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第4章 更なる戦い
第155話 なぜ戦うのか
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他には誰もいないカー用品店の宿直室にて、二人の少女たちが裸体を晒し、交わり合っているー
「朝比奈さん・・・綺麗な髪、それにお肌も」
朝比奈紫苑の繊細な肌や髪に触れながら、静は宿直室に敷かれた布団に横たわる紫苑の体に覆いかぶさった。
「いえ・・・あなたもです。風間さん」
紫苑も、静の銀色の髪や端正な顔立ちを見て、小さな声で呟く。
この情事が終われば、非情な戦いが待ち受けている。負けた者は、勝利者にその首を捧げることになるのだ。一度は死亡し、既に社会にその居場所はないとはいえ、年端もいかぬ少女たちにとってはあまりにも過酷な運命である。
「私のことは静でいいわよ」
これから殺し合うことになる相手だというのに、こうして体を密着させていることで親近感が増してくる。本音を言えば、静も紫苑も殺し合いなどせずに、ただこうして性行為だけをしていたいところなのだがー
「・・・静さん。私たちは、いったい何のために戦うんでしょうか・・・」
紫苑が、不安げなまなざしを向けてくる。その瞳には、ただ自分を優しく見つめ返してくる静の端正な顔だけが映っていた。
「この戦いの果てに、何が待っているのか・・・例え優勝したって、私には元の生活には戻れない」
殺戮の果てに勝利を掴み、その後、何食わぬ顔をして元の生活に戻れるだろうか。そのような問いかけは、紫苑だけではなく他の参加者の少女たちも常にしてきたことだった。
もちろん、逃げる手段がないから戦うということもあるだろう。運営側によって、自殺行為が一切できないように手を加えられている。
戦うしかないから戦うーでは、紫苑は到底納得できなかった。その答えを、静は持っているのだろうか。
この戦いの果てに、少女たちはどんな解答を見出すのだろうか。
「そうね・・・私も、あなたのように、元の生活に戻れるとは思ってないわ」
それでも戦い続ける理由があるのならー
「自らの傲慢さゆえーかしらね」
少しでも長く、優香と一緒にいたいからーそんな、単純で実に自分勝手な理由だった。そのために、相手と性行為を行い、そして戦いの果てに殺すのだ。
生きるということは、常に他の者の命を奪うことでもあるー人間が動物の肉を食するということは、まさにその象徴ではないか。自らがその糧を得るために、他を犠牲にするーそれは、人間に限らず、食物連鎖という束縛に支配されたこの世のあらゆる生物にとっての宿命だった。
その対象が、人になったのが、このアルカディア島なのだろう。傲慢さゆえに生き残れる楽園ー殺し合いを行い続ける限り、あらゆるものが保障される享楽の島ー
未来よりも、刹那的な快楽ーエピクロスの快楽主義よりもはるかに堕した享楽主義の楽園ーそれがこの島の有様だった。
「朝比奈さん・・・綺麗な髪、それにお肌も」
朝比奈紫苑の繊細な肌や髪に触れながら、静は宿直室に敷かれた布団に横たわる紫苑の体に覆いかぶさった。
「いえ・・・あなたもです。風間さん」
紫苑も、静の銀色の髪や端正な顔立ちを見て、小さな声で呟く。
この情事が終われば、非情な戦いが待ち受けている。負けた者は、勝利者にその首を捧げることになるのだ。一度は死亡し、既に社会にその居場所はないとはいえ、年端もいかぬ少女たちにとってはあまりにも過酷な運命である。
「私のことは静でいいわよ」
これから殺し合うことになる相手だというのに、こうして体を密着させていることで親近感が増してくる。本音を言えば、静も紫苑も殺し合いなどせずに、ただこうして性行為だけをしていたいところなのだがー
「・・・静さん。私たちは、いったい何のために戦うんでしょうか・・・」
紫苑が、不安げなまなざしを向けてくる。その瞳には、ただ自分を優しく見つめ返してくる静の端正な顔だけが映っていた。
「この戦いの果てに、何が待っているのか・・・例え優勝したって、私には元の生活には戻れない」
殺戮の果てに勝利を掴み、その後、何食わぬ顔をして元の生活に戻れるだろうか。そのような問いかけは、紫苑だけではなく他の参加者の少女たちも常にしてきたことだった。
もちろん、逃げる手段がないから戦うということもあるだろう。運営側によって、自殺行為が一切できないように手を加えられている。
戦うしかないから戦うーでは、紫苑は到底納得できなかった。その答えを、静は持っているのだろうか。
この戦いの果てに、少女たちはどんな解答を見出すのだろうか。
「そうね・・・私も、あなたのように、元の生活に戻れるとは思ってないわ」
それでも戦い続ける理由があるのならー
「自らの傲慢さゆえーかしらね」
少しでも長く、優香と一緒にいたいからーそんな、単純で実に自分勝手な理由だった。そのために、相手と性行為を行い、そして戦いの果てに殺すのだ。
生きるということは、常に他の者の命を奪うことでもあるー人間が動物の肉を食するということは、まさにその象徴ではないか。自らがその糧を得るために、他を犠牲にするーそれは、人間に限らず、食物連鎖という束縛に支配されたこの世のあらゆる生物にとっての宿命だった。
その対象が、人になったのが、このアルカディア島なのだろう。傲慢さゆえに生き残れる楽園ー殺し合いを行い続ける限り、あらゆるものが保障される享楽の島ー
未来よりも、刹那的な快楽ーエピクロスの快楽主義よりもはるかに堕した享楽主義の楽園ーそれがこの島の有様だった。
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