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第3章 虚ろなる人形
第89話 真由美の問いかけ
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「ねえ、勅使河原さん、今、少しいいかしら?」
放課後、勅使河原の席に、川澄真由美が訪れた。
「真理と明菜のことについてなんだけど・・・」
ーやはり、来たかー
真由美は、以前から勅使河原のことを胡乱な存在だと思っていた人物だ。当然ながら、二人の「失踪」について、何らかの形で関与していると思っているだろう。だからこそ、直接勅使河原に尋ねに来たーというわけだ。
「あら、川澄さん」
勅使河原は、他の少女たちと同じように接した。
「勅使河原さん、あなた、最近真理や明菜と一緒に帰ることが多かったわよね?それで、あなたなら、二人のことについて、何か知ってるんじゃないかと思ったんだけど・・・?」
「そうね、最近あの二人とは一緒に帰宅していたわ・・・だからこそ、私も心配しているのよ、川澄さん」
勅使河原は、心底心配しているかの表情を浮かべ、真由美の問いかけに答える。内心の動きを悟られないように取り繕うというのは、意外と大変だが、勅使河原にとってはもはや慣れたことでもあった。
「あの二人が失踪するなんて、私だって夢にも思わなかったわ・・・」
「・・・ふうん」
真由美は、あまり納得していないという顔で勅使河原を見つめている。
勅使河原が二人と最近帰宅することが多かったことに関しては、警察に事情を訊かれた時にも話している。もちろん、さも彼女たちの行方を気にしているかのように答えたーとはいえ、それでいつまでも欺けるとは思っていない。
「勅使河原さん・・・あなたの家って、結構大きいお屋敷だって、前に明菜から聞いたことがあるんだけど」
やはり、真由美は勅使河原のことを疑っている。
「・・・そうね」
「あなた、そんな大きなお屋敷に一人で暮らしているんでしょう?寂しくはないの?」
「いえ、今となっては慣れたものよ」
勅使河原の表情を読み解こうとでもしているのか、真由美の目がいささか細められる。
真由美は、どことなくボーイッシュな雰囲気が特徴の、美少女とまではいかないものの、これはこれで勅使河原好みの顔立ちをしている。そんな彼女の、こちらを睨みつけてくる表情もまた、勅使河原にとっては魅力的に思えた。
ーああ、この子も早く殺してみたいー
「・・・本当に、真理や明菜のこと知らないんだよね。あたしは気が付かなかったけど、彼女たち、疾走する前に様子がおかしかったとか、そんなことはなかった?」
「・・・特に変わったこともなく、いつも通りだったと思うわ」
「そう」
それから少しの間、勅使河原に疑惑の目を向けていた真由美だったが、その後ため息をつくと、
「後でいいけど、もし、彼女たちのことで、何か思い当たるようなことを思いだしたら、あたしにも教えてくれないかしら?」
「ええ、いいわよ。私だって、あの子たちが早く見つかってほしいとおもっているもの。何か気になるようなことを思いだしたら、真っ先にあなたにもお知らせするわね」
「・・・頼むわね、勅使河原さん」
真由美がそっけなく返事をし、そのまま背を向ける。
このまま背後から抱きついて、眠り針を真由美の首筋に立てるのはたやすいが、ここではまずい。後日、彼女を旧校舎近くまで呼び出してから、行為に及んだ方がいいだろう。
ーあなたも、すぐにお二人と再会できますよー
放課後、勅使河原の席に、川澄真由美が訪れた。
「真理と明菜のことについてなんだけど・・・」
ーやはり、来たかー
真由美は、以前から勅使河原のことを胡乱な存在だと思っていた人物だ。当然ながら、二人の「失踪」について、何らかの形で関与していると思っているだろう。だからこそ、直接勅使河原に尋ねに来たーというわけだ。
「あら、川澄さん」
勅使河原は、他の少女たちと同じように接した。
「勅使河原さん、あなた、最近真理や明菜と一緒に帰ることが多かったわよね?それで、あなたなら、二人のことについて、何か知ってるんじゃないかと思ったんだけど・・・?」
「そうね、最近あの二人とは一緒に帰宅していたわ・・・だからこそ、私も心配しているのよ、川澄さん」
勅使河原は、心底心配しているかの表情を浮かべ、真由美の問いかけに答える。内心の動きを悟られないように取り繕うというのは、意外と大変だが、勅使河原にとってはもはや慣れたことでもあった。
「あの二人が失踪するなんて、私だって夢にも思わなかったわ・・・」
「・・・ふうん」
真由美は、あまり納得していないという顔で勅使河原を見つめている。
勅使河原が二人と最近帰宅することが多かったことに関しては、警察に事情を訊かれた時にも話している。もちろん、さも彼女たちの行方を気にしているかのように答えたーとはいえ、それでいつまでも欺けるとは思っていない。
「勅使河原さん・・・あなたの家って、結構大きいお屋敷だって、前に明菜から聞いたことがあるんだけど」
やはり、真由美は勅使河原のことを疑っている。
「・・・そうね」
「あなた、そんな大きなお屋敷に一人で暮らしているんでしょう?寂しくはないの?」
「いえ、今となっては慣れたものよ」
勅使河原の表情を読み解こうとでもしているのか、真由美の目がいささか細められる。
真由美は、どことなくボーイッシュな雰囲気が特徴の、美少女とまではいかないものの、これはこれで勅使河原好みの顔立ちをしている。そんな彼女の、こちらを睨みつけてくる表情もまた、勅使河原にとっては魅力的に思えた。
ーああ、この子も早く殺してみたいー
「・・・本当に、真理や明菜のこと知らないんだよね。あたしは気が付かなかったけど、彼女たち、疾走する前に様子がおかしかったとか、そんなことはなかった?」
「・・・特に変わったこともなく、いつも通りだったと思うわ」
「そう」
それから少しの間、勅使河原に疑惑の目を向けていた真由美だったが、その後ため息をつくと、
「後でいいけど、もし、彼女たちのことで、何か思い当たるようなことを思いだしたら、あたしにも教えてくれないかしら?」
「ええ、いいわよ。私だって、あの子たちが早く見つかってほしいとおもっているもの。何か気になるようなことを思いだしたら、真っ先にあなたにもお知らせするわね」
「・・・頼むわね、勅使河原さん」
真由美がそっけなく返事をし、そのまま背を向ける。
このまま背後から抱きついて、眠り針を真由美の首筋に立てるのはたやすいが、ここではまずい。後日、彼女を旧校舎近くまで呼び出してから、行為に及んだ方がいいだろう。
ーあなたも、すぐにお二人と再会できますよー
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