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第3章 虚ろなる人形
第122話 美しいがゆえに
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数時間後ー
今、一条紗耶香と天内葉月は、氷上亜美と相坂光の成れの果てを前に、茫然と立ち尽くすしかなかった。
「氷上・・・あんた・・・」
紗耶香と葉月は、氷上とは実際に対面し、言葉も交わしているが、相坂とは面識がない。二人が氷上と会った時には、既に相坂は敗北者ーつまりは氷上に敗れ、彼女にその首を捧げた人物だったからだ。
しかし、例え面識がなかったとしても、氷上の関係者というだけでやはり情は湧いてくる。
「これは・・・いくら何でもひどいっすね・・・先輩」
切断面を縫合するようにして繋げられた二人の生首ーもちろん、二人とも容姿は美しいのだが、逆にそれゆえになんとも形容しがたい不気味さも醸し出している。
美しいからこそ、残酷で不気味にも思える、面妖な物体ーとでもいうべきなのだろうか。
氷上も相坂も、もはやその表情を変えることはかなわないが、もし二人が自分たちの末路を知ったとしたら、果たしてどんな反応を示したことだろうかー
確かに、大会ルールには違反していないだろう。大会ルールでは、敗者の表情に著しく影響を与えるような損壊行為は禁止しているーだが、少なくともこの「連結首」は、そこには抵触してはいない。
「あたしも、お嬢様一人殺して首を晒したっすが、さすがにここまでする気はないっすよ」
紗耶香にも葉月にも、この連結首は二人に対する冒涜としか映らなかった。
「あたしは・・・生前に妹弟子二人の首を刎ねた」
紗耶香は、憤りの色を含んだ瞳で連結首を見つめながら、過去に自分が起こした事件について語り始めた。
「あたしは、死を通じて、二人と一緒にいたかった。その表情を閉じ込めたかった。だが、それ以上あいつらを傷つけたりはしなかった」
首を刎ねたのも、死の直前の表情をそのまま残しておきたかったからだ。死の直前に人が見せる表情こそが、真に迫るものだと思えたからだ。
だが、それ以上のことは一切しなかった。
「あの女・・・勅使河原といったか。あたしよりも明らかに病んでるな」
「先輩、あんなのまともに相手にしちゃ駄目っすよ!」
葉月は、一度勅使河原に襲われかけている。下手をすれば、首を切断され、今この木に吊るされていたのは、氷上ではなく葉月だったかもしれないのだ。
「・・・だが、あいつの方は、あたしたちを放ってはおかないだろう。こんな場所に吊るしたってことは、これは明らかにあたしらに対する挑戦ってことだろうな」
いずれにしろ、勅使河原とは決着をつけなければならない時が必ず来るーそれも、そう遠くない未来のはずだ。
そして、その時に葉月を守ってやれるのは、自分しかいない。
「葉月・・・お前のことは何が何でもやつの手から守る。だから、この件が落ち着くまでは、あたしから絶対離れるな」
「・・・ラジャーっす」
勅使河原は、今もどこかでこの光景を見ている可能性がある。それを思うだけで腹立たしい気分にさせられる紗耶香だったが、今は何より葉月の身の安全を確保するのが第一だった。
おそらくだが、勅使河原が直接的に狙ってくるのは、自分ではなく葉月の方だろう。
常に葉月に張り付いて、守ってやらなければー
今、一条紗耶香と天内葉月は、氷上亜美と相坂光の成れの果てを前に、茫然と立ち尽くすしかなかった。
「氷上・・・あんた・・・」
紗耶香と葉月は、氷上とは実際に対面し、言葉も交わしているが、相坂とは面識がない。二人が氷上と会った時には、既に相坂は敗北者ーつまりは氷上に敗れ、彼女にその首を捧げた人物だったからだ。
しかし、例え面識がなかったとしても、氷上の関係者というだけでやはり情は湧いてくる。
「これは・・・いくら何でもひどいっすね・・・先輩」
切断面を縫合するようにして繋げられた二人の生首ーもちろん、二人とも容姿は美しいのだが、逆にそれゆえになんとも形容しがたい不気味さも醸し出している。
美しいからこそ、残酷で不気味にも思える、面妖な物体ーとでもいうべきなのだろうか。
氷上も相坂も、もはやその表情を変えることはかなわないが、もし二人が自分たちの末路を知ったとしたら、果たしてどんな反応を示したことだろうかー
確かに、大会ルールには違反していないだろう。大会ルールでは、敗者の表情に著しく影響を与えるような損壊行為は禁止しているーだが、少なくともこの「連結首」は、そこには抵触してはいない。
「あたしも、お嬢様一人殺して首を晒したっすが、さすがにここまでする気はないっすよ」
紗耶香にも葉月にも、この連結首は二人に対する冒涜としか映らなかった。
「あたしは・・・生前に妹弟子二人の首を刎ねた」
紗耶香は、憤りの色を含んだ瞳で連結首を見つめながら、過去に自分が起こした事件について語り始めた。
「あたしは、死を通じて、二人と一緒にいたかった。その表情を閉じ込めたかった。だが、それ以上あいつらを傷つけたりはしなかった」
首を刎ねたのも、死の直前の表情をそのまま残しておきたかったからだ。死の直前に人が見せる表情こそが、真に迫るものだと思えたからだ。
だが、それ以上のことは一切しなかった。
「あの女・・・勅使河原といったか。あたしよりも明らかに病んでるな」
「先輩、あんなのまともに相手にしちゃ駄目っすよ!」
葉月は、一度勅使河原に襲われかけている。下手をすれば、首を切断され、今この木に吊るされていたのは、氷上ではなく葉月だったかもしれないのだ。
「・・・だが、あいつの方は、あたしたちを放ってはおかないだろう。こんな場所に吊るしたってことは、これは明らかにあたしらに対する挑戦ってことだろうな」
いずれにしろ、勅使河原とは決着をつけなければならない時が必ず来るーそれも、そう遠くない未来のはずだ。
そして、その時に葉月を守ってやれるのは、自分しかいない。
「葉月・・・お前のことは何が何でもやつの手から守る。だから、この件が落ち着くまでは、あたしから絶対離れるな」
「・・・ラジャーっす」
勅使河原は、今もどこかでこの光景を見ている可能性がある。それを思うだけで腹立たしい気分にさせられる紗耶香だったが、今は何より葉月の身の安全を確保するのが第一だった。
おそらくだが、勅使河原が直接的に狙ってくるのは、自分ではなく葉月の方だろう。
常に葉月に張り付いて、守ってやらなければー
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