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第3章 虚ろなる人形
第107話 翻弄する光
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「勅使河原マヤ、擬体破損率2%」
ジャッジの電子音声が公園内に響き渡る。氷上の攻撃が、勅使河原の左腕を掠めたのだ。
「あら、お見事ね・・・私の擬体に傷をつけるだなんて」
高々2%程度とは言え、ダメージはダメージ。だが、勅使河原はさほど気にした様子もなく、淡々と氷上の攻撃をかわし続ける。
「はああぁぁぁ!!」
氷上も、攻撃が当たったとはいえ、それで油断した様子もなく、勅使河原に攻撃させまいと今まで以上に激しい攻撃を繰り出している。一撃の威力は確かに小さいが、ダメージも蓄積していけば勝機はある。本当のところは、一気に決着をつけてしまいたいのだが、そう簡単に行く相手ではないのは、先ほど鋼線で縛り上げられた時に十分感じていた。
ーこの女は、危ないー
一瞬たりとて気を抜くことはできない。どこから相手が攻撃してくるか、全く予測できないからだ。
「さすが、余裕綽々と言った様子ね、勅使河原さん・・・でも、まだまだこれからよ!!」
勅使河原が後ろに跳躍しつつ右腕を伸ばし、鋼線を放とうとするのを、すんでのところで氷上が食い止める。
「勅使河原マヤ、擬体破損率5%」
ジャッジの電子音声が再び響く。氷上の鉤爪が勅使河原の右手の指2本を薙ぎ払った形だーもちろん、擬体ごしの戦いなので、今の一撃で勅使河原が痛みを感じることはないし、右手の指2本を欠損したというわけでもないーが、ダメージの蓄積が勅使河原の反応速度をわずかに遅延させたのは事実だ。
ー・・・今なら・・・!!ー
後方へと跳んで逃れようとする勅使河原に追いすがる氷上。もしかしたら、これも罠かもしれないとは思ったもの、下手に距離を取られて相手に攻撃する暇を与えるよりも、可能な限り密着した方がまだ安全だと判断した。
ー見えない攻撃というのも厄介よねー
氷上が胸の内で毒づいた。
ー本当にいやらしい女だわー
相坂光よりも、はるかに戦いにくい相手だ。相坂は、どちらかというとパワーファイター型だった。オノを装備し、確かに一撃の威力は絶大であったが、直線的で動きも見切りやすく、氷上もそれゆえに持ち前のスピードを生かして何とか勝利へとつなげていけた。
だが、目の前の勅使河原はそうはいかない。性格だけでなく、戦い方も何となくいやらしい。
そして、どれだけこちらが攻撃しようが、微々たるものとは言えダメージを与え続けようが、常に人を見下したような薄ら笑いを浮かべているだけで、本心も読めない。すべてにおいて、氷上にとっては相性の悪い対戦相手と言えた。
「フフフ・・・」
勅使河原は、相変わらずの余裕綽綽ぶりで氷上の攻撃をかわし続けている。そのため、果敢に攻めているはずの氷上の方が焦りを感じるようになっていった。
ーそれも、この女の作戦のうちなのかしらねー
こちらの焦りと体力の消耗を待ってから反撃するつもりだろうかーその可能性も考えてはいたが。
ーでも、なんか違うのよね、この女の場合ー
単純にこちらの消耗や精神的摩耗を狙っているというわけではないように思える。誘っているようにも見えて、実は単に逃げ回っているだけにも見えるし、何か仕掛けているのではないかとも思える。
実に、厄介な相手だった。
ーどうしようかしら?ここは作戦を変えてー
氷上が思案し始めたその時だったー
ジャッジの電子音声が公園内に響き渡る。氷上の攻撃が、勅使河原の左腕を掠めたのだ。
「あら、お見事ね・・・私の擬体に傷をつけるだなんて」
高々2%程度とは言え、ダメージはダメージ。だが、勅使河原はさほど気にした様子もなく、淡々と氷上の攻撃をかわし続ける。
「はああぁぁぁ!!」
氷上も、攻撃が当たったとはいえ、それで油断した様子もなく、勅使河原に攻撃させまいと今まで以上に激しい攻撃を繰り出している。一撃の威力は確かに小さいが、ダメージも蓄積していけば勝機はある。本当のところは、一気に決着をつけてしまいたいのだが、そう簡単に行く相手ではないのは、先ほど鋼線で縛り上げられた時に十分感じていた。
ーこの女は、危ないー
一瞬たりとて気を抜くことはできない。どこから相手が攻撃してくるか、全く予測できないからだ。
「さすが、余裕綽々と言った様子ね、勅使河原さん・・・でも、まだまだこれからよ!!」
勅使河原が後ろに跳躍しつつ右腕を伸ばし、鋼線を放とうとするのを、すんでのところで氷上が食い止める。
「勅使河原マヤ、擬体破損率5%」
ジャッジの電子音声が再び響く。氷上の鉤爪が勅使河原の右手の指2本を薙ぎ払った形だーもちろん、擬体ごしの戦いなので、今の一撃で勅使河原が痛みを感じることはないし、右手の指2本を欠損したというわけでもないーが、ダメージの蓄積が勅使河原の反応速度をわずかに遅延させたのは事実だ。
ー・・・今なら・・・!!ー
後方へと跳んで逃れようとする勅使河原に追いすがる氷上。もしかしたら、これも罠かもしれないとは思ったもの、下手に距離を取られて相手に攻撃する暇を与えるよりも、可能な限り密着した方がまだ安全だと判断した。
ー見えない攻撃というのも厄介よねー
氷上が胸の内で毒づいた。
ー本当にいやらしい女だわー
相坂光よりも、はるかに戦いにくい相手だ。相坂は、どちらかというとパワーファイター型だった。オノを装備し、確かに一撃の威力は絶大であったが、直線的で動きも見切りやすく、氷上もそれゆえに持ち前のスピードを生かして何とか勝利へとつなげていけた。
だが、目の前の勅使河原はそうはいかない。性格だけでなく、戦い方も何となくいやらしい。
そして、どれだけこちらが攻撃しようが、微々たるものとは言えダメージを与え続けようが、常に人を見下したような薄ら笑いを浮かべているだけで、本心も読めない。すべてにおいて、氷上にとっては相性の悪い対戦相手と言えた。
「フフフ・・・」
勅使河原は、相変わらずの余裕綽綽ぶりで氷上の攻撃をかわし続けている。そのため、果敢に攻めているはずの氷上の方が焦りを感じるようになっていった。
ーそれも、この女の作戦のうちなのかしらねー
こちらの焦りと体力の消耗を待ってから反撃するつもりだろうかーその可能性も考えてはいたが。
ーでも、なんか違うのよね、この女の場合ー
単純にこちらの消耗や精神的摩耗を狙っているというわけではないように思える。誘っているようにも見えて、実は単に逃げ回っているだけにも見えるし、何か仕掛けているのではないかとも思える。
実に、厄介な相手だった。
ーどうしようかしら?ここは作戦を変えてー
氷上が思案し始めたその時だったー
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