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第3章 虚ろなる人形
第93話 暗闇の中でー
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「う・・・ううん」
旧校舎の裏で、勅使河原と話した後、突然睡魔に見舞われ、そのまま眠りの中にいた真由美が、うっすらと瞳を開けた。
「・・・ここは・・・?」
周囲を見回してみると、そこは薄暗く、かなり古い作りの粗末な部屋ーしかし、壁はとにかく頑強そうで、この部屋の唯一の出口につながる扉もまた分厚く、中の人間が簡単には脱出できないような作りになっているのが窺える。
「・・・って!?ここどこ!?」
ようやく、眠気から解放された頭を振りながら、真由美は起き上がろうとして・・・
「・・・って、ええ!?・・・何、この恰好・・・なんであたし、裸で・・・」
真由美は全裸だった。そのうえ、両手が後ろ手に縛られ、両足もまた拘束されていたのだ。
つまりは、全く身動きが取れない状況だったのだ。
「な、何なのよ・・・いやあ、誰か、誰か助けて!!」
真由美は恐怖のあまり、半狂乱に近い状態で周囲に助けを求めた。尤も、その声が届くはずもなくーある一人を除いては、だがー
「フフフ、ようやくお目ざめのようね、川澄さん」
「・・・え?」
部屋の奥の暗がりから、勅使河原の声が響いてきた。そして、従容とした足取りで、真由美が横たえられているベッドへと近づいてくる。
勅使河原もまた、裸だった。
「て、勅使河原さん・・・」
真由美が、嫌悪と怒りの混じった非難のまなざしを勅使河原へと向けた。先ほどまで、恐怖のあまり半狂乱になっていた彼女だったが、ここに勅使河原が姿を現したのを見て、どうやら怒りや嫌悪の方が勝ったようだった。
「・・・何のつもり?当然、これもあなたがやったんでしょ?」
鋭い非難のまなざしを向けられた勅使河原だったが、当の本人は涼し気な顔つきで、怜悧に輝く瞳を真由美に向けながら、
「その通りよ・・・あなたとは、一度裸のお付き合いをしたいと思っていたから」
「・・・ふざけないで!!」
真由美の一喝が、地下室の中に響き渡るーが、その声も部屋の外部に漏れることは一切ない。元々、収容者を尋問するために作られた部屋で、一切の物音を外部へと漏らさない作りとなっているからだ。
「あたしをこんな恰好にして、縛って・・・いったい何をしようっていうの?この変態!!」
真由美が勅使河原を糾弾するが、その様子は却って勅使河原の中の嗜虐心を煽るだけの結果となった。
「あら、変態だなんて、心外ね・・・私は、渡辺さんや小坂さんにしてあげられなかったことをこれからあなたにたっぷりとしてあげようと思っているだけだというのに」
勅使河原の口の端が歪んでいくーその表情に、おぞましさを感じる真由美。
ー間違いない、こいつは、この女はー
「・・・勅使河原さん、いや、勅使河原、アンタ、二人をいったいどうした?」
勅使河原は、真由美の問いかけに答えようともせず、うっすらと笑みを浮かべて、悠然とした態度で身動きがとれぬ真由美を見下ろしているだけだった。
「・・・答えろ、勅使河原!!いったい、アンタはあの二人をどうしたってんだ?何をしたんだ!?」
真由美が叫ぶーその叫びには、今しがた感じた勅使河原への恐怖を抑え込もうとする真由美の思惑が含まれていた。
「・・・あなたも、あの二人のもとへ行けるわよ、川澄さん」
勅使河原が、不意に顔を近づけてくる。その勅使河原の端正な顔立ちが、逆に今はとても恐ろしく、不気味なもののように感じられた。
作られた美貌ーそう表現しても当てはまるくらいに美しいが、どこか現実味がなく、それでいながら、それを見る者に戦慄を覚えさせるような、そんな容貌だったー
旧校舎の裏で、勅使河原と話した後、突然睡魔に見舞われ、そのまま眠りの中にいた真由美が、うっすらと瞳を開けた。
「・・・ここは・・・?」
周囲を見回してみると、そこは薄暗く、かなり古い作りの粗末な部屋ーしかし、壁はとにかく頑強そうで、この部屋の唯一の出口につながる扉もまた分厚く、中の人間が簡単には脱出できないような作りになっているのが窺える。
「・・・って!?ここどこ!?」
ようやく、眠気から解放された頭を振りながら、真由美は起き上がろうとして・・・
「・・・って、ええ!?・・・何、この恰好・・・なんであたし、裸で・・・」
真由美は全裸だった。そのうえ、両手が後ろ手に縛られ、両足もまた拘束されていたのだ。
つまりは、全く身動きが取れない状況だったのだ。
「な、何なのよ・・・いやあ、誰か、誰か助けて!!」
真由美は恐怖のあまり、半狂乱に近い状態で周囲に助けを求めた。尤も、その声が届くはずもなくーある一人を除いては、だがー
「フフフ、ようやくお目ざめのようね、川澄さん」
「・・・え?」
部屋の奥の暗がりから、勅使河原の声が響いてきた。そして、従容とした足取りで、真由美が横たえられているベッドへと近づいてくる。
勅使河原もまた、裸だった。
「て、勅使河原さん・・・」
真由美が、嫌悪と怒りの混じった非難のまなざしを勅使河原へと向けた。先ほどまで、恐怖のあまり半狂乱になっていた彼女だったが、ここに勅使河原が姿を現したのを見て、どうやら怒りや嫌悪の方が勝ったようだった。
「・・・何のつもり?当然、これもあなたがやったんでしょ?」
鋭い非難のまなざしを向けられた勅使河原だったが、当の本人は涼し気な顔つきで、怜悧に輝く瞳を真由美に向けながら、
「その通りよ・・・あなたとは、一度裸のお付き合いをしたいと思っていたから」
「・・・ふざけないで!!」
真由美の一喝が、地下室の中に響き渡るーが、その声も部屋の外部に漏れることは一切ない。元々、収容者を尋問するために作られた部屋で、一切の物音を外部へと漏らさない作りとなっているからだ。
「あたしをこんな恰好にして、縛って・・・いったい何をしようっていうの?この変態!!」
真由美が勅使河原を糾弾するが、その様子は却って勅使河原の中の嗜虐心を煽るだけの結果となった。
「あら、変態だなんて、心外ね・・・私は、渡辺さんや小坂さんにしてあげられなかったことをこれからあなたにたっぷりとしてあげようと思っているだけだというのに」
勅使河原の口の端が歪んでいくーその表情に、おぞましさを感じる真由美。
ー間違いない、こいつは、この女はー
「・・・勅使河原さん、いや、勅使河原、アンタ、二人をいったいどうした?」
勅使河原は、真由美の問いかけに答えようともせず、うっすらと笑みを浮かべて、悠然とした態度で身動きがとれぬ真由美を見下ろしているだけだった。
「・・・答えろ、勅使河原!!いったい、アンタはあの二人をどうしたってんだ?何をしたんだ!?」
真由美が叫ぶーその叫びには、今しがた感じた勅使河原への恐怖を抑え込もうとする真由美の思惑が含まれていた。
「・・・あなたも、あの二人のもとへ行けるわよ、川澄さん」
勅使河原が、不意に顔を近づけてくる。その勅使河原の端正な顔立ちが、逆に今はとても恐ろしく、不気味なもののように感じられた。
作られた美貌ーそう表現しても当てはまるくらいに美しいが、どこか現実味がなく、それでいながら、それを見る者に戦慄を覚えさせるような、そんな容貌だったー
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