250 / 499
第4章 更なる戦い
第249話 勅使河原の挑戦5
しおりを挟む
「・・・見学、だと?」
釘宮夏樹が訊き返す。
「ええ、そうよ・・・素敵な刑務官さん」
勅使河原は穏やかな笑みを浮かべながら答えたー穏やかではあるのだが、見る者にどこか落ち着かなさを感じさせるのは、いったいなぜなのだろうかー
夏樹は、内心の不安を相手に悟られないように、平然とした振りを装いながら、
「刑務所を見学するというのか・・・?」
かすかに口の端を釣り上げ、夏樹はさらに続ける。
「見学希望者とは、珍しいな・・・何だお前、囚人になりたいのか」
目の前の女は、言い知れぬ何かを抱えているのは間違いないが、しかしその容姿は確かに抜群だ。夏樹自身も、これほどの美人にはそうそうお目にかかったことはなかった。
ここでこのまま逃がしてしまうのは、確かに惜しいかもしれない。だがー
ーなぜなんだろうな・・・どうしてこいつを見ていると、こんなに落ち着かなくなるんだ・・・?ー
本能的な部分で、自分はこの女を恐れている。この女に見つめられているだけで、こうも焦燥感を駆り立てられるのは、なぜなのだろう。
「フフフ・・・」
勅使河原マヤと名乗った女が微笑を浮かべている。本来なら、これだけ美しい容姿の持ち主に見つめられるだけでドギマギするはずなのに、湧いてくる感情は不快感を伴うものばかりだった。
「勘違いなさらないで、刑務官さん」
勅使河原が軽く小首をかしげる仕草をした後の、ほんの一瞬だった。
「・・・っ!?」
一瞬で、夏樹の目の前に間合いを詰めてきたのだ。夏樹は、驚愕のあまり、金縛りにあったかのように動くことができないでいた。
勅使河原の白く細い手が、夏樹の頬に触れてくる。ひんやりとしたその手に触れられるだけで夏樹は自らの背筋が凍り付くような錯覚に陥った。
「・・・お、お前」
夏樹の声に怒気が混じるーが、体は動かないーなぜか動いてくれないのだ。
ー何なんだ、いったいどうなってるんだよー
「素敵な刑務官さん、私はここを見学したいのよ・・・あなたたちと同じ立場になって」
勅使河原は、愛おしそうに夏樹の頬を撫でると、その手を彼女の喉元へと下ろした。白く細い少女の首は、ほんの少しでも力を入れれば簡単に絞め殺してしまえそうに思われるくらい脆そうだった。
「あ、ああ・・・ああ」
先ほどまでの怒気を含んだ声が、今度は少しずつ恐怖に彩られていくー
ーいやだー
この女に触れられるのを、なぜか夏樹は嫌がった。彼女の本能が受け付けないみたいな感覚だったのだ。
ーいやだいやだー
勅使河原の両手の細い指が、彼女の首に添えられる。まるでいつでも絞め殺せるように、と勅使河原が備えているようにも見えた。
ーいやだいやだいやだー
勅使河原の、髪と同じくらいに黒々とした瞳が怯えた夏樹の姿を映し出していた。
ーだれか・・・助けてー
声を上げようとするが、今度は声すら出なくなっていたー
釘宮夏樹が訊き返す。
「ええ、そうよ・・・素敵な刑務官さん」
勅使河原は穏やかな笑みを浮かべながら答えたー穏やかではあるのだが、見る者にどこか落ち着かなさを感じさせるのは、いったいなぜなのだろうかー
夏樹は、内心の不安を相手に悟られないように、平然とした振りを装いながら、
「刑務所を見学するというのか・・・?」
かすかに口の端を釣り上げ、夏樹はさらに続ける。
「見学希望者とは、珍しいな・・・何だお前、囚人になりたいのか」
目の前の女は、言い知れぬ何かを抱えているのは間違いないが、しかしその容姿は確かに抜群だ。夏樹自身も、これほどの美人にはそうそうお目にかかったことはなかった。
ここでこのまま逃がしてしまうのは、確かに惜しいかもしれない。だがー
ーなぜなんだろうな・・・どうしてこいつを見ていると、こんなに落ち着かなくなるんだ・・・?ー
本能的な部分で、自分はこの女を恐れている。この女に見つめられているだけで、こうも焦燥感を駆り立てられるのは、なぜなのだろう。
「フフフ・・・」
勅使河原マヤと名乗った女が微笑を浮かべている。本来なら、これだけ美しい容姿の持ち主に見つめられるだけでドギマギするはずなのに、湧いてくる感情は不快感を伴うものばかりだった。
「勘違いなさらないで、刑務官さん」
勅使河原が軽く小首をかしげる仕草をした後の、ほんの一瞬だった。
「・・・っ!?」
一瞬で、夏樹の目の前に間合いを詰めてきたのだ。夏樹は、驚愕のあまり、金縛りにあったかのように動くことができないでいた。
勅使河原の白く細い手が、夏樹の頬に触れてくる。ひんやりとしたその手に触れられるだけで夏樹は自らの背筋が凍り付くような錯覚に陥った。
「・・・お、お前」
夏樹の声に怒気が混じるーが、体は動かないーなぜか動いてくれないのだ。
ー何なんだ、いったいどうなってるんだよー
「素敵な刑務官さん、私はここを見学したいのよ・・・あなたたちと同じ立場になって」
勅使河原は、愛おしそうに夏樹の頬を撫でると、その手を彼女の喉元へと下ろした。白く細い少女の首は、ほんの少しでも力を入れれば簡単に絞め殺してしまえそうに思われるくらい脆そうだった。
「あ、ああ・・・ああ」
先ほどまでの怒気を含んだ声が、今度は少しずつ恐怖に彩られていくー
ーいやだー
この女に触れられるのを、なぜか夏樹は嫌がった。彼女の本能が受け付けないみたいな感覚だったのだ。
ーいやだいやだー
勅使河原の両手の細い指が、彼女の首に添えられる。まるでいつでも絞め殺せるように、と勅使河原が備えているようにも見えた。
ーいやだいやだいやだー
勅使河原の、髪と同じくらいに黒々とした瞳が怯えた夏樹の姿を映し出していた。
ーだれか・・・助けてー
声を上げようとするが、今度は声すら出なくなっていたー
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる