158 / 499
第4章 更なる戦い
第157話 ヒナの語り
しおりを挟む
「似ている・・・か」
静が、店に入ったきり出てこないところを見ると、静は相手を何とか説得し、今頃は逢瀬の真っ最中といったところだろう。
店の中に入れば、二人の少女の甘い声が聞こえてくるだろうが、さすがに二人の逢瀬を邪魔するほど野暮じゃない。
「・・・この島に連れてこられた奴だって、みんなこの島のルールに適応できるわけじゃないからな。実際、相手を殺した後、ほとんど発狂しかけたやつもいるらしいし」
優華の言う通り、戦いには勝利したものの、その後相手の首を刎ねる段階ーあるいは首を刎ねた直後になり、精神に異常をきたすまで追いつめられた者達もいた。もちろん、運営側もそうなってしまった大会参加者に関してはもはや使い物にならないので、その場で対象者を確保し、そのままどこかへ連れ去ってしまうらしい
どこに連れていかれるのかー普通の国においても、精神的な疾患などの理由から、他者に害を及ぼしかねない者については閉鎖病棟に隔離するという措置を行っているが、この大会運営側が、果たしてそのような隔離処置を行うだろうか。彼らにとっては、自分たちの目的のために少女たちを戦いに参加させ、その勝敗を競わせることに重要な意味があるわけで、使い物にならないと判断された者をわざわざ保護し、隔離し続けるとは思えない。
おそらくだがー結局、処分しているのではなかろうかーそういった少女たちを。
「その川村美奈も、私に会うまではかなり錯乱しているようだった」
ヒナが、自らの記憶を紐解くように語る。
「まあ、私らは生きてる頃は殺し合いなんてありえない社会で生きてきたからな・・・それが普通の反応なんだろ」
「それだと、私たちは普通ではないみたいだね」
ヒナの何気ない一言に、優香は軽く息をつきながら、
「普通の基準が社会よりもズレてるんだろ?私たちは」
肩を竦めて冗談めかしながら、優香は答えた。
実際のところ、優香自身もこの島で覚醒させられるまでは(つまりは生前は)自分が周りとはどこか異質な存在であると感じていることがあった。
優香自身は、人に溶け込め易い性格ではあったものの、どこかで周りの人間たちを冷ややかに見ていたのだった。
自由だの自己責任だのと言った美辞麗句を並べながら、しかし実際にはあらゆるしがらみや制約から抜けきれない周囲の人間ーそして、それは多分にして自分にも当てはまるのだがーそんな連中にも自分にも、嫌気がさしていたことは事実だ。
だからこそ、この島で目覚めた時には、大会運営側の課したルールさえ従っていればあらゆる自由が約束されると聞かされた時、どこか心が踊ったりもしたものだーこれから、殺し合いをさせられるというのに。
そんな自分は、やはり「普通ではない」のだろう。
そして、それは傍らにいるヒナや、今は店の中で逢瀬の真っ最中である静にも言えることなのかもしれない。
「ズレてるからこそ、私たちは普通じゃないんだよ、優香お姉さん」
ヒナが、半眼状態の瞳をさらに細めて、さらには口の端を少し釣り上げながら言った。どこか蠱惑的にも見えるその仕草に、優香は軽く口笛を吹いた。
「だろうな、やはり」
ヒナがコクリと頷いた。
静が、店に入ったきり出てこないところを見ると、静は相手を何とか説得し、今頃は逢瀬の真っ最中といったところだろう。
店の中に入れば、二人の少女の甘い声が聞こえてくるだろうが、さすがに二人の逢瀬を邪魔するほど野暮じゃない。
「・・・この島に連れてこられた奴だって、みんなこの島のルールに適応できるわけじゃないからな。実際、相手を殺した後、ほとんど発狂しかけたやつもいるらしいし」
優華の言う通り、戦いには勝利したものの、その後相手の首を刎ねる段階ーあるいは首を刎ねた直後になり、精神に異常をきたすまで追いつめられた者達もいた。もちろん、運営側もそうなってしまった大会参加者に関してはもはや使い物にならないので、その場で対象者を確保し、そのままどこかへ連れ去ってしまうらしい
どこに連れていかれるのかー普通の国においても、精神的な疾患などの理由から、他者に害を及ぼしかねない者については閉鎖病棟に隔離するという措置を行っているが、この大会運営側が、果たしてそのような隔離処置を行うだろうか。彼らにとっては、自分たちの目的のために少女たちを戦いに参加させ、その勝敗を競わせることに重要な意味があるわけで、使い物にならないと判断された者をわざわざ保護し、隔離し続けるとは思えない。
おそらくだがー結局、処分しているのではなかろうかーそういった少女たちを。
「その川村美奈も、私に会うまではかなり錯乱しているようだった」
ヒナが、自らの記憶を紐解くように語る。
「まあ、私らは生きてる頃は殺し合いなんてありえない社会で生きてきたからな・・・それが普通の反応なんだろ」
「それだと、私たちは普通ではないみたいだね」
ヒナの何気ない一言に、優香は軽く息をつきながら、
「普通の基準が社会よりもズレてるんだろ?私たちは」
肩を竦めて冗談めかしながら、優香は答えた。
実際のところ、優香自身もこの島で覚醒させられるまでは(つまりは生前は)自分が周りとはどこか異質な存在であると感じていることがあった。
優香自身は、人に溶け込め易い性格ではあったものの、どこかで周りの人間たちを冷ややかに見ていたのだった。
自由だの自己責任だのと言った美辞麗句を並べながら、しかし実際にはあらゆるしがらみや制約から抜けきれない周囲の人間ーそして、それは多分にして自分にも当てはまるのだがーそんな連中にも自分にも、嫌気がさしていたことは事実だ。
だからこそ、この島で目覚めた時には、大会運営側の課したルールさえ従っていればあらゆる自由が約束されると聞かされた時、どこか心が踊ったりもしたものだーこれから、殺し合いをさせられるというのに。
そんな自分は、やはり「普通ではない」のだろう。
そして、それは傍らにいるヒナや、今は店の中で逢瀬の真っ最中である静にも言えることなのかもしれない。
「ズレてるからこそ、私たちは普通じゃないんだよ、優香お姉さん」
ヒナが、半眼状態の瞳をさらに細めて、さらには口の端を少し釣り上げながら言った。どこか蠱惑的にも見えるその仕草に、優香は軽く口笛を吹いた。
「だろうな、やはり」
ヒナがコクリと頷いた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる