百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
233 / 499
第4章 更なる戦い

第232話 疑念

しおりを挟む
 一方、アエロー、オキュペテー、ケライノーの3人もまた、優香たちに対する疑念を解いてはいなかった。今は無駄な戦いを避けるために見逃したが、引き続き警戒は必要と判断した。
「逆に、こちらからつけてやるか?」
 アエローが、獲物を見据えるような目つきで、優香たちが向かった通りの方を睨みつける。
「おいおい、今はやめておけ・・・どうせ、いつかは戦うことになる相手だ。接触は必ずするだろうさ。ただ・・・」 
 オキュペテーが、今にも動き出そうとするアエローを抑えながら、
「確かに、あいつらに対する警戒は必要だな。少なくとも、あいつらの塒の場所くらいは把握しておきたい」
「なら、あいつを使うかね・・・いるんだろ?」
 ケライノーが、背後にいる何者かに声をかける。
 ケライノーのすぐ後ろに、黒い影が降り立った。
「・・・模範囚を使うってわけか」
 模範囚ー通常の場合、刑務所の中に置いて、極めて刑務作業に忠実で規則もきちんと守り、他の囚人たちに対して模範的とされる囚人たちのことを指すが、ここアルカディア島の刑務所内の模範囚は、看守たちに忠誠を誓う代わりに、刑務所の外での活動も一定の範囲においてなら許されている存在だった。
 そして、刑務所の外での活動とは、主に諜報活動ー要するに、スパイ活動で、刑務所周辺の参加者の情報収集やアジトの発見なども任務に入っている。
 ケライノーの背後に降り立った黒い影が、ゆっくりと顔を上げる。
 まるで、時代劇に出てくるくのいちそのものの恰好ーやたらと豊満な体つきのためか、忍者衣装ですら煽情的にも見える。
 看守たちは、自分たちの配下の模範囚には特に服装の制限をしていない。したがって、この恰好はこの少女自身の選択ということになる。
 諜報活動は、確かに戦国時代や江戸時代なら忍者が行っていただろうが、それにしても時代錯誤と言わざるを得ないーが、ここは何でもありのアルカディア島ー唯一モラルだけがないこの島では、どんな格好をしようとも自由ではある。
 何よりも、そのエロティックな恰好が、看守たちにも密かに人気だったりするのだ。
「おい、朝霞」
「・・・はい」
 朝霞と呼ばれた模範囚ーくのいち少女が3人の前に傅く。
「あの3人のことは、お前に任せた。あいつらの動向を逐一探って報告しろ」
「了解しました」
 朝霞と呼ばれた少女が姿を消す。その消え方も、まるで昔の忍びそのものだった。
「朝霞なら、あいつらのことは問題なく探れるだろう。しばらくは泳がせてみるか」
 優香たちは、朝霞の存在にはまだ気が付いてないはずだ。探らせるのならうってつけだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

処理中です...