248 / 499
第4章 更なる戦い
第247話 勅使河原の挑戦3
しおりを挟む
灰色の壁に覆われた、周囲から隔絶された空間ー
周囲のものを拒絶するかのように建設されたその場所を訪れるのは、勅使河原にとっても初めてのことだった。
「私の場合は、少年拘置所だったわね・・・」
生前ーつまりは、日本にいた頃、3人の同級生を殺害し、世間を震撼させた殺人鬼の少女は、この施設に収容されることもなく、拘置所の中で果てていた。死亡時のはっきりとした記憶はなかったが、その時の周囲の状況から判断するに、おそらくは自殺だったはずだ。
もともと、他者はおろか、自分の生にさえ執着していなかった勅使河原にとって、殺戮の果てに自らの命を断ったのはある意味当然の帰結だったのかもしれない。それ以上生き続けても、その先に待つのは緩慢な破滅への道しかないのもわかっていた。
もし、彼女が事件当時未成年ではなかった場合、そのまま収容され、そしておそらくは死刑を待つだけの身として、ただただその時が来るまで生殺しの状態となっていたであろう場所が、目の前にそびえていた。
「さて・・・」
勅使河原は、何となくここまで足を運んでしまったものの、これからどうするかはまだ決めていなかった。
本当に、この場所に他の参加者たちが収容されているのかーそれを確認しようにも、そもそもここにおいそれと忍び込めるのかどうかーまた、仮に入ったとしても、中は全くのもぬけの殻だったということもあるが・・・。
「・・・あら」
ふと、施設を取り囲む壁の近くに、簡素な台が設置されているのを見つけた。そして、その上にはー
「これはこれは・・・」
勅使河原は、自然と顔の口角が吊り上がるのを実感していた。
生首だー晒し首が、5つー
江戸時代でいえば、まるで打ち首獄門と言わんばかりに、5人の少女の首が晒されている。当然ながら、その首はいずれも美しいー
「へえ・・・ここに晒されているということは、おそらく間違いなさそうね・・・」
セミロングの少女の首に手を触れてみる。諦観の念を込めた表情のまま、逝った少女の首だった。
「どうやら、当たりのようね・・・」
ここに首が晒されているーしかも5人もーということは、間違いなくこの刑務所は「機能している」はずだ。つまりは、この少女たちはここに収容され、中で殺されたーそう考えるのが自然である。
「おそらくは、処刑だったのでしょうね」
この周辺に、他の参加者の姿がないことを併せて考えてみれば、大体見当がつく。
おそらくこの少女たちは、中で戦いを強制され、そして負けて晒し首になったということだろう。ただ、戦いを強制されたーということからもわかる通り、勝負の中身はほぼ一方的ーつまりは戦いと呼べるような代物でもなく、ほとんど処刑と言ってもいい状態だったのではないだろうか。
「えげつないことをするものね・・・」
今までの自分の行為を棚に上げて、勅使河原は狂気に満ちた笑みを浮かべながらつぶやいた。そして、改めて目の前の高い壁を見上げるーその、塀に囲まれた園を。
「私の求めるものが、ここにありそうね」
勅使河原の目に更なる狂気の色が浮かんだ。
周囲のものを拒絶するかのように建設されたその場所を訪れるのは、勅使河原にとっても初めてのことだった。
「私の場合は、少年拘置所だったわね・・・」
生前ーつまりは、日本にいた頃、3人の同級生を殺害し、世間を震撼させた殺人鬼の少女は、この施設に収容されることもなく、拘置所の中で果てていた。死亡時のはっきりとした記憶はなかったが、その時の周囲の状況から判断するに、おそらくは自殺だったはずだ。
もともと、他者はおろか、自分の生にさえ執着していなかった勅使河原にとって、殺戮の果てに自らの命を断ったのはある意味当然の帰結だったのかもしれない。それ以上生き続けても、その先に待つのは緩慢な破滅への道しかないのもわかっていた。
もし、彼女が事件当時未成年ではなかった場合、そのまま収容され、そしておそらくは死刑を待つだけの身として、ただただその時が来るまで生殺しの状態となっていたであろう場所が、目の前にそびえていた。
「さて・・・」
勅使河原は、何となくここまで足を運んでしまったものの、これからどうするかはまだ決めていなかった。
本当に、この場所に他の参加者たちが収容されているのかーそれを確認しようにも、そもそもここにおいそれと忍び込めるのかどうかーまた、仮に入ったとしても、中は全くのもぬけの殻だったということもあるが・・・。
「・・・あら」
ふと、施設を取り囲む壁の近くに、簡素な台が設置されているのを見つけた。そして、その上にはー
「これはこれは・・・」
勅使河原は、自然と顔の口角が吊り上がるのを実感していた。
生首だー晒し首が、5つー
江戸時代でいえば、まるで打ち首獄門と言わんばかりに、5人の少女の首が晒されている。当然ながら、その首はいずれも美しいー
「へえ・・・ここに晒されているということは、おそらく間違いなさそうね・・・」
セミロングの少女の首に手を触れてみる。諦観の念を込めた表情のまま、逝った少女の首だった。
「どうやら、当たりのようね・・・」
ここに首が晒されているーしかも5人もーということは、間違いなくこの刑務所は「機能している」はずだ。つまりは、この少女たちはここに収容され、中で殺されたーそう考えるのが自然である。
「おそらくは、処刑だったのでしょうね」
この周辺に、他の参加者の姿がないことを併せて考えてみれば、大体見当がつく。
おそらくこの少女たちは、中で戦いを強制され、そして負けて晒し首になったということだろう。ただ、戦いを強制されたーということからもわかる通り、勝負の中身はほぼ一方的ーつまりは戦いと呼べるような代物でもなく、ほとんど処刑と言ってもいい状態だったのではないだろうか。
「えげつないことをするものね・・・」
今までの自分の行為を棚に上げて、勅使河原は狂気に満ちた笑みを浮かべながらつぶやいた。そして、改めて目の前の高い壁を見上げるーその、塀に囲まれた園を。
「私の求めるものが、ここにありそうね」
勅使河原の目に更なる狂気の色が浮かんだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる