百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第4章 更なる戦い

第247話 勅使河原の挑戦3

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 灰色の壁に覆われた、周囲から隔絶された空間ー
 周囲のものを拒絶するかのように建設されたその場所を訪れるのは、勅使河原にとっても初めてのことだった。
「私の場合は、少年拘置所だったわね・・・」
 生前ーつまりは、日本にいた頃、3人の同級生を殺害し、世間を震撼させた殺人鬼の少女は、この施設に収容されることもなく、拘置所の中で果てていた。死亡時のはっきりとした記憶はなかったが、その時の周囲の状況から判断するに、おそらくは自殺だったはずだ。
 もともと、他者はおろか、自分の生にさえ執着していなかった勅使河原にとって、殺戮の果てに自らの命を断ったのはある意味当然の帰結だったのかもしれない。それ以上生き続けても、その先に待つのは緩慢な破滅への道しかないのもわかっていた。
 もし、彼女が事件当時未成年ではなかった場合、そのまま収容され、そしておそらくは死刑を待つだけの身として、ただただその時が来るまで生殺しの状態となっていたであろう場所が、目の前にそびえていた。
「さて・・・」
 勅使河原は、何となくここまで足を運んでしまったものの、これからどうするかはまだ決めていなかった。
 本当に、この場所に他の参加者たちが収容されているのかーそれを確認しようにも、そもそもここにおいそれと忍び込めるのかどうかーまた、仮に入ったとしても、中は全くのもぬけの殻だったということもあるが・・・。
「・・・あら」
 ふと、施設を取り囲む壁の近くに、簡素な台が設置されているのを見つけた。そして、その上にはー
「これはこれは・・・」
 勅使河原は、自然と顔の口角が吊り上がるのを実感していた。
 生首だー晒し首が、5つー
 江戸時代でいえば、まるで打ち首獄門と言わんばかりに、5人の少女の首が晒されている。当然ながら、その首はいずれも美しいー
「へえ・・・ここに晒されているということは、おそらく間違いなさそうね・・・」
 セミロングの少女の首に手を触れてみる。諦観の念を込めた表情のまま、逝った少女の首だった。
「どうやら、当たりのようね・・・」
 ここに首が晒されているーしかも5人もーということは、間違いなくこの刑務所は「機能している」はずだ。つまりは、この少女たちはここに収容され、中で殺されたーそう考えるのが自然である。
「おそらくは、処刑だったのでしょうね」
 この周辺に、他の参加者の姿がないことを併せて考えてみれば、大体見当がつく。
 おそらくこの少女たちは、中で戦いを強制され、そして負けて晒し首になったということだろう。ただ、戦いを強制されたーということからもわかる通り、勝負の中身はほぼ一方的ーつまりは戦いと呼べるような代物でもなく、ほとんど処刑と言ってもいい状態だったのではないだろうか。
「えげつないことをするものね・・・」
 今までの自分の行為を棚に上げて、勅使河原は狂気に満ちた笑みを浮かべながらつぶやいた。そして、改めて目の前の高い壁を見上げるーその、塀に囲まれた園を。
「私の求めるものが、ここにありそうね」
 勅使河原の目に更なる狂気の色が浮かんだ。
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