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第4章 更なる戦い
第198話 後輩との情事4
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「今度こそ・・・?」
瞳を細め、口の端を少し釣り上げた唯の顔を見つめ返す金髪の少女。どこか蠱惑的にも見える表情と仕草に、金髪の少女は気持ちが落ち着かなくなる。
ー何だ、いったい・・・?ー
「そうですよ~。私はずっと、先輩一筋でしたからね、それこそ、日本にいた時から」
金髪の少女の顔を覗き込むようにしながら、両手を後ろで組み、金髪の少女の周りをゆっくりと歩く。
「でも、あなたの傍には常に彼女がいた・・・だから、私も半ば諦めていたんです。だって、あなたと彼女の間に割り込めそうにはありませんでしたから・・・」
彼女ーというのが、薄紫の髪の少女であることは察しがつく。
「まさか・・・お前」
「先輩も、つくづく鈍いですよねぇ。私はずーっと、ラブコールを送ってきたつもりなんですが」
唯の目がさらに細められる。蠱惑的だったその表情が、今度は剣呑さを帯び始めていた。
「あの事件の時・・・」
唯の独白は続く。
「二人とも殺されたと聞いて、私は泣きましたよ。ええ、それはもう、泣きじゃくりました。なんで、二人とも殺しやがったのって、あのロシアンハーフに文句言ってやりたいくらいでした」
「・・・」
ロシアンハーフというのは、生前に同じ門下生だった姉弟子のことを指しているのもわかる。殺された瞬間の記憶はないので、自分がどのように死んだかははっきりとはわからない。ただ、その直前の記憶をたどっていくと、おそらく自分を殺したのが彼女だったというのは大体推測できた。
「あの事件で、彼女だけが死んでくれればよかったのにって・・・」
「唯!!」
怒気を含んだ声を上げ、唯の胸倉を思わずつかんでしまう金髪の少女。
「今、何て言ったよ、お前・・・」
だが、胸倉を掴まれたままの唯の方は、相変わらずの表情のままで、実に落ち着き払った様子で応えた。
「何度でも言いますよ、先輩・・・あなたは生きて、彼女だけが殺されていてくれればよかったのに」
「お前・・・なんてことを!!」
思わず左手を振り上げる金髪の少女。唯の頬を打擲しようとして、何とか思い留まる。
「あいつが殺されて、あたしだけ生き残っていればよかったって、本気で思ってたのかよ!!」
打擲しようとする代わりに、唯にさらに詰め寄る金髪の少女。この唯が、そんなことを言うなんて信じられなかった。いや、信じたくはなかったのだ。
「・・・本気、ですよ。先輩」
先ほどまでとは打って変わって、今度はいささか瞳を潤ませたような表情を見せる唯。
「あなたのことは、誰にも渡したくはありませんでしたから・・・」
「・・・!?」
唯の告白に、そして彼女の心の闇の部分に触れて、思わず言葉をなくす金髪の少女だった。
瞳を細め、口の端を少し釣り上げた唯の顔を見つめ返す金髪の少女。どこか蠱惑的にも見える表情と仕草に、金髪の少女は気持ちが落ち着かなくなる。
ー何だ、いったい・・・?ー
「そうですよ~。私はずっと、先輩一筋でしたからね、それこそ、日本にいた時から」
金髪の少女の顔を覗き込むようにしながら、両手を後ろで組み、金髪の少女の周りをゆっくりと歩く。
「でも、あなたの傍には常に彼女がいた・・・だから、私も半ば諦めていたんです。だって、あなたと彼女の間に割り込めそうにはありませんでしたから・・・」
彼女ーというのが、薄紫の髪の少女であることは察しがつく。
「まさか・・・お前」
「先輩も、つくづく鈍いですよねぇ。私はずーっと、ラブコールを送ってきたつもりなんですが」
唯の目がさらに細められる。蠱惑的だったその表情が、今度は剣呑さを帯び始めていた。
「あの事件の時・・・」
唯の独白は続く。
「二人とも殺されたと聞いて、私は泣きましたよ。ええ、それはもう、泣きじゃくりました。なんで、二人とも殺しやがったのって、あのロシアンハーフに文句言ってやりたいくらいでした」
「・・・」
ロシアンハーフというのは、生前に同じ門下生だった姉弟子のことを指しているのもわかる。殺された瞬間の記憶はないので、自分がどのように死んだかははっきりとはわからない。ただ、その直前の記憶をたどっていくと、おそらく自分を殺したのが彼女だったというのは大体推測できた。
「あの事件で、彼女だけが死んでくれればよかったのにって・・・」
「唯!!」
怒気を含んだ声を上げ、唯の胸倉を思わずつかんでしまう金髪の少女。
「今、何て言ったよ、お前・・・」
だが、胸倉を掴まれたままの唯の方は、相変わらずの表情のままで、実に落ち着き払った様子で応えた。
「何度でも言いますよ、先輩・・・あなたは生きて、彼女だけが殺されていてくれればよかったのに」
「お前・・・なんてことを!!」
思わず左手を振り上げる金髪の少女。唯の頬を打擲しようとして、何とか思い留まる。
「あいつが殺されて、あたしだけ生き残っていればよかったって、本気で思ってたのかよ!!」
打擲しようとする代わりに、唯にさらに詰め寄る金髪の少女。この唯が、そんなことを言うなんて信じられなかった。いや、信じたくはなかったのだ。
「・・・本気、ですよ。先輩」
先ほどまでとは打って変わって、今度はいささか瞳を潤ませたような表情を見せる唯。
「あなたのことは、誰にも渡したくはありませんでしたから・・・」
「・・・!?」
唯の告白に、そして彼女の心の闇の部分に触れて、思わず言葉をなくす金髪の少女だった。
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