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第4章 更なる戦い

第150話 やったのは誰だ?

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 交差点のど真ん中に置かれた赤橋陽子の首ー
「この近くに、やったやつがいるのは、間違いないな・・・擬体の残り香もまだある」
 優華がかすかに鼻を鳴らしながら、周囲を素早く見回す。彼女の驚異的な嗅覚は、この辺り一面に漂う鉄分臭だけではなく、擬体が残したその臭気も嗅ぎ取ることができるほどだった。
「昨日の3人を殺した相手でしょうか?」
 静が、今までとは打って変わって緊張感を伴った表情で優香に尋ねた。さすがに、敵がこの近くにいるかもしれないとなると、気を引き締めざるを得ない。静の隣で様子を見ているヒナも同様だ。元々の半眼状態の瞳をさらに細めて、周囲を警戒し始める。
「・・・いや、擬体の残り香から察するに、昨日のやつとは違うな・・・それに、昨日のやつが殺人の天才なら、こっちのやつはそれよりも数段劣るよ」
 擬体の残り香から、ある程度は戦いの状況を把握することができた。戦いそのものは確かに勝利者が一瞬で終わらせたので、この赤橋という少女よりははるかに強いが、ここにいる自分たちに比べればそれでも劣るといった感じだ。当然、昨日の3人をたった1人で倒したやつとは比較にもならないだろう。
「おそらく、私らの誰が相手になったとしても、負けるような相手じゃないだろう。この赤橋陽子ってやつが弱すぎただけさ」
 そう言って、優香はしゃがみこんで赤橋の首を覗き込むように見やった。
 高い鼻梁に薄い唇、艶やかな黒髪ーと確かに見る者を惹きつける魅力はある少女だ。その瞳は驚愕に見開かれているようだが、元々目元を大きく見せるような化粧をしているのだろう。大きな瞳もまた魅力的だった。
 見た目から判断するならば、優香とはおそらく同級生に当たるのではないだろうか。もし、この赤橋が生きていれば、もしかしたら優香自身が狩っていたかもしれない。
「うーん、この生首お姉さんもきれいだけど、弱かったんだね・・・」
「この大会じゃあ、強さがすべてだからな・・・弱いやつは狩られて首を刎ねられ晒される。美少女戦国時代だよ、この島は」
 優華は立ち上がると、再び周囲を見回した。まだ、近くにいるはずだー赤橋陽子を殺したやつは。
「どうだい、お静。今回は、君が戦ってみたら?」
「え?」
 突然、自分に振られて戸惑う静。
「君は、まだ1人しかやってないだろう?まだ少しはペナルティに猶予があるとはいえ、もう1人くらいやっておかないと、あっという間にペナルティの対象になるぞ」
 優華は2人、静は1人、ヒナは3人ーこの中では、確かに静のキルスコアが最低ということになる。運営側は、常に少女たちに戦いをさせるべく、ペナルティをちらつかせている。もし、ペナルティを食らえば水責めや火刑に処せられるのは必至だ。
「そう・・・ですね」
 静の目が胡乱気に輝いた。
「私も、そろそろ本気でかからないと」
「敵は、まだこの辺りにいる。とはいえ、私ら3人全員で向かうと逆に逃げられる可能性もあるな・・・お静、私が擬体の残り香で相手の場所を探るから、そこから先は1人で行ってくれ」
 優華の提案に、静かに、そして自身ありげに頷く静だった。
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