164 / 499
第4章 更なる戦い
第163話 玄人と素人
しおりを挟む
「確かに、戦いにくそうだね、静お姉さんは」
優華の言葉を裏付けるかのように、静はいまいち紫苑に攻めきれないでいる。感覚が違いすぎる一方で、紫苑も全くのド素人というわけでもなく(少なくとも、赤橋陽子には勝利しているので、全く素質がないというわけでもない)、それ相応に刀を振り回しては来るので、確かにやりにくい相手には違いなかった。
「まあ、お静のことだ、うまくはやるだろう・・・さて、子猫ちゃん」
実力差は明白ーとはいえ、しばらくの間勝敗はつかないだろうと判断した優香が、ヒナの方を振り返りつつ、
「この辺りには、私らでも手に負えない実力者が潜んでいる可能性があるのは、忘れてないな?」
まるで、ヒナを試すかのように問いかける優香。
「・・・あの、一度に3人を殺したやつのことだね」
この戦いにばかり気を取られがちではあるが、忘れてはいけないのは、初戦でありながら一度に3人の相手に勝利してしまった恐るべき相手が、まだこの付近に潜んでいるという事実だった。
一応、優香の方でもさりげなく気配ーというか、擬体の残り香を嗅ぎ取ってはいる。まだ、相手の方は攻撃してくるつもりはないーというか、そもそもこの相手は、あまり戦いを良しとはしない人物らしく、あれ以来は誰かが近くにいても自分から戦いを挑むようなことはしていない。
まあ、3人も殺しているので、しばらくの間はペナルティは無いだろうから、無理して戦う必要もないのだがー
「相手の方からは仕掛けてくる気配はない・・・ただ、相手の実力はトップクラスだ。少なくとも、今の私らでは挑むのは無謀だ」
優華は、ちらっと「気配がする方向」に目を向けた。
相手も、優香の視線に気が付いたのか、すぐに建物の影に隠れるように姿を消す。
「・・・うーん、なかなかのシャイなのかな、彼女は」
冗談めかしながら、優香は、鉄扇を再び閉じて唇付近に先端をあてがう。口調はふざけているようにも思えるが、その瞳は全く笑っていなかった。
ー好戦的なやつでなかったのは、私らにとって幸いというべきかー
はっきりと見えたというわけではないがーチラ見ではかなりおとなしそうな、それこそ落ち着きのある大人の女性を思わせる少女ー光加減なのか、髪が薄紫に輝いて見えた。
ーいい女だね・・・同性でも惚れるわ、あれならー
この大会参加者であれば、なおのこと彼女に手を出したくなってくるだろう。おとなしそうな外見ながら、あれで3人に勝利しているというのだから、人は全く見かけによらないものである。
「わかってると思うけど・・・子猫ちゃん、今はまだ手を出すなよ。そのままお帰りいただくのが賢明な相手だ、あれは」
腰のベルトに備えたナイフに手を伸ばそうとしていたヒナを嗜める優香。ヒナは「うー」と残念そうにうなりながら、それでも優香の言うことに素直に従った。
ーやれやれ、本当に好戦的な奴じゃなくてよかったよー
優華は、擬体の残り香を嗅ぎながら、相手もまだこちら側の様子を窺っていることを確認し、再び静と紫苑の方へと目を向けた。
戦いは膠着しているように見えたー
優華の言葉を裏付けるかのように、静はいまいち紫苑に攻めきれないでいる。感覚が違いすぎる一方で、紫苑も全くのド素人というわけでもなく(少なくとも、赤橋陽子には勝利しているので、全く素質がないというわけでもない)、それ相応に刀を振り回しては来るので、確かにやりにくい相手には違いなかった。
「まあ、お静のことだ、うまくはやるだろう・・・さて、子猫ちゃん」
実力差は明白ーとはいえ、しばらくの間勝敗はつかないだろうと判断した優香が、ヒナの方を振り返りつつ、
「この辺りには、私らでも手に負えない実力者が潜んでいる可能性があるのは、忘れてないな?」
まるで、ヒナを試すかのように問いかける優香。
「・・・あの、一度に3人を殺したやつのことだね」
この戦いにばかり気を取られがちではあるが、忘れてはいけないのは、初戦でありながら一度に3人の相手に勝利してしまった恐るべき相手が、まだこの付近に潜んでいるという事実だった。
一応、優香の方でもさりげなく気配ーというか、擬体の残り香を嗅ぎ取ってはいる。まだ、相手の方は攻撃してくるつもりはないーというか、そもそもこの相手は、あまり戦いを良しとはしない人物らしく、あれ以来は誰かが近くにいても自分から戦いを挑むようなことはしていない。
まあ、3人も殺しているので、しばらくの間はペナルティは無いだろうから、無理して戦う必要もないのだがー
「相手の方からは仕掛けてくる気配はない・・・ただ、相手の実力はトップクラスだ。少なくとも、今の私らでは挑むのは無謀だ」
優華は、ちらっと「気配がする方向」に目を向けた。
相手も、優香の視線に気が付いたのか、すぐに建物の影に隠れるように姿を消す。
「・・・うーん、なかなかのシャイなのかな、彼女は」
冗談めかしながら、優香は、鉄扇を再び閉じて唇付近に先端をあてがう。口調はふざけているようにも思えるが、その瞳は全く笑っていなかった。
ー好戦的なやつでなかったのは、私らにとって幸いというべきかー
はっきりと見えたというわけではないがーチラ見ではかなりおとなしそうな、それこそ落ち着きのある大人の女性を思わせる少女ー光加減なのか、髪が薄紫に輝いて見えた。
ーいい女だね・・・同性でも惚れるわ、あれならー
この大会参加者であれば、なおのこと彼女に手を出したくなってくるだろう。おとなしそうな外見ながら、あれで3人に勝利しているというのだから、人は全く見かけによらないものである。
「わかってると思うけど・・・子猫ちゃん、今はまだ手を出すなよ。そのままお帰りいただくのが賢明な相手だ、あれは」
腰のベルトに備えたナイフに手を伸ばそうとしていたヒナを嗜める優香。ヒナは「うー」と残念そうにうなりながら、それでも優香の言うことに素直に従った。
ーやれやれ、本当に好戦的な奴じゃなくてよかったよー
優華は、擬体の残り香を嗅ぎながら、相手もまだこちら側の様子を窺っていることを確認し、再び静と紫苑の方へと目を向けた。
戦いは膠着しているように見えたー
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる