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第4章 更なる戦い

第126話 運営の思惑

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 秋月優香と風間静があとにした廃墟は、元々は何かの試験センターだったようだー尤も、このアルカディア島はそもそも住民が存在していないので、当然のことながら施設は利用された形跡は一切ない。大会運営側が廃墟として作ったものなのだろう。
「しかし、いくら日本の風景に似せるためとはいえ、わざわざ廃墟まで作るか?普通」
 肩を竦めつつ、口元を鉄扇で覆い隠しながら、優華はぼやく。
「・・・大会運営側としては、少しでも今回の開催国である日本に近づけたかったのでしょうね」
 開催国と言えば、まるで日本がこの大会を開催したように聞こえるが、もちろん異なる。この大会を運営している組織側が、今回は日本や日本人を主体にこの大会を開催したという意味だ。
「お静は、やはり日本的な場所の方が落ち着くかい?」
 優華が、口元をにやりと悪戯っぽく歪めながら、隣を歩く静に尋ねる。
「もう、優香さん。お静はやめてくださいな・・・まるで昔の人になった気分ですよ」
 優華と知り合った時から、静は「お静」と呼ばれてからかわれている。そのたびに抗議しているのだが、はっきり言ってなしのつぶてだ。
「私としては、お静という呼び方の方が君に似合ってると思うんだがね」
「やめてください、本当に・・・私としては、やはり故郷と似たような場所の方が落ち着くというのはありますね」
 優華に不服を申し立てつつも、律儀に訊かれたことに答える静だった。
「大会運営側も、可能な限り参加者に対して「配慮」はしているのでしょう」
 優華がくっくっと喉を鳴らして笑った。
「おいおい・・・大会運営側が「配慮」してるって・・・?私達みたいな美しい者達に殺し合いを強要させるような連中が?」
 悪い冗談だと言わんばかりに、優華は苦笑する。
「おそらくですが」
 静も負けじと言い返す。
「戦わせるにしても、やはり周囲の景観や環境というのは重要なファクターとなるのでは?あまりに条件が違いすぎる場所で戦わせても、参加者が本来の力を発揮できないと判断したのではないでしょうか?だから、細かいところまで可能な限り日本に似せてこの島を設計したのだと」
 優華は、鉄扇をひらひらと動かしながら、
「まあ、そう言われれば納得できるところもあるが・・・それにしたって、結局は自分たちの都合であって、私らに対する「配慮」と言えるのかは微妙だな・・・ん?」
 元は試験センターらしき廃墟の中庭には、ベンチが置いてあった。優華は、何気なくそのベンチの方に目を向けて、そしてそこに、3つのあるものが置いてあることに気が付いた。
「ほう、これはこれは・・・」
「・・・あら」
 静も気が付いたようだ。
 二人の視線の先には、3つの生首ーおそらくは、先ほどの廃墟内に放置されていた首なし死体のものーが置いてあったのだ。
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