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第4章 更なる戦い
第131話 交錯
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「チャイナ服姿のお姉さん・・・綺麗だね」
両手のナイフを交差させ、ヒナが優香に迫る。
「君もなかなか綺麗だ・・・ヒナ坊」
優華も、両手の鉄扇を広げながら、悠然とした態度でヒナを見据えていた。
「あ、あなたたち、擬体を纏わずに戦っては・・・!!」
ただ一人、静だけがハラハラして二人の様子を見守っている。擬体を纏わずに戦うのは禁止行為ーもし、これでどちらかが重傷ないし死亡などということになれば、間違いなく大会運営側からペナルティを受けることになるからだ。
「心配いらないよ、お静」
優華が相変わらずのニヤケ面で静に答える。
「少なくとも、擬体を纏わずして戦ったとしても、それ自体はただの禁止行為であって、ペナルティの対象じゃない・・・ただ、擬体を纏わないでやり合う場合、相手に重傷を負わせたり、殺したりするのがペナルティの対象というだけのことさ・・・つまりは」
優華が鉄扇を広げ、ヒナのナイフを迎え撃とうとする。
「そこまでやらなきゃ問題なし・・・つまりはモーマンタイだ」
わざとらしく中国語で静に言う優香。そういえば、このアルカディア島に来る前に、優香は広東語で中国の知り合いと会話をしていたことがあった。
優華がチャイナ系の服装を好むのもそこら辺が絡んでいるのかもしれない。
「でも、だからって・・・」
しかし、何事もやりすぎるということはある。優華はある程度引き際をわきまえているものの、初対面のヒナの方はどうだかわからない。
ーいざという時には、私が二人を止めないとー
二人を止めるのは骨が折れそうだが、万が一の場合には自分が止めるしかないだろう。
やれやれと頭を振る静をよそに、優香とヒナの戦いが開始されたー擬体抜きで。
つまりは、本格的な戦闘行為ではなく、あくまでも二人の力試しといったところだろう。
ーそれで済めばいいのだがー
腰を落とし、姿勢を低くしながら、ヒナは優香をめがけて突進する。相変わらず、その表情は眠たそうに見えるが、その動きはさながら獲物に襲い掛かる肉食獣そのものだ。あっという間に間合いを詰め、ナイフを連続で繰り出している。
「ははは、いいねえ、ヒナ坊・・・少しは楽しめそうだ!!」
対する優香も、これまた笑みを浮かべながら、どこか楽し気な様子でヒナの攻撃を防いでいる。彼女の持つ鉄扇は、ヒナのナイフの突きを軽く受け流していた。
「お姉さんもかなりやるね・・・」
戦いの情勢を見る限りでは、ヒナの方が一方的優華を押しているようにも見えるーが、いくら素早い動きで連続でナイフを繰り出しても、それを優香はことごとくいなしてしまうのだ。しかも、優香の動きは戦っているというよりは華麗に舞っていると表現した方が適切だった。
つまりは、余裕があるのは、逆に受け手に回っているはずの優香の方なのだ。
「ほらほら、どうしたヒナ坊・・・そんなんじゃ、私には勝てないよ」
口元に笑みを張り付かせながら、優香は鉄扇でヒナの手元を狙うー彼女のナイフを落とすためだ。
一方で、ヒナも負けてはいない。今度は優香から一旦距離を取り、小休止する。
「動きは早いね、君は。やはり子猫・・・いや、ピューマかなこの場合は」
優華はまるで自らを仰ぐかのように鉄扇をヒラヒラさせながら、
「でも、そういう戦い方は、体力の消耗も激しいよ」
実際、素早い動きで相手を翻弄するのは、ある程度のスタミナがなければ、最後辺りは疲労のために動きが鈍ってしまう。少しずつ相手にダメージを与え続けることはできるかもしれないが、その前に自分の体力の消耗を抑えられなければ、結局はじり貧になってしまうからだ。
「生憎と、私は「返し」の方が得意でね・・・君みたいな相手にはちょっときついかもな」
優華の口元は、相変わらずニヤついてはいるものの、その瞳は先ほどよりもさらに細められ、胡乱な輝きを帯びていた。
両手のナイフを交差させ、ヒナが優香に迫る。
「君もなかなか綺麗だ・・・ヒナ坊」
優華も、両手の鉄扇を広げながら、悠然とした態度でヒナを見据えていた。
「あ、あなたたち、擬体を纏わずに戦っては・・・!!」
ただ一人、静だけがハラハラして二人の様子を見守っている。擬体を纏わずに戦うのは禁止行為ーもし、これでどちらかが重傷ないし死亡などということになれば、間違いなく大会運営側からペナルティを受けることになるからだ。
「心配いらないよ、お静」
優華が相変わらずのニヤケ面で静に答える。
「少なくとも、擬体を纏わずして戦ったとしても、それ自体はただの禁止行為であって、ペナルティの対象じゃない・・・ただ、擬体を纏わないでやり合う場合、相手に重傷を負わせたり、殺したりするのがペナルティの対象というだけのことさ・・・つまりは」
優華が鉄扇を広げ、ヒナのナイフを迎え撃とうとする。
「そこまでやらなきゃ問題なし・・・つまりはモーマンタイだ」
わざとらしく中国語で静に言う優香。そういえば、このアルカディア島に来る前に、優香は広東語で中国の知り合いと会話をしていたことがあった。
優華がチャイナ系の服装を好むのもそこら辺が絡んでいるのかもしれない。
「でも、だからって・・・」
しかし、何事もやりすぎるということはある。優華はある程度引き際をわきまえているものの、初対面のヒナの方はどうだかわからない。
ーいざという時には、私が二人を止めないとー
二人を止めるのは骨が折れそうだが、万が一の場合には自分が止めるしかないだろう。
やれやれと頭を振る静をよそに、優香とヒナの戦いが開始されたー擬体抜きで。
つまりは、本格的な戦闘行為ではなく、あくまでも二人の力試しといったところだろう。
ーそれで済めばいいのだがー
腰を落とし、姿勢を低くしながら、ヒナは優香をめがけて突進する。相変わらず、その表情は眠たそうに見えるが、その動きはさながら獲物に襲い掛かる肉食獣そのものだ。あっという間に間合いを詰め、ナイフを連続で繰り出している。
「ははは、いいねえ、ヒナ坊・・・少しは楽しめそうだ!!」
対する優香も、これまた笑みを浮かべながら、どこか楽し気な様子でヒナの攻撃を防いでいる。彼女の持つ鉄扇は、ヒナのナイフの突きを軽く受け流していた。
「お姉さんもかなりやるね・・・」
戦いの情勢を見る限りでは、ヒナの方が一方的優華を押しているようにも見えるーが、いくら素早い動きで連続でナイフを繰り出しても、それを優香はことごとくいなしてしまうのだ。しかも、優香の動きは戦っているというよりは華麗に舞っていると表現した方が適切だった。
つまりは、余裕があるのは、逆に受け手に回っているはずの優香の方なのだ。
「ほらほら、どうしたヒナ坊・・・そんなんじゃ、私には勝てないよ」
口元に笑みを張り付かせながら、優香は鉄扇でヒナの手元を狙うー彼女のナイフを落とすためだ。
一方で、ヒナも負けてはいない。今度は優香から一旦距離を取り、小休止する。
「動きは早いね、君は。やはり子猫・・・いや、ピューマかなこの場合は」
優華はまるで自らを仰ぐかのように鉄扇をヒラヒラさせながら、
「でも、そういう戦い方は、体力の消耗も激しいよ」
実際、素早い動きで相手を翻弄するのは、ある程度のスタミナがなければ、最後辺りは疲労のために動きが鈍ってしまう。少しずつ相手にダメージを与え続けることはできるかもしれないが、その前に自分の体力の消耗を抑えられなければ、結局はじり貧になってしまうからだ。
「生憎と、私は「返し」の方が得意でね・・・君みたいな相手にはちょっときついかもな」
優華の口元は、相変わらずニヤついてはいるものの、その瞳は先ほどよりもさらに細められ、胡乱な輝きを帯びていた。
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