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第4章 更なる戦い
第259話 勅使河原の挑戦15
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ーまさか・・・この私が手も足も出ないなんてー
アルカディア島にある刑務所ーここの刑務所長である湯島亜里沙との勝負に負けた勅使河原は、そのまま独房へと収容された。
見る限り、風呂やトイレなど一通り生活に必要な設備はあるものの、他には一切ない退屈極まりない部屋である。
ー独房なのだから、当然よねー
どうやら、ここの所長殿は、このまま生かさず殺さずにしておくつもりらしい。さすがに、食事などは運んでは来るものの、それ以外には誰もこの場所に近寄っては来ないようだった。
ーせっかく、望みの場所へ来たというのにー
氷上亜美の首をもう一人の首と連結させたとき、かつてないほどの興奮を覚えたものだ。
この刑務所には、たくさんの獲物がいる。これから「工芸品」を作り上げるのには十分すぎるほどの材料が揃っているのだ。
それなのに、自分はこんな場所に幽閉され、一切の自由を奪われている身である。すぐ近くに、求めるものはたくさんあるというのに、全くもって忌々しい限りだった。
「今のところ、この独房まで来るのは、あの所長と赤毛の女だけね」
この独房付近にやってくるのは、亜里沙と果林の二人だけーおそらく亜里沙が、意図的に他の看守たちを近づけさせないようにしているのだろう。いくら独房から抜け出せないとはいえ、万が一の事態に備えて対処できる者達だけしか近寄らないようにしているらしい。
それだけ、勅使河原のことを警戒しているということだ。
「・・・何が、特別ではない、よ・・・」
ここまで警戒されていれば、相手が自分のことをどう見ているかよくわかるー「特別ではない」ーつまりは「普通」の相手にここまでする必要はないはずである。
勅使河原は、しばらくの間、壁に背を預けて座り込んだ。
そういえば、生前に事件を起こして逮捕された後、警察に捕まっていた時も、こんなふうに自由を奪われてぼんやりとしていただけだった気がする。
結局、この島に来ても同じことになろうとはー
「・・・ここから脱出するにしても、まだ機会を窺わないと」
この独房から簡単に抜け出せるとは考えていないが、必ず出られるチャンスは訪れるはずだ。この大会のルール上、いつまでもここに幽閉させ続けることはできないだろう。
「待っていなさい・・・湯島亜里沙。必ずあなたを工芸品にしてあげるから」
今回は確かに不覚を取った。しかし、このまま勝ち逃げされるつもりもない。
かつんかつんー
ふと、この独房に近寄ってくる靴の音が廊下に響いてきた。間違いない、あの女たちだ。
ー最後には必ず私が勝つー
まだ勝負は始まったばかりー完全に負けたわけではないのだ。
アルカディア島にある刑務所ーここの刑務所長である湯島亜里沙との勝負に負けた勅使河原は、そのまま独房へと収容された。
見る限り、風呂やトイレなど一通り生活に必要な設備はあるものの、他には一切ない退屈極まりない部屋である。
ー独房なのだから、当然よねー
どうやら、ここの所長殿は、このまま生かさず殺さずにしておくつもりらしい。さすがに、食事などは運んでは来るものの、それ以外には誰もこの場所に近寄っては来ないようだった。
ーせっかく、望みの場所へ来たというのにー
氷上亜美の首をもう一人の首と連結させたとき、かつてないほどの興奮を覚えたものだ。
この刑務所には、たくさんの獲物がいる。これから「工芸品」を作り上げるのには十分すぎるほどの材料が揃っているのだ。
それなのに、自分はこんな場所に幽閉され、一切の自由を奪われている身である。すぐ近くに、求めるものはたくさんあるというのに、全くもって忌々しい限りだった。
「今のところ、この独房まで来るのは、あの所長と赤毛の女だけね」
この独房付近にやってくるのは、亜里沙と果林の二人だけーおそらく亜里沙が、意図的に他の看守たちを近づけさせないようにしているのだろう。いくら独房から抜け出せないとはいえ、万が一の事態に備えて対処できる者達だけしか近寄らないようにしているらしい。
それだけ、勅使河原のことを警戒しているということだ。
「・・・何が、特別ではない、よ・・・」
ここまで警戒されていれば、相手が自分のことをどう見ているかよくわかるー「特別ではない」ーつまりは「普通」の相手にここまでする必要はないはずである。
勅使河原は、しばらくの間、壁に背を預けて座り込んだ。
そういえば、生前に事件を起こして逮捕された後、警察に捕まっていた時も、こんなふうに自由を奪われてぼんやりとしていただけだった気がする。
結局、この島に来ても同じことになろうとはー
「・・・ここから脱出するにしても、まだ機会を窺わないと」
この独房から簡単に抜け出せるとは考えていないが、必ず出られるチャンスは訪れるはずだ。この大会のルール上、いつまでもここに幽閉させ続けることはできないだろう。
「待っていなさい・・・湯島亜里沙。必ずあなたを工芸品にしてあげるから」
今回は確かに不覚を取った。しかし、このまま勝ち逃げされるつもりもない。
かつんかつんー
ふと、この独房に近寄ってくる靴の音が廊下に響いてきた。間違いない、あの女たちだ。
ー最後には必ず私が勝つー
まだ勝負は始まったばかりー完全に負けたわけではないのだ。
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