百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第3章 虚ろなる人形

第95話 暗闇の中の殺意

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「う、うぷ・・・んんん・・・」
 いったい、いつまで勅使河原の接吻は続くのかー
 真由美が身をよじり、何とか勅使河原の拘束から逃れようとしても、勅使河原は真由美の両頬を力強く押さえつけ、真由美の口中をその舌で弄び続ける。
 二人の舌の交わる卑猥な音が、静寂と暗闇が支配する地下室内に響いた。

「んん、ぷぷはぁぁ」
 長い長い接吻から解放され、少しせき込みながら、真由美は目の前の勅使河原を睨みつけたー憎悪丸出しで。
「あ、アンタぁぁ!!」
 真由美の怒声が部屋に響き渡る。
「川澄さん・・・本当によかったわ。可愛かったわよ」
「う、うるさい黙れ変態!!」
 屈辱の涙で頬を濡らしつつ、勅使河原を怒鳴りつける真由美。そんな彼女を悠然とした様子で眺めていた勅使河原だったが、ふと何かを思い出したかのようにベッドから降りた。そして、何かを探し始めた。
「ここから出せ!勅使河原マヤ・・・あたしに、いや、あたしたちにこんなことをしておいてただで済むと思うな!」
 背後のベッドで怒鳴り散らす真由美をよそに、勅使河原は部屋の中をきょろきょろし始める。
 ーあったー
 勅使河原が探していたのは、水の入ったバケツだった。この部屋で、真由美をさらに嬲るためにあらかじめ用意しておいたものだった。
 ーただ絞め殺すだけじゃつまらないわ・・・真由美、あなたはもっともっと可愛くなる。私に痛めつけられることで、もっときれいになるのよー
 勅使河原の口の端が次第に歪んでいく。それは、この暗がりの中、少し離れた場所にいた真由美でもはっきりと見て取れることができた。ゆえに、真由美は再び恐怖を感じ、一瞬押し黙る。
「ねえ、川澄さん・・・」
 勅使河原の声が、今までよりもさらにか細くなっていくーが、逆にそれが、彼女の狂気の高まりを示してもいた。真由美に呼び掛ける声が、自然と狂気に彩られていくー
「もう少し、私と遊んでいただけないかしら?」
 勅使河原が、怜悧な瞳を真由美に向け、さらにか細く、今までよりも低い声でしゃべりながら、従容とした足取りで近づいてくる。
 ー・・・怖いー
 真由美の背に冷や汗が溢れ出た。喉がヒクついて、さっきまでとは打って変わり声が出せなくなっていた。
 ー何なの、この女はー
 ベッドの上で、半身を起こしたままの姿で、真由美は身動きすら取れなくなっていた。
 ー怖い、怖いよー
 自然と涙が頬を伝う。今度の涙は、屈辱によるものではなく、言い知れぬ恐怖によるものだった。
 勅使河原が右手をゆっくりと、真由美に向けて伸ばした。
「・・・ひっ!!」
 喉の奥に何かが引っ掛かったような声が出た。勅使河原は穏やかな笑みを浮かべながら、真由美の頭に手を伸ばし、そしてー
「・・・痛っ!!」
 真由美の髪を思い切り掴んだ。
「さあ、真由美・・・私と一緒にもう少し遊びましょう。さっさとこちらへ来るのよ!」
 勅使河原の口調が、今までとは打って変わって強いものとなる。そこには、拒絶すら許さないという勅使河原の強い意志が窺がえた。
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