127 / 499
第4章 更なる戦い
第126話 運営の思惑
しおりを挟む
秋月優香と風間静があとにした廃墟は、元々は何かの試験センターだったようだー尤も、このアルカディア島はそもそも住民が存在していないので、当然のことながら施設は利用された形跡は一切ない。大会運営側が最初から廃墟として作ったものなのだろう。
「しかし、いくら日本の風景に似せるためとはいえ、わざわざ廃墟まで作るか?普通」
肩を竦めつつ、口元を鉄扇で覆い隠しながら、優華はぼやく。
「・・・大会運営側としては、少しでも今回の開催国である日本に近づけたかったのでしょうね」
開催国と言えば、まるで日本がこの大会を開催したように聞こえるが、もちろん異なる。この大会を運営している組織側が、今回は日本や日本人を主体にこの大会を開催したという意味だ。
「お静は、やはり日本的な場所の方が落ち着くかい?」
優華が、口元をにやりと悪戯っぽく歪めながら、隣を歩く静に尋ねる。
「もう、優香さん。お静はやめてくださいな・・・まるで昔の人になった気分ですよ」
優華と知り合った時から、静は「お静」と呼ばれてからかわれている。そのたびに抗議しているのだが、はっきり言ってなしのつぶてだ。
「私としては、お静という呼び方の方が君に似合ってると思うんだがね」
「やめてください、本当に・・・私としては、やはり故郷と似たような場所の方が落ち着くというのはありますね」
優華に不服を申し立てつつも、律儀に訊かれたことに答える静だった。
「大会運営側も、可能な限り参加者に対して「配慮」はしているのでしょう」
優華がくっくっと喉を鳴らして笑った。
「おいおい・・・大会運営側が「配慮」してるって・・・?私達みたいな美しい者達に殺し合いを強要させるような連中が?」
悪い冗談だと言わんばかりに、優華は苦笑する。
「おそらくですが」
静も負けじと言い返す。
「戦わせるにしても、やはり周囲の景観や環境というのは重要なファクターとなるのでは?あまりに条件が違いすぎる場所で戦わせても、参加者が本来の力を発揮できないと判断したのではないでしょうか?だから、細かいところまで可能な限り日本に似せてこの島を設計したのだと」
優華は、鉄扇をひらひらと動かしながら、
「まあ、そう言われれば納得できるところもあるが・・・それにしたって、結局は自分たちの都合であって、私らに対する「配慮」と言えるのかは微妙だな・・・ん?」
元は試験センターらしき廃墟の中庭には、ベンチが置いてあった。優華は、何気なくそのベンチの方に目を向けて、そしてそこに、3つのあるものが置いてあることに気が付いた。
「ほう、これはこれは・・・」
「・・・あら」
静も気が付いたようだ。
二人の視線の先には、3つの生首ーおそらくは、先ほどの廃墟内に放置されていた首なし死体のものーが置いてあったのだ。
「しかし、いくら日本の風景に似せるためとはいえ、わざわざ廃墟まで作るか?普通」
肩を竦めつつ、口元を鉄扇で覆い隠しながら、優華はぼやく。
「・・・大会運営側としては、少しでも今回の開催国である日本に近づけたかったのでしょうね」
開催国と言えば、まるで日本がこの大会を開催したように聞こえるが、もちろん異なる。この大会を運営している組織側が、今回は日本や日本人を主体にこの大会を開催したという意味だ。
「お静は、やはり日本的な場所の方が落ち着くかい?」
優華が、口元をにやりと悪戯っぽく歪めながら、隣を歩く静に尋ねる。
「もう、優香さん。お静はやめてくださいな・・・まるで昔の人になった気分ですよ」
優華と知り合った時から、静は「お静」と呼ばれてからかわれている。そのたびに抗議しているのだが、はっきり言ってなしのつぶてだ。
「私としては、お静という呼び方の方が君に似合ってると思うんだがね」
「やめてください、本当に・・・私としては、やはり故郷と似たような場所の方が落ち着くというのはありますね」
優華に不服を申し立てつつも、律儀に訊かれたことに答える静だった。
「大会運営側も、可能な限り参加者に対して「配慮」はしているのでしょう」
優華がくっくっと喉を鳴らして笑った。
「おいおい・・・大会運営側が「配慮」してるって・・・?私達みたいな美しい者達に殺し合いを強要させるような連中が?」
悪い冗談だと言わんばかりに、優華は苦笑する。
「おそらくですが」
静も負けじと言い返す。
「戦わせるにしても、やはり周囲の景観や環境というのは重要なファクターとなるのでは?あまりに条件が違いすぎる場所で戦わせても、参加者が本来の力を発揮できないと判断したのではないでしょうか?だから、細かいところまで可能な限り日本に似せてこの島を設計したのだと」
優華は、鉄扇をひらひらと動かしながら、
「まあ、そう言われれば納得できるところもあるが・・・それにしたって、結局は自分たちの都合であって、私らに対する「配慮」と言えるのかは微妙だな・・・ん?」
元は試験センターらしき廃墟の中庭には、ベンチが置いてあった。優華は、何気なくそのベンチの方に目を向けて、そしてそこに、3つのあるものが置いてあることに気が付いた。
「ほう、これはこれは・・・」
「・・・あら」
静も気が付いたようだ。
二人の視線の先には、3つの生首ーおそらくは、先ほどの廃墟内に放置されていた首なし死体のものーが置いてあったのだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる