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第3章 虚ろなる人形
第106話 鋼線と鉤爪
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勅使河原マヤと氷上亜美の戦いが始まった。
「はあああぁぁっ!!」
先に攻撃に打って出たのは、氷上の方だった。勅使河原の神出鬼没、変幻自在の鋼線を前に、下手に距離を取ったり様子を見るよりも、相手に攻撃のスキを与えず一気に制圧してしまった方が勝ち目はあると踏んだからだった。
猪突猛進ともいうべき氷上の先攻に、しかし対する勅使河原は悠然として待ち構えているだけのように見える。
「フフフ、氷上さん。威勢がいいのね。いきなり突撃してくるだなんて、私、興奮しちゃいますわ」
あくまでも優雅な姿勢を崩さない勅使河原。
もちろん、氷上も、勅使河原がそう簡単にやられてくれる相手だとは思っていない。
ーさっき、擬体化する前の段階でも、この女は鋼線を自由に操って私を拘束したー
もちろん、いきなり拘束されるとは夢にも思っていなかったので、先ほどはあっさりと彼女に捕まってしまったが、今は違う。
ーいくら、自在に操れるとは言っても、それを使う過程で必ずアクションに隙ができるはずー
勅使河原にも、鋼線を放つ際の予備動作やそれに伴う一瞬の硬直時間はあるだろう。本来ならば、それを見極められればいいのだが、さすがにそこまでの自信は氷上にはなかった。
ー可能な限り、彼女の動きを封じつつ、少しずつダメージを与えていくー
とにかく、可能な限り勅使河原に近接し、技を使用する暇を与えないことだ。
氷上は、攻撃スピードには自信があった。自慢のスピードで相坂光を翻弄し続け、最終的には彼女が勝利を収め、相坂の首を刎ねたのだ。
ーとにかく、スキを与えない!ー
氷上は、勅使河原に対する言い知れぬ不安と戦慄を拭い去るかのように、勅使河原に近接し、鉤爪を連続で突き出した。
ーフフフ、氷上さんは、どうやら私の動きを封じるおつもりのようねー
勅使河原は、氷上の連続攻撃を、まさに髪の毛1本の差でかわしながら、氷上の狙いを見定めていた。
ーさすがに、一撃で致命傷を狙う・・・というつもりはなさそうねー
鉤爪を突き出しての連続攻撃だが、そのいずれもが勅使河原の急所からは外れた場所を狙っている。勅使河原の擬体破損率をじわじわと削り、持久戦に持ち込む気だ。
本来なら、勅使河原のような「見えない攻撃」を得意とする相手には、持久戦よりも急所狙いの一発勝負の方が好ましいのかもしれない。相手の攻撃の軌道が読めない以上、下手に長引かせるよりも、早く決めてしまった方が被害は少なく、自分の倒される確率も低減できるからだ。
しかし、氷上は、勅使河原がそう簡単には「やられてくれる相手ではない」ということを察したらしく、乾坤一擲の大勝負をやるよりも、勅使河原の攻撃のスキを奪いつつの持久戦で何とか持ちこたえようとしているようだった。
相手に攻撃はさせないが、自分も大きなダメージは狙わない。そんなところだろう。
ーまあ、今は氷上さんに合わせるとしましょうか。まだ勝負は始まったばかりー
勅使河原は、口の端を軽く上げながら、連続で繰り出される氷上の攻撃を、しばらくの間かわし続けたー
「はあああぁぁっ!!」
先に攻撃に打って出たのは、氷上の方だった。勅使河原の神出鬼没、変幻自在の鋼線を前に、下手に距離を取ったり様子を見るよりも、相手に攻撃のスキを与えず一気に制圧してしまった方が勝ち目はあると踏んだからだった。
猪突猛進ともいうべき氷上の先攻に、しかし対する勅使河原は悠然として待ち構えているだけのように見える。
「フフフ、氷上さん。威勢がいいのね。いきなり突撃してくるだなんて、私、興奮しちゃいますわ」
あくまでも優雅な姿勢を崩さない勅使河原。
もちろん、氷上も、勅使河原がそう簡単にやられてくれる相手だとは思っていない。
ーさっき、擬体化する前の段階でも、この女は鋼線を自由に操って私を拘束したー
もちろん、いきなり拘束されるとは夢にも思っていなかったので、先ほどはあっさりと彼女に捕まってしまったが、今は違う。
ーいくら、自在に操れるとは言っても、それを使う過程で必ずアクションに隙ができるはずー
勅使河原にも、鋼線を放つ際の予備動作やそれに伴う一瞬の硬直時間はあるだろう。本来ならば、それを見極められればいいのだが、さすがにそこまでの自信は氷上にはなかった。
ー可能な限り、彼女の動きを封じつつ、少しずつダメージを与えていくー
とにかく、可能な限り勅使河原に近接し、技を使用する暇を与えないことだ。
氷上は、攻撃スピードには自信があった。自慢のスピードで相坂光を翻弄し続け、最終的には彼女が勝利を収め、相坂の首を刎ねたのだ。
ーとにかく、スキを与えない!ー
氷上は、勅使河原に対する言い知れぬ不安と戦慄を拭い去るかのように、勅使河原に近接し、鉤爪を連続で突き出した。
ーフフフ、氷上さんは、どうやら私の動きを封じるおつもりのようねー
勅使河原は、氷上の連続攻撃を、まさに髪の毛1本の差でかわしながら、氷上の狙いを見定めていた。
ーさすがに、一撃で致命傷を狙う・・・というつもりはなさそうねー
鉤爪を突き出しての連続攻撃だが、そのいずれもが勅使河原の急所からは外れた場所を狙っている。勅使河原の擬体破損率をじわじわと削り、持久戦に持ち込む気だ。
本来なら、勅使河原のような「見えない攻撃」を得意とする相手には、持久戦よりも急所狙いの一発勝負の方が好ましいのかもしれない。相手の攻撃の軌道が読めない以上、下手に長引かせるよりも、早く決めてしまった方が被害は少なく、自分の倒される確率も低減できるからだ。
しかし、氷上は、勅使河原がそう簡単には「やられてくれる相手ではない」ということを察したらしく、乾坤一擲の大勝負をやるよりも、勅使河原の攻撃のスキを奪いつつの持久戦で何とか持ちこたえようとしているようだった。
相手に攻撃はさせないが、自分も大きなダメージは狙わない。そんなところだろう。
ーまあ、今は氷上さんに合わせるとしましょうか。まだ勝負は始まったばかりー
勅使河原は、口の端を軽く上げながら、連続で繰り出される氷上の攻撃を、しばらくの間かわし続けたー
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