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第4章 更なる戦い

第163話 玄人と素人

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「確かに、戦いにくそうだね、静お姉さんは」
 優華の言葉を裏付けるかのように、静はいまいち紫苑に攻めきれないでいる。感覚が違いすぎる一方で、紫苑も全くのド素人というわけでもなく(少なくとも、赤橋陽子には勝利しているので、全く素質がないというわけでもない)、それ相応に刀を振り回しては来るので、確かにやりにくい相手には違いなかった。
「まあ、お静のことだ、うまくはやるだろう・・・さて、子猫ちゃん」
 実力差は明白ーとはいえ、しばらくの間勝敗はつかないだろうと判断した優香が、ヒナの方を振り返りつつ、
「この辺りには、私らでも手に負えない実力者が潜んでいる可能性があるのは、忘れてないな?」
 まるで、ヒナを試すかのように問いかける優香。
「・・・あの、一度に3人を殺したやつのことだね」
 この戦いにばかり気を取られがちではあるが、忘れてはいけないのは、初戦でありながら一度に3人の相手に勝利してしまった恐るべき相手が、まだこの付近に潜んでいるという事実だった。
 一応、優香の方でもさりげなく気配ーというか、擬体の残り香を嗅ぎ取ってはいる。まだ、相手の方は攻撃してくるつもりはないーというか、そもそもこの相手は、あまり戦いを良しとはしない人物らしく、あれ以来は誰かが近くにいても自分から戦いを挑むようなことはしていない。
 まあ、3人も殺しているので、しばらくの間はペナルティは無いだろうから、無理して戦う必要もないのだがー
「相手の方からは仕掛けてくる気配はない・・・ただ、相手の実力はトップクラスだ。少なくとも、今の私らでは挑むのは無謀だ」
 優華は、ちらっと「気配がする方向」に目を向けた。
 相手も、優香の視線に気が付いたのか、すぐに建物の影に隠れるように姿を消す。
「・・・うーん、なかなかのシャイなのかな、彼女は」
 冗談めかしながら、優香は、鉄扇を再び閉じて唇付近に先端をあてがう。口調はふざけているようにも思えるが、その瞳は全く笑っていなかった。
 ー好戦的なやつでなかったのは、私らにとって幸いというべきかー
 はっきりと見えたというわけではないがーチラ見ではかなりおとなしそうな、それこそ落ち着きのある大人の女性を思わせる少女ー光加減なのか、髪が薄紫に輝いて見えた。
 ーいい女だね・・・同性でも惚れるわ、あれならー
 この大会参加者であれば、なおのこと彼女に手を出したくなってくるだろう。おとなしそうな外見ながら、あれで3人に勝利しているというのだから、人は全く見かけによらないものである。
「わかってると思うけど・・・子猫ちゃん、今はまだ手を出すなよ。そのままお帰りいただくのが賢明な相手だ、あれは」
 腰のベルトに備えたナイフに手を伸ばそうとしていたヒナを嗜める優香。ヒナは「うー」と残念そうにうなりながら、それでも優香の言うことに素直に従った。
 ーやれやれ、本当に好戦的な奴じゃなくてよかったよー
 優華は、擬体の残り香を嗅ぎながら、相手もまだこちら側の様子を窺っていることを確認し、再び静と紫苑の方へと目を向けた。
 戦いは膠着しているように見えたー
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