133 / 343
第4章 更なる戦い
第132話 子猫と女狐
しおりを挟む
「お姉さん、余裕ぶっていられるのも今のうちだよ・・・」
ヒナが、ナイフの刃を煌かせながら、優香を見据えている。その瞳は、相変わらずの半眼状態なのだが、そこに獲物を狩る猛獣じみた殺気が宿っているのを優香と静は見過ごさなかった。
ーこの子、どうやら私を本気で殺るつもりでかかってくるようだねー
おそらくは、本気で殺しにかかるくらいの勢いがなければ勝てないと踏んだのだろう。
ーまずいですね・・・擬体を纏う前に殺し合いはー
ヒナの殺気を感じ、静は、いつ止めに入るかを窺っていた。
「さあ、次でけりをつけるとしようか、ヒナ坊」
ニヤケ面は相変わらずのままーしかし目は全く笑っていない状態で、優香は両手の鉄扇を交差するように構えた。
「・・・そのヒナ坊っていうのはやめてほしいかな、チャイナお姉さん。もう少し、可愛いあだ名をつけてほしい」
「じゃあ、子猫ちゃんで決まりだな・・・君は猫みたいに可愛いから」
「それじゃあ、お姉さんはどことなくお狐さんだね」
「お、お狐!?」
優華が素っ頓狂な声を上げた。
今までいろんな少女たちと話してきたことはあったが、まさか狐呼ばわりされるとは、夢にも思っていなかったからだ。
予想外の不意打ちに、一瞬優香の表情が間の抜けた感じになったのを、ヒナは見過ごさなかった。
「甘いよ、お姉さん!!」
ヒナの瞳が胡乱気に輝いたかと思うと、ほんの一瞬で優香との間合いを詰める。
「・・・!!」
だが、優香もすぐに反応した。ナイフと鉄扇、二人の攻撃が、相手の首筋に届いたー
ーと思われた瞬間に、
「そこまでです!!二人とも」
静の凛とした声が辺りに響き渡り、二人は相手の首筋を狙ったままの状態で動きを止めた。
「・・・!!」
「・・・お静・・・」
二人の間に薙刀が割り込んできたのだ。
静の武器は薙刀ーただし、普通の薙刀とは異なり、伸縮自在で扱うことができる便利な代物だった。ゆえに、静も常に護身用に持ち歩いている。ただ、これはあくまでも「通常」の武器であり、彼女が擬体を纏った時にはまた異なる武器が用意されているのだがー
「お二人とも、ここで果てるおつもりですか」
厳然とした声で、二人の浅はかな行動を諫めにかかる静。おそらく、このまま止めなければ相打ちかあるいはどちらかの死亡でもって勝負は終わっていたはずだ。
どちらの武器も、相手の頸動脈に届きかねない位置にあったからだ。
当然、勝っても負けても無事では済まない。擬体を纏わない私闘の場合、敗者は死亡か重傷、勝者はペナルティである。
「・・・参ったね、こりゃ」
「うーん、つい熱くなっちゃったかも」
優華とヒナが、それぞれの武器を引っ込めるーヒナはナイフを腰のベルトに交差させて戻し、優香は鉄扇をヒナの目の前で重ね合わせるようにして一つ隠したーどうやっているのかは定かではないが。
「二つの扇を一つに・・・どうやってやってるの?お姉さん」
まるで手品でも見せられたかのように不思議そうな顔で優香に尋ねるヒナ。
そんな彼女に対し、相変わらずのニヤケ面で優香は答えた。
「そりゃ企業秘密だ」
「ケチ」
「・・・全く」
二人を止めた静も、自分の武器を引っ込めた。
「悪いな、お静。君が止めてくれなかったら、確かにやばかったよ」
「狐のお姉さん、確かに強かったからね・・・私も思わず本気を出しちゃった」
優香は、自分を狐呼ばわりするヒナに、いささか眉根を寄せながら尋ねた。
「何で私は狐なんだよ・・・子猫ちゃん」
優華の問いかけに、ふっと笑みを浮かべながら、ヒナが答える。
「・・・雰囲気かな。そっちが私のことを子猫ちゃんって呼ぶのとそんなに変わんないと思う」
ヒナの答えに呆れたような声を上げる優香と、その脇でクスクスと笑う静の姿があった。
ヒナが、ナイフの刃を煌かせながら、優香を見据えている。その瞳は、相変わらずの半眼状態なのだが、そこに獲物を狩る猛獣じみた殺気が宿っているのを優香と静は見過ごさなかった。
ーこの子、どうやら私を本気で殺るつもりでかかってくるようだねー
おそらくは、本気で殺しにかかるくらいの勢いがなければ勝てないと踏んだのだろう。
ーまずいですね・・・擬体を纏う前に殺し合いはー
ヒナの殺気を感じ、静は、いつ止めに入るかを窺っていた。
「さあ、次でけりをつけるとしようか、ヒナ坊」
ニヤケ面は相変わらずのままーしかし目は全く笑っていない状態で、優香は両手の鉄扇を交差するように構えた。
「・・・そのヒナ坊っていうのはやめてほしいかな、チャイナお姉さん。もう少し、可愛いあだ名をつけてほしい」
「じゃあ、子猫ちゃんで決まりだな・・・君は猫みたいに可愛いから」
「それじゃあ、お姉さんはどことなくお狐さんだね」
「お、お狐!?」
優華が素っ頓狂な声を上げた。
今までいろんな少女たちと話してきたことはあったが、まさか狐呼ばわりされるとは、夢にも思っていなかったからだ。
予想外の不意打ちに、一瞬優香の表情が間の抜けた感じになったのを、ヒナは見過ごさなかった。
「甘いよ、お姉さん!!」
ヒナの瞳が胡乱気に輝いたかと思うと、ほんの一瞬で優香との間合いを詰める。
「・・・!!」
だが、優香もすぐに反応した。ナイフと鉄扇、二人の攻撃が、相手の首筋に届いたー
ーと思われた瞬間に、
「そこまでです!!二人とも」
静の凛とした声が辺りに響き渡り、二人は相手の首筋を狙ったままの状態で動きを止めた。
「・・・!!」
「・・・お静・・・」
二人の間に薙刀が割り込んできたのだ。
静の武器は薙刀ーただし、普通の薙刀とは異なり、伸縮自在で扱うことができる便利な代物だった。ゆえに、静も常に護身用に持ち歩いている。ただ、これはあくまでも「通常」の武器であり、彼女が擬体を纏った時にはまた異なる武器が用意されているのだがー
「お二人とも、ここで果てるおつもりですか」
厳然とした声で、二人の浅はかな行動を諫めにかかる静。おそらく、このまま止めなければ相打ちかあるいはどちらかの死亡でもって勝負は終わっていたはずだ。
どちらの武器も、相手の頸動脈に届きかねない位置にあったからだ。
当然、勝っても負けても無事では済まない。擬体を纏わない私闘の場合、敗者は死亡か重傷、勝者はペナルティである。
「・・・参ったね、こりゃ」
「うーん、つい熱くなっちゃったかも」
優華とヒナが、それぞれの武器を引っ込めるーヒナはナイフを腰のベルトに交差させて戻し、優香は鉄扇をヒナの目の前で重ね合わせるようにして一つ隠したーどうやっているのかは定かではないが。
「二つの扇を一つに・・・どうやってやってるの?お姉さん」
まるで手品でも見せられたかのように不思議そうな顔で優香に尋ねるヒナ。
そんな彼女に対し、相変わらずのニヤケ面で優香は答えた。
「そりゃ企業秘密だ」
「ケチ」
「・・・全く」
二人を止めた静も、自分の武器を引っ込めた。
「悪いな、お静。君が止めてくれなかったら、確かにやばかったよ」
「狐のお姉さん、確かに強かったからね・・・私も思わず本気を出しちゃった」
優香は、自分を狐呼ばわりするヒナに、いささか眉根を寄せながら尋ねた。
「何で私は狐なんだよ・・・子猫ちゃん」
優華の問いかけに、ふっと笑みを浮かべながら、ヒナが答える。
「・・・雰囲気かな。そっちが私のことを子猫ちゃんって呼ぶのとそんなに変わんないと思う」
ヒナの答えに呆れたような声を上げる優香と、その脇でクスクスと笑う静の姿があった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる