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第4章 更なる戦い

第215話 監獄のある楽園

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 刑務所というのは、その社会において罪を犯した者を収容し、刑罰を科すことで社会的責任を果たさせたうえで矯正も行うための施設というのが、一般的な社会認識だ。
 しかし、ここアルカディア島では、その認識は一切当てはまらない。どちらかと言えば「人間処理場」と表現した方が適しているのかもしれない。
「うまいこと考えたよね、湯島亜里沙も」
 大会運営者ー結城司が、この刑務所に設置されている監視システムからの映像を見ながら、傍らに立つ来栖忍に語り掛けた。
「ペナルティ対象者、あるいは予備軍の処理か・・・」
 来栖が軽く頷きながら司に対して相槌を打つ。
 正直な話をすれば、大会運営側としては可能な限りペナルティを下すような状況に陥るのは避けたいところだった。この大会では美少女たちにお互いの首を懸けて戦わせることに意義がある。焼殺や溺死は、そういうシーンを見たがる変態金持ちや権力者というのも確かにいるのだが、大会の趣旨には添わない処刑方法である。また、戦闘行為を参加者に促すことで採集できるデータも捨てがたい。要するに、ペナルティで貴重な人材が失われるというのは、大会関係者にとってもなるべく避けたいところなのだ。
「あの時、湯島亜里沙から申し出があったから、こうして「刑務所システム」が稼働することになったんだよね・・・」
 司の言う「刑務所システム」があれば、少なくともペナルティ対象者を「本来の形」で処理することができる。要は、性行為と戦闘行為を行わせて、最後には斬首するーその目的が果たせるのだ。
 どれだけ残虐なペナルティを下すと、大会運営側が参加者に宣言しても、性行為や戦闘を忌避する者達は一定の割合で存在する。それらの違反者一人一人をいちいち対処していたのでは、大会運営側としてもいらないコストをかける必要が出てくるのだ。
 その問題に直面しかけた大会運営側に、この「刑務所内デスゲームの開催」を持ち掛けたのが、湯島亜里沙他数人の少女たちだった。
 亜里沙は、自らが倒した敗北者の首を掲げながら、ジャッジを通して、この大会の責任者である司に話を持ち掛けた。
 司からしてみれば、願ってもない申し出だったと言えるだろう。
「この刑務所は試験的なものだから、将来的にはさらに増やそうかと思っている」
 司の言葉に、来栖がため息交じりに、
「一応、楽園アルカディアの名を冠しているのだがな、この島は・・・楽園の中にも監獄が必要だとはな」
「楽園だからこそ、監獄は必要なんだよ。人間は罪深き生き物だから、人がいるところには必ず必要な施設なのさ」
「・・・確かにな」
 肩を竦めながら、来栖は相槌を打つ。人がいるところには必ず存在する施設ーそれは正しいし、これから先も変わることはないだろう。ならば、楽園と呼ばれる場所にも、きっとその施設は存在し続けることになるのは間違いない。
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