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第4章 更なる戦い
第151話 静の戦い
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「やれやれ・・・公園に向かうはずが、まさかこんなことになるなんてね」
優華がかすかに鼻を鳴らしながら、擬体の残り香を嗅ぎ取って、赤橋陽子を殺した犯人の場所を探していた。
「優華お姉さん、まるで犬だね・・・」
ヒナの何気ない言葉に優香が苦笑しながら、
「子猫ちゃんである君に言われたらおしまいだよ」
肩を竦めつつ、再び擬体の残り香を嗅ぎ取るため鼻を鳴らす。
「どうやら、この近くの会社に入り込んだようだな、こいつは」
会社ーと言っても、実際には従業員など存在しない。あくまでも、現実に似せた建物だけがあるということだ。とはいえ、現実に似せたということからもわかる通り、きちんと看板も出ていたりする。
社名はT&Kコーポレーションらしい。
「日本のどこかにはありそうな名前の会社ですね」
社名を確認した静が呟いた言葉に二人は肯く。
「まあ、実際あるだろう、こんな名前の会社は。日本のどこかに」
「そうだね・・・」
「というか、ここに来るまでにヘヴンイレヴンやポーソンもあっただろ。結局は、日本のどこかの街をそっくりそのまま再現してるってだけじゃないのか」
ちなみに、ヘヴンイレヴンやポーソンは、日本人なら誰もが知っているコンビニエンスストアである。ただ、このアルカディア島にはコンビニ店員は全くおらず、さらには金を支払わなくても陳列されている商品を勝手に持って行ってもいいという、まさに「お金のいらない国」状態であった。
ただ、新聞や週刊誌など、外の情報がリアルに入り込んでくるような物は一切置いていなかったりするのは、さすが運営といったところだろう。外部の情報は極力遮断するという運営側の意志は、こういった場所にもさりげなく反映されていると言えた。
外部の情報はないが、しかしお金いらずで生活できるというのは、現代人にとっては夢のような話であるーただし、殺し合いをしなければならないという点を除いてだが。
「それで・・・秋月さん。相手はこの会社に入ったのですね?」
静が、目の前の会社を見上げつつ、優香に確認する。元ネタになっている会社自体は、どうやらカー用品専門店のようだ。カー用品が入り口からすぐのところにせわしなく置かれており、はっきり言って戦うようなスペースはほとんどないだろう。
「この店の中に隠れているといった方が正しいのかな。赤橋を殺してからさほど時間も経っていないようだし、正直なところ、初めてのエッチ及び戦闘さらには殺人に、やった本人も戸惑っているみたいだ」
「・・・お気持ちはわかります」
静も、ここに来るまでに一人殺している。この大会ルール上、仕方がないとはいえ、相手の首を刎ねた直後は抑えきれずにその場で嘔吐してしまったくらいだ。その時、優香に介抱され、何とか持ち直した。
それから、二人は共に行動するようになる。
「・・・お静、無理はするなよ」
その時のことを思いだしたのか、優香が静を気遣うが、
「・・・大丈夫です。私には、戦い続けなければならない理由がありますから、最初の時のような醜態はもう晒しません」
静が決然として答えた。
優華がかすかに鼻を鳴らしながら、擬体の残り香を嗅ぎ取って、赤橋陽子を殺した犯人の場所を探していた。
「優華お姉さん、まるで犬だね・・・」
ヒナの何気ない言葉に優香が苦笑しながら、
「子猫ちゃんである君に言われたらおしまいだよ」
肩を竦めつつ、再び擬体の残り香を嗅ぎ取るため鼻を鳴らす。
「どうやら、この近くの会社に入り込んだようだな、こいつは」
会社ーと言っても、実際には従業員など存在しない。あくまでも、現実に似せた建物だけがあるということだ。とはいえ、現実に似せたということからもわかる通り、きちんと看板も出ていたりする。
社名はT&Kコーポレーションらしい。
「日本のどこかにはありそうな名前の会社ですね」
社名を確認した静が呟いた言葉に二人は肯く。
「まあ、実際あるだろう、こんな名前の会社は。日本のどこかに」
「そうだね・・・」
「というか、ここに来るまでにヘヴンイレヴンやポーソンもあっただろ。結局は、日本のどこかの街をそっくりそのまま再現してるってだけじゃないのか」
ちなみに、ヘヴンイレヴンやポーソンは、日本人なら誰もが知っているコンビニエンスストアである。ただ、このアルカディア島にはコンビニ店員は全くおらず、さらには金を支払わなくても陳列されている商品を勝手に持って行ってもいいという、まさに「お金のいらない国」状態であった。
ただ、新聞や週刊誌など、外の情報がリアルに入り込んでくるような物は一切置いていなかったりするのは、さすが運営といったところだろう。外部の情報は極力遮断するという運営側の意志は、こういった場所にもさりげなく反映されていると言えた。
外部の情報はないが、しかしお金いらずで生活できるというのは、現代人にとっては夢のような話であるーただし、殺し合いをしなければならないという点を除いてだが。
「それで・・・秋月さん。相手はこの会社に入ったのですね?」
静が、目の前の会社を見上げつつ、優香に確認する。元ネタになっている会社自体は、どうやらカー用品専門店のようだ。カー用品が入り口からすぐのところにせわしなく置かれており、はっきり言って戦うようなスペースはほとんどないだろう。
「この店の中に隠れているといった方が正しいのかな。赤橋を殺してからさほど時間も経っていないようだし、正直なところ、初めてのエッチ及び戦闘さらには殺人に、やった本人も戸惑っているみたいだ」
「・・・お気持ちはわかります」
静も、ここに来るまでに一人殺している。この大会ルール上、仕方がないとはいえ、相手の首を刎ねた直後は抑えきれずにその場で嘔吐してしまったくらいだ。その時、優香に介抱され、何とか持ち直した。
それから、二人は共に行動するようになる。
「・・・お静、無理はするなよ」
その時のことを思いだしたのか、優香が静を気遣うが、
「・・・大丈夫です。私には、戦い続けなければならない理由がありますから、最初の時のような醜態はもう晒しません」
静が決然として答えた。
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