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第4章 更なる戦い

第154話 紫苑との逢瀬

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「戦うしか・・・ない」
 紫苑が、自分に言い聞かせるように呟く。
 静が語る通り、この大会では勝ち続けるか、負けて首を討たれるかのいずれかの道しかない。そして、そこに自殺という逃避も許されていないのだ。
「朝比奈さん・・・もしあなたが私と戦うなら、私も全力で応えて差し上げます」
 静の冷徹な声が紫苑の耳に響いてくる。
 ここで泣き崩れていても、いずれはペナルティの対象になるだけだ。その最期は、斬首よりも過酷な処刑である。斬首は、人間の刑罰の中でも比較的苦痛が少ない方だー少なくとも、火刑や水責めに比べれば、その死が一瞬で、しかも避けられないだけに、まだしも楽な死に方ではある。
 尤も、斬首があらゆる処刑方法の中で、苦痛が少ないとされるようになったのは、ギロチンが発明された頃からだ。それまでは、もっぱら首切り役人の技量に頼るところが多く、場合によっては、受刑者は死にきれずに苦痛にのたうち回ったという話もかなり残っている。
 ギロチンは、こういった斬首刑による苦痛を緩和するために開発されたのだ。あのマリー・アントワネットも、フランス革命の最中、処刑人のシャルル・アンリ・サンソンの手によりギロチンで絶命した。
 大会運営側も、負けた側の苦痛を少しでも緩和するため、擬体化された武器は確実に斬首できるように設定をしている。尤も、本当に苦痛が一瞬なのかは、実際に首を討たれてみないことにはわからないと言えばそうなのだがー
「逃げられないのですね、私たちは・・・」
 紫苑が、未だどこか虚ろな瞳で、凛とした表情の静を見つめ返した。
 純粋に、自分よりも綺麗な子だーというのが、紫苑の静に対する印象だった。見た目の清楚なイメージもさることながら、内面にどこか芯の強い部分があるようにも見える、年上の女性といった感じだろうか。
「・・・わかりました」
 紫苑が、覚悟を決めたように頷いた。
「どこにも逃げ場がないのであれば、あなたと交わり、そして・・・」
 紫苑の瞳が、今までの虚ろなものとは打って変わって剣呑な輝きを帯びていた。眼光の鋭さは、彼女の覚悟の程も示していると言えた。
「戦います!」
 紫苑の力強い宣言に、静は満足そうにうなずいた。
「わかりました。お相手しましょう、朝比奈さん・・・性行為も、そして戦いも」
 静が、紫苑の目の前に立つ。紫苑もまた、静を見つめ返すかのように、正面で構える。
 お互い、しばらくの間、それぞれが惹かれ合うかの如く見つめ合った後に、
「んん・・・」
 どちらからというわけでもなく、気が付いた時にはお互いの唇を重ね合わせていた。
 これから、乙女たちの性と命の営みが始まるー
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