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第4章 更なる戦い
第255話 勅使河原の挑戦11
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「でも、ここはあなたのために材料を提供するためにある場所ではないのよ」
亜里沙が、冷ややかな声で勅使河原に告げる。
「勝手に人的資源を浪費されても困るわ」
この刑務所に収容されている囚人たちは、そのほとんどがペナルティ対象者かその予備軍だ。そして、力のないもの達でもある。
とはいえ、いくらペナルティ対象者やその予備軍だからと言って、好き勝手に囚人に戦いを挑み、結果「処刑」ばかりしていたのでは、いずれ刑務所の「人的資源」は枯渇してしまう。
そうならないためにも、囚人の確保と「処刑」については、それなりの管理計画のもとに行われているのだがー
ーおそらく、この勅使河原マヤという女は、そのサイクルを乱すー
勅使河原マヤは、今しがた「工芸品」という言葉を用いた。おそらく、彼女が生前に3人の少女たちを殺害に及んだのも、そしてその首を切断し、冷凍保存し続けたのも、全ては自らの芸術の追求ーつまりは・・・「工芸品」を作るためなのだろう。
つまりは、勅使河原マヤにとって他者を殺し、その首を奪うことは彼女自身の芸術の追求であり、そこに「勘定」は一切ないーつまりは計画性や経済性といった要素は含まれてはおるまい。
亜里沙は、この刑務所を「管理」する立場だ。大会運営側との交渉で、この地位を掴んだのだ。
勅使河原を受け入れてしまえば、色々な面でこの刑務所の運営に支障をきたすだろう。それが、例え彼女を「囚人」として収容したとしても、同じである。
果林や夏樹だけでなく、亜里沙も、この女から発せられる独特な感覚に気が付いていた。人を惹きつける強い魅力はある一方、人をいらだたせるような不安感、焦燥感を煽り立てるような、なんとも形容しがたい雰囲気をまとった女ー
おそらく、生前の彼女は、その魅力で周囲の生徒達を籠絡していたのだろう。そして、その中の3人が犠牲にあった。
この女に深く関わろうとする者、あるいはこの女に強く関心を持たれた者は、遠からず破滅させられる。そして、この女自身もまた、自らの破滅を呼び寄せてしまう。それも自覚しているところがさらに厄介とも言えた。
ーこの女を退けなければー
亜里沙は、すっと勅使河原の前に一歩進み出ると、
「今ならまだ見逃してあげるわ・・・勅使河原さん、この場から立ち去りなさい」
凛然とした声で、厳かに命じた。
ーこういう時の亜里沙は、やっぱり怖いなー
亜里沙の今のような姿を見るたびに、果林はそう思う。
それだけ、今の亜里沙が本気だということだ。
亜里沙の声に、しばしの間沈黙した勅使河原だったがー
「もし、私が断ると言ったら・・・?」
目を細め、嫣然とした笑みを浮かべながら、勅使河原は聞き返した。
その時、亜里沙の表情が、消えた。
亜里沙が、冷ややかな声で勅使河原に告げる。
「勝手に人的資源を浪費されても困るわ」
この刑務所に収容されている囚人たちは、そのほとんどがペナルティ対象者かその予備軍だ。そして、力のないもの達でもある。
とはいえ、いくらペナルティ対象者やその予備軍だからと言って、好き勝手に囚人に戦いを挑み、結果「処刑」ばかりしていたのでは、いずれ刑務所の「人的資源」は枯渇してしまう。
そうならないためにも、囚人の確保と「処刑」については、それなりの管理計画のもとに行われているのだがー
ーおそらく、この勅使河原マヤという女は、そのサイクルを乱すー
勅使河原マヤは、今しがた「工芸品」という言葉を用いた。おそらく、彼女が生前に3人の少女たちを殺害に及んだのも、そしてその首を切断し、冷凍保存し続けたのも、全ては自らの芸術の追求ーつまりは・・・「工芸品」を作るためなのだろう。
つまりは、勅使河原マヤにとって他者を殺し、その首を奪うことは彼女自身の芸術の追求であり、そこに「勘定」は一切ないーつまりは計画性や経済性といった要素は含まれてはおるまい。
亜里沙は、この刑務所を「管理」する立場だ。大会運営側との交渉で、この地位を掴んだのだ。
勅使河原を受け入れてしまえば、色々な面でこの刑務所の運営に支障をきたすだろう。それが、例え彼女を「囚人」として収容したとしても、同じである。
果林や夏樹だけでなく、亜里沙も、この女から発せられる独特な感覚に気が付いていた。人を惹きつける強い魅力はある一方、人をいらだたせるような不安感、焦燥感を煽り立てるような、なんとも形容しがたい雰囲気をまとった女ー
おそらく、生前の彼女は、その魅力で周囲の生徒達を籠絡していたのだろう。そして、その中の3人が犠牲にあった。
この女に深く関わろうとする者、あるいはこの女に強く関心を持たれた者は、遠からず破滅させられる。そして、この女自身もまた、自らの破滅を呼び寄せてしまう。それも自覚しているところがさらに厄介とも言えた。
ーこの女を退けなければー
亜里沙は、すっと勅使河原の前に一歩進み出ると、
「今ならまだ見逃してあげるわ・・・勅使河原さん、この場から立ち去りなさい」
凛然とした声で、厳かに命じた。
ーこういう時の亜里沙は、やっぱり怖いなー
亜里沙の今のような姿を見るたびに、果林はそう思う。
それだけ、今の亜里沙が本気だということだ。
亜里沙の声に、しばしの間沈黙した勅使河原だったがー
「もし、私が断ると言ったら・・・?」
目を細め、嫣然とした笑みを浮かべながら、勅使河原は聞き返した。
その時、亜里沙の表情が、消えた。
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