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第4章 更なる戦い
第252話 勅使河原の挑戦8
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「あら・・・あなたはもしかして、ここの管理者さんかしら?」
勅使河原が小首をかしげるような仕草をしながら、施設から外に出てきた湯島亜里沙に尋ねた。その仕草一つ一つは絵になるのだが、どうにもこの女の行動にはある種のいやらしさというか、生理的に受け付けない何かを感じてしまうーつくづく好きになれない女だと、果林は思った。
「そうね・・・ここの管理を任されているという意味では、確かに私は管理者と言ってもいいわね」
勅使河原に対する亜里沙は堂々としたものだった。恋人である果林と一緒にいる時には、普段のおっとりした穏やかな女性に戻る彼女も、今は凛とした態度で勅使河原を見据えている。
「私は、この刑務所の所長をしている湯島亜里沙。あなたは?」
勅使河原は、今日3度目になる自己紹介をし始めた。
「私は勅使河原マヤと言います。今日は、こちらの見学に訪れたのよ・・・そちらのお二人の刑務官さんにはもう説明しているわね」
相変わらずの慇懃無礼といった態度で、勅使河原は湯島亜里沙に自分の名前と目的について説明する。果林にとっては、その態度は気に入らないものだったが、亜里沙自身はすました顔をしているようだった。
ーさすがに、亜里沙は動じないかー
おそらく、亜里沙も、この勅使河原マヤという少女が放つ独特の雰囲気には気が付いているはずだ。外見だけを見れば、日本人形のように精巧な造形の顔立ちーしかし、見る者をどこか不安と焦燥感に駆り立てるような胡乱な雰囲気を放つ浮世離れした少女。
だが、そうでありながら、どこか人を惹きつけるような不可思議な魅力も同時に放っている。
ーサイコパスなのか、こいつはー
サイコパスと呼ばれる人々は、他者に対する共感が乏しい一方でどこか人を引き付ける魅力があるという。
単純に判断することはできないが、他者の不安と焦燥感を駆り立てる一方で、人を自然と引き寄せてしまうこの女は、確かにサイコパス的と言えるかもしれない。
ーそれにしても、勅使河原、か・・・どこかで聞いたことがある名前だな・・・ー
果林の生前の記憶に、何か引っかかるものがある。
この大会に参加している果林には、生前の死亡直前の記憶がないー正確に言えば、ないというよりも曖昧化されていて、そこだけがはっきりと思い出せなくなっているような感覚なのだ。
少なくとも、自分の死に関与している名前ではないのはわかる。しかし、どこでこの名前を訊いたのかー
「そう、勅使河原マヤさんね・・・どうりで」
亜里沙は、どうやら彼女のことを知っているみたいだった。ただ、顔見知りというわけではないのは、先ほどの名乗り合いからもわかることである。
「あの・・・女子高生3人殺害事件の、犯人さんでしょ?あなたは」
亜里沙の言葉に、果林もようやくその名前をどこで知ったのか思い出したのだったー
勅使河原が小首をかしげるような仕草をしながら、施設から外に出てきた湯島亜里沙に尋ねた。その仕草一つ一つは絵になるのだが、どうにもこの女の行動にはある種のいやらしさというか、生理的に受け付けない何かを感じてしまうーつくづく好きになれない女だと、果林は思った。
「そうね・・・ここの管理を任されているという意味では、確かに私は管理者と言ってもいいわね」
勅使河原に対する亜里沙は堂々としたものだった。恋人である果林と一緒にいる時には、普段のおっとりした穏やかな女性に戻る彼女も、今は凛とした態度で勅使河原を見据えている。
「私は、この刑務所の所長をしている湯島亜里沙。あなたは?」
勅使河原は、今日3度目になる自己紹介をし始めた。
「私は勅使河原マヤと言います。今日は、こちらの見学に訪れたのよ・・・そちらのお二人の刑務官さんにはもう説明しているわね」
相変わらずの慇懃無礼といった態度で、勅使河原は湯島亜里沙に自分の名前と目的について説明する。果林にとっては、その態度は気に入らないものだったが、亜里沙自身はすました顔をしているようだった。
ーさすがに、亜里沙は動じないかー
おそらく、亜里沙も、この勅使河原マヤという少女が放つ独特の雰囲気には気が付いているはずだ。外見だけを見れば、日本人形のように精巧な造形の顔立ちーしかし、見る者をどこか不安と焦燥感に駆り立てるような胡乱な雰囲気を放つ浮世離れした少女。
だが、そうでありながら、どこか人を惹きつけるような不可思議な魅力も同時に放っている。
ーサイコパスなのか、こいつはー
サイコパスと呼ばれる人々は、他者に対する共感が乏しい一方でどこか人を引き付ける魅力があるという。
単純に判断することはできないが、他者の不安と焦燥感を駆り立てる一方で、人を自然と引き寄せてしまうこの女は、確かにサイコパス的と言えるかもしれない。
ーそれにしても、勅使河原、か・・・どこかで聞いたことがある名前だな・・・ー
果林の生前の記憶に、何か引っかかるものがある。
この大会に参加している果林には、生前の死亡直前の記憶がないー正確に言えば、ないというよりも曖昧化されていて、そこだけがはっきりと思い出せなくなっているような感覚なのだ。
少なくとも、自分の死に関与している名前ではないのはわかる。しかし、どこでこの名前を訊いたのかー
「そう、勅使河原マヤさんね・・・どうりで」
亜里沙は、どうやら彼女のことを知っているみたいだった。ただ、顔見知りというわけではないのは、先ほどの名乗り合いからもわかることである。
「あの・・・女子高生3人殺害事件の、犯人さんでしょ?あなたは」
亜里沙の言葉に、果林もようやくその名前をどこで知ったのか思い出したのだったー
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