3人も確かに美しい部類には入る。おそらく、その恰好も意識しての事だろう。見る者を誘惑するには十分すぎる恰好だった。
「それでは、改めて、ごきげんよう皆様」
優里は再びエレベータへと入っていく。行き先は1Fのようだった。
「・・・何なんだ、あいつは」
優里が去ってから、アエローたちは張りつめていた緊張の糸が突然切れたかのように、その場にへたり込んでしまった。
「あ、あの・・・みなさん」
そんな彼女たちを気遣う穂乃果。3人の様子から見て、あの藤原優里と名乗った少女がただ者ではないということを十分思い知らされた。
いや、穂乃果自身も、優里に手を出されたばかりだ。彼女の得体の知れない恐ろしさは、今の一件で身に染みて噛みしめていたのだった。
ケライノーに頬を張られたというのに、相も変わらずの涼し気な顔つきで佇む優里。
「くっ・・・」
むしろ優里の頬を張ったケライノーの方が、屈辱的な表情をしている。
ーこいつ・・・わざとやられやがったな・・・ー
さっきの動きといい、明らかにこちらの運動能力を凌駕している。3人とも(穂乃果も入れれば4人になるが)、彼女の動きについていけず、穂乃果への接近を許してしまったのだ。当然、ケライノーに襟首をつかまれたのも、頬を張られたのもわざとということだろう。
「それでは、今日はほんのご挨拶ということで、ごきげんよう、皆様」
慇懃無礼というべきなのだろうか。挨拶こそ穏やかだが、どこか見下されているような気がする。
優里は、もうここに用はないと判断したのか、そのままエレベータに乗り込もうとする。
その時ー
「ああ、そうそう」
何かを思い出したかのように、にわかに4人の方へと振り返る優里。
「この辺りで、髪の毛の短い、どこか男の子っぽい子を見かけませんでしか?」
「はあ!?」
優里の言葉を聞いて、穂乃果の脳裏を真っ先によぎったのは、言うまでもなく小川明子の事であった。
ーまさかー
穂乃果が俯いて思案顔になる。まさかとは思うが、明子を探しているのだろうか、この人は。
とはいえ、今、優里から聞かされた特徴だけでは、明子だと断定するのは早計だ。同じ条件を満たす参加者など、他にいくらでもいるだろう。
「んな奴知らねえよ。あたしらだって、昨日ここに来たばっかりだしな」
ケライノーの代わりに、アエローが食って掛かるように答えた。そんなアエローに対し、オキュペテーが軽く肘打ちする。
「おい・・・」
あんまりこちらの状況が知られるようなことは喋るな・・・そう言おうとした時、
「そう・・・あなた方は、昨日初めてこの街を訪れたのね。道理で」
優里は穂乃果以外の3人の恰好を改めて見回してみた。明らかに、刑務官の制服ーただし、やたらとスカート丈の長さが短いのはご愛嬌というところだろうか。自分の好みではないものの、この3人も確かに美しい部類には入る。おそらく、その恰好も意識しての事だろう。見る者を誘惑するには十分すぎる恰好だった。
「それでは、改めて、ごきげんよう皆様」
優里は再びエレベータへと入っていく。行き先は1Fのようだった。
「・・・何なんだ、あいつは」
優里が去ってから、アエローたちは張りつめていた緊張の糸が突然切れたかのように、その場にへたり込んでしまった。
「あ、あの・・・みなさん」
そんな彼女たちを気遣う穂乃果。3人の様子から見て、あの藤原優里と名乗った少女がただ者ではないということを十分思い知らされた。
いや、穂乃果自身も、優里に手を出されたばかりだ。彼女の得体の知れない恐ろしさは、今の一件で身に染みて噛みしめていたのだった。
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