百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第4章 更なる戦い

第319話 彩木穂乃果50

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「・・・正直、あたしはこの島に来られてよかったと思ってる」
 ケライノーの独白に、穂乃果は少しだけ驚愕の表情を浮かべた。
「あんたからしてみれば、殺し合いを強要されるこの島は最低の場所かもしれないけどさ・・・多分、あたしは、あのまま日本に残っていたとしても、ただダラダラと生きていただけだったように思えるんだ」
 ケライノーが自らの掌を見つめている。もちろん、その上に何かが乗っているというわけではないが、彼女はまるで、そこにはない何かを凝視しているように見えた。
「アエロー、オキュペテーはどうだか知らないけどさ・・・こうして「普通じゃない」人生を歩むってのも悪くはないと思ってるんだ・・・もちろん、この先に待ち受ける運命は、ろくでもないものになるってのはわかってる。なんたって、殺し合いをし続けなきゃいけねえんだしな・・・今はつるんでるが、もしかしたらあの二人ともやり合わなくちゃならない時が来るかもしれない・・・それも、そう遠くない未来に。でも、あたしはそれでも、今のここの生活は気に入ってるんだ」
 ケライノーが少しだけ微笑みながら、穂乃果の方へ振り向いた。どこか寂し気な笑顔だと、穂乃果は思った。
「あっちじゃあ、常に「普通」であることを求められていた。周りの顔色ばかり窺って、それに馴染めないとはじき出されてしまう息苦しい社会・・・自由だとは言うけど、ちっとも自由じゃない社会。そんな場所から逃れたくて、ネトゲに嵌ったけど、結局は満たされなかった・・・でも、ここなら咎められることはない」
「でも、それは・・・」
 穂乃果がこれから言おうとしていることはわかる。それゆえに、ケライノーは穂乃果の言葉を制して、
「そう、殺し合いという最低の行為と引き換えの自由さ。いや、自由って言うよりも放埓で言った方がいいのかな?でも、それが許されてしまうのが、この島なんだよ。ここでしか、できないことなんだ」
「・・・」
 ケライノーの言葉に、ただ黙って耳を傾ける穂乃果。
「別に、アンタにあたしらと同じになれって言ってんじゃないさ・・・ただ、ここはそういう場所だってことを言いたかった。そして、あたしは、例え周りから人間の屑だと罵られようとも、生前よりも今の生活の方が性に合ってる。そう言うことだ」
 ケライノーは、おもむろにベッドから立ち上がると、ベッドの上で枕を抱えている穂乃果を見やり、ニカっと白い歯を見せて笑いながら、
「あんたの場合、望んでこの島にいるわけじゃないだろうけど、ここにいる以上は、何か一つでもいいーこの島にいることで得られる何かを探してみてもいいんじゃねえか?何でもありのこの島だからこそ、日本にいた頃の自分では気が付かなかった何かを発見できるかもしれない。それは、悪いことばかりでもないだろ?」
 ケライノーの言葉が穂乃果の胸に響くー今、この島にいる私は、この島で何を見出せるのだろうー
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