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第4章 更なる戦い
第124話 扇
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「さてさて・・・それじゃあそろそろ、美しい私もお仕事に行くとしようかね」
勅使河原と氷上の戦いが終わり、勝利者の勅使河原が繁華街へと姿を消した後ー
ほとんどの参加者が出身校の制服姿であるのに対し、チャイナ系の服装に身を包んだ少女がとある廃墟の中にいた。
左目の下あたりにほくろがある、非常に整った顔立ちの娘ー年の頃は大体18くらいだろうか。高校3年生くらいか、あるいはそれ以上、つまりは大学生くらいにも見える。特に、左肩の辺りでまとめられた黒髪は、彼女の見た目をさらに大人びたものにしていた。
この大会の参加者の条件は、あくまでも女子高生に限られているはずなので、おそらくこの娘も女子高生のはずだ。
「まあ、あちらで死んだのが高3の夏だったからな」
そう、この娘は、高3の夏に死亡している。もちろん、大会運営側の手により、その時の記憶は曖昧化されており、彼女にもその時の明確な記憶はない。ただ、その時期に死んだということだけは覚えている。
「我ながら、受験勉強のし過ぎで、知恵熱で逝ってしまったのかねぇ」
なんとも冗談めかしながら、娘は右手に携えた鉄扇を開き、口元を隠した。その行動も、非常に絵になる娘だった。
「こんな美しい娘が、こんなちっぽけな島でこんな大会に参加させられて・・・もし負けて晒し首になったら、これは人類にとってかなりの損害となるだろうな」
どこまで本気で話しているのか、いまいちよくわからない。鉄扇に隠された口元は、周りには見えないものの、にやりと歪んでいたりする。
「相変わらずですね・・・秋月さん」
そして、そんな彼女と相対している娘もまた、大変美しかった。
腰まで届く長い髪は、色素がもともと薄いのか、陽光を受けて淡く白銀色に輝いている。元々彫りの深い顔立ちは、西洋系の血でも混じっているのではないかと思われるが、実際には彼女は生粋の日本人である。
「ご自分でそこまで言えるのはあなたくらいでしょうね」
皮肉を込めて、目の前の美少女ーもはや美女と形容しても差し支えないだろうがーに言葉をかける、白髪の少女。
「おやおや、本当のことを言って何が悪いんだい?少なくとも、私が美人なのは誰もが認めるところだろう?」
黒髪、チャイナ服の娘ー秋月優香はカラカラと笑いながら、鉄扇をひらひらさせた。動作の一つ一つが誠に絵になる美しい娘だ。これなら確かに、自分の美貌に自身を持っていたとしても仕方がないだろうし、周囲もそれを許すだろう。
優華は、今度は鉄扇を閉じて腕を組んだ。チャイナ服という、体のラインがくっきりと浮き出やすい服装に遭って、彼女の豊満な胸が強調されて見える。もちろん、優華は意図的にやっているのだろうがー
「秋月さん、そろそろここから離れるべきでは?」
白髪の娘ー風間静は、自分の周囲を軽く見回した後、秋月にこの場から離れるように促した。
辺り一面に立ち込めるのは、血液に含まれる鉄分の臭いーいうまでもなく、この場で戦いが行われたのだ。そして、この場には何人かの死体が放置されていた。
「私らが駆け付けた時には、既に勝敗は決していたー3人がやられてるな・・・ほぼ同時に」
3人とも、同じ学校の制服を着用していた。首は3人とも持ち去られている。
「現場はもう十分確認したし、一旦この場から離れましょう、秋月さん」
優華は、靴のつま先で遺体をチョンと蹴り、
「ここで戦っていたのは、4人だろうな・・・生き残ったやつがこいつらを皆殺しにしたんだろうが」
この場に残された擬体の残滓を嗅ぎ取っていけば、ある程度状況はわかる。
優華は鼻が利くーことに、擬体に関しては鋭敏な感覚を持っていた。
「確かに、この場は離れるべきかもな・・・相手がよくわからないだけに」
優華は静の方を振り返ると、
「行くぞ、お静」
「もう、お静はやめてくださいって、あれほど・・・」
呼ばれた白髪の娘が優華に文句を言いながら駆けてくる。
優華は静の言うことは取り合わず、鉄扇で口元を隠しながら、試案を続けた。
ーこの3人だって、そんなに弱くはないとみた。しかし、それを一人でやるとはー
かなり厄介な相手が、この辺りに現れたーということだった。
勅使河原と氷上の戦いが終わり、勝利者の勅使河原が繁華街へと姿を消した後ー
ほとんどの参加者が出身校の制服姿であるのに対し、チャイナ系の服装に身を包んだ少女がとある廃墟の中にいた。
左目の下あたりにほくろがある、非常に整った顔立ちの娘ー年の頃は大体18くらいだろうか。高校3年生くらいか、あるいはそれ以上、つまりは大学生くらいにも見える。特に、左肩の辺りでまとめられた黒髪は、彼女の見た目をさらに大人びたものにしていた。
この大会の参加者の条件は、あくまでも女子高生に限られているはずなので、おそらくこの娘も女子高生のはずだ。
「まあ、あちらで死んだのが高3の夏だったからな」
そう、この娘は、高3の夏に死亡している。もちろん、大会運営側の手により、その時の記憶は曖昧化されており、彼女にもその時の明確な記憶はない。ただ、その時期に死んだということだけは覚えている。
「我ながら、受験勉強のし過ぎで、知恵熱で逝ってしまったのかねぇ」
なんとも冗談めかしながら、娘は右手に携えた鉄扇を開き、口元を隠した。その行動も、非常に絵になる娘だった。
「こんな美しい娘が、こんなちっぽけな島でこんな大会に参加させられて・・・もし負けて晒し首になったら、これは人類にとってかなりの損害となるだろうな」
どこまで本気で話しているのか、いまいちよくわからない。鉄扇に隠された口元は、周りには見えないものの、にやりと歪んでいたりする。
「相変わらずですね・・・秋月さん」
そして、そんな彼女と相対している娘もまた、大変美しかった。
腰まで届く長い髪は、色素がもともと薄いのか、陽光を受けて淡く白銀色に輝いている。元々彫りの深い顔立ちは、西洋系の血でも混じっているのではないかと思われるが、実際には彼女は生粋の日本人である。
「ご自分でそこまで言えるのはあなたくらいでしょうね」
皮肉を込めて、目の前の美少女ーもはや美女と形容しても差し支えないだろうがーに言葉をかける、白髪の少女。
「おやおや、本当のことを言って何が悪いんだい?少なくとも、私が美人なのは誰もが認めるところだろう?」
黒髪、チャイナ服の娘ー秋月優香はカラカラと笑いながら、鉄扇をひらひらさせた。動作の一つ一つが誠に絵になる美しい娘だ。これなら確かに、自分の美貌に自身を持っていたとしても仕方がないだろうし、周囲もそれを許すだろう。
優華は、今度は鉄扇を閉じて腕を組んだ。チャイナ服という、体のラインがくっきりと浮き出やすい服装に遭って、彼女の豊満な胸が強調されて見える。もちろん、優華は意図的にやっているのだろうがー
「秋月さん、そろそろここから離れるべきでは?」
白髪の娘ー風間静は、自分の周囲を軽く見回した後、秋月にこの場から離れるように促した。
辺り一面に立ち込めるのは、血液に含まれる鉄分の臭いーいうまでもなく、この場で戦いが行われたのだ。そして、この場には何人かの死体が放置されていた。
「私らが駆け付けた時には、既に勝敗は決していたー3人がやられてるな・・・ほぼ同時に」
3人とも、同じ学校の制服を着用していた。首は3人とも持ち去られている。
「現場はもう十分確認したし、一旦この場から離れましょう、秋月さん」
優華は、靴のつま先で遺体をチョンと蹴り、
「ここで戦っていたのは、4人だろうな・・・生き残ったやつがこいつらを皆殺しにしたんだろうが」
この場に残された擬体の残滓を嗅ぎ取っていけば、ある程度状況はわかる。
優華は鼻が利くーことに、擬体に関しては鋭敏な感覚を持っていた。
「確かに、この場は離れるべきかもな・・・相手がよくわからないだけに」
優華は静の方を振り返ると、
「行くぞ、お静」
「もう、お静はやめてくださいって、あれほど・・・」
呼ばれた白髪の娘が優華に文句を言いながら駆けてくる。
優華は静の言うことは取り合わず、鉄扇で口元を隠しながら、試案を続けた。
ーこの3人だって、そんなに弱くはないとみた。しかし、それを一人でやるとはー
かなり厄介な相手が、この辺りに現れたーということだった。
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