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第3章 虚ろなる人形
第57話 黒い殺意をあなたに
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紗耶香と葉月が保健室へと向かった後ー。
「フフフ・・・あのお二人、いずれ戦うことになりそうですわね」
妖艶ーというよりは、見るものになんとも言えぬ不気味さを感じさせる笑みを浮かべ、長い黒髪の少女は今しがた出てきたばかりの校舎の方を窺った。
「あの銀髪のお嬢さんは少々厄介そうですけれど・・・天内葉月さんとおっしゃる方は、今度お会いした時には念入りに可愛がって差し上げますわ」
先ほど、葉月の秘所をまさぐった時に付着した彼女の愛液をなめとり、うっとりと頬を緩める勅使河原。
「あんなに可愛い子は、滅多におりませんしね」
接した時の口調や態度の変化からも、あの天内葉月という娘がどのようなものかわかる。
普段は強がっているようだが、実際にはひどく脆い。その脆さが、見事なまでに先ほどの一件で露呈してしまったのだ。
逆に、その後に現れた銀色の髪の少女の方は、そう簡単に勝てるような相手ではないだろう。彼女とは、自分と同じ匂いを感じることもあったが、おそらく相容れない存在だ。
「そう言えば」
勅使河原が、生前の記憶を思い出す。あの銀髪の少女は、どこかで見たことがある顔だった。あれは確かー。
「ああ、あの道場事件の犯人さんね」
思い出した。天元一刀流の道場にて、二人の妹弟子を殺害したという少女。しかも、その殺害方法は、現代社会とは思えないほど残忍なものだと報道され、国中がこの話題に釘付けとなった。
何せ、相手の首を真剣で刎ねたのである。しかも、殺された2人もかなりの美形だったということで、さらに話題は沸騰した。
さらに面白いのは、彼女の最期で、自分が殺害した少女の双子の弟の手により斬り殺されたというものだった。その場で仇を討たれたらしい。
「確か・・・一条紗耶香・・・というお名前だったわね」
首を刎ねるーこのアルカディア島に来る前に、既にリアル斬首を経験している人間などそんなにいるわけもない。
ー私を除いては
「さすがに、首を刎ねるだなんて、剣を持ったことのない私にはまねできませんわ・・・でも」
一陣の風に靡く黒髪を片手で抑えつつ、勅使河原は、まだ校舎にいるであろう紗耶香と葉月に向かって独り言ちた。
「私も、殺人は経験しておりましてよ」
そう、勅使河原も、このアルカディア島に来る前にーつまりは生前にー人を殺しているのだ、それも3人も。
「だから、あなたとは同じ匂いを感じたのね・・・紗耶香さん」
そして、紗耶香は多分勅使河原が引き起こした事件のことを知らないだろう。いや、紗耶香だけでなく、あの葉月とかいう少女も知らないようだった。
なぜなら、彼女たちは勅使河原の事件の前に死亡しているからだ。当然、自分たちの死後のことなど知る由もないだろう。
勅使河原は、3人の少女を絞殺した後、その首を切断し、自らのアトリエに冷凍保管した。紗耶香の事件に続き、この首なし死体事件も、世間を震撼させることとなる。
やがて、捜査線上に勅使河原マヤの存在が浮上し、逮捕された。
その後、医療少年院へと送られるはずだったのだがー。
「大会運営側の配慮により、自分がなぜ死んだのかははっきりとわからないのよね」
気が付けば、この島でこの大会に無理やり参加させられていたーが。
勅使河原にとっては、この島はむしろ天国のようなものだった。
ここでは、殺人は罪に問われることはない。それどころか、逆に相手の首を取ることこそが栄誉となるのだ。さらにはー。
「この島には、本当に美しい者達しかいない」
それも、勅使河原にとってはありがたいことだった。彼女が生前に殺した3人の少女は、決して不細工ではないのだが、かといって人目を惹くほどの美人というわけでもない。ランクとして例えるのなら、中の下~中の上くらいである。
やはり、これから自らが作り上げていく工芸品は美しくなければならないのだ。
「まっててね、天内さん・・・近いうちに、あなたの首をもらい受けるわ」
今はまだ、力を温存し、蓄える時期だ。狩りは、その時が来たら、でもいいはず。
勅使河原は、その長い黒髪を風に靡かせつつ、校舎に背を向け、住宅街へと足を向けた。
ー近くに獲物がいる気配があったからだー
「フフフ・・・あのお二人、いずれ戦うことになりそうですわね」
妖艶ーというよりは、見るものになんとも言えぬ不気味さを感じさせる笑みを浮かべ、長い黒髪の少女は今しがた出てきたばかりの校舎の方を窺った。
「あの銀髪のお嬢さんは少々厄介そうですけれど・・・天内葉月さんとおっしゃる方は、今度お会いした時には念入りに可愛がって差し上げますわ」
先ほど、葉月の秘所をまさぐった時に付着した彼女の愛液をなめとり、うっとりと頬を緩める勅使河原。
「あんなに可愛い子は、滅多におりませんしね」
接した時の口調や態度の変化からも、あの天内葉月という娘がどのようなものかわかる。
普段は強がっているようだが、実際にはひどく脆い。その脆さが、見事なまでに先ほどの一件で露呈してしまったのだ。
逆に、その後に現れた銀色の髪の少女の方は、そう簡単に勝てるような相手ではないだろう。彼女とは、自分と同じ匂いを感じることもあったが、おそらく相容れない存在だ。
「そう言えば」
勅使河原が、生前の記憶を思い出す。あの銀髪の少女は、どこかで見たことがある顔だった。あれは確かー。
「ああ、あの道場事件の犯人さんね」
思い出した。天元一刀流の道場にて、二人の妹弟子を殺害したという少女。しかも、その殺害方法は、現代社会とは思えないほど残忍なものだと報道され、国中がこの話題に釘付けとなった。
何せ、相手の首を真剣で刎ねたのである。しかも、殺された2人もかなりの美形だったということで、さらに話題は沸騰した。
さらに面白いのは、彼女の最期で、自分が殺害した少女の双子の弟の手により斬り殺されたというものだった。その場で仇を討たれたらしい。
「確か・・・一条紗耶香・・・というお名前だったわね」
首を刎ねるーこのアルカディア島に来る前に、既にリアル斬首を経験している人間などそんなにいるわけもない。
ー私を除いては
「さすがに、首を刎ねるだなんて、剣を持ったことのない私にはまねできませんわ・・・でも」
一陣の風に靡く黒髪を片手で抑えつつ、勅使河原は、まだ校舎にいるであろう紗耶香と葉月に向かって独り言ちた。
「私も、殺人は経験しておりましてよ」
そう、勅使河原も、このアルカディア島に来る前にーつまりは生前にー人を殺しているのだ、それも3人も。
「だから、あなたとは同じ匂いを感じたのね・・・紗耶香さん」
そして、紗耶香は多分勅使河原が引き起こした事件のことを知らないだろう。いや、紗耶香だけでなく、あの葉月とかいう少女も知らないようだった。
なぜなら、彼女たちは勅使河原の事件の前に死亡しているからだ。当然、自分たちの死後のことなど知る由もないだろう。
勅使河原は、3人の少女を絞殺した後、その首を切断し、自らのアトリエに冷凍保管した。紗耶香の事件に続き、この首なし死体事件も、世間を震撼させることとなる。
やがて、捜査線上に勅使河原マヤの存在が浮上し、逮捕された。
その後、医療少年院へと送られるはずだったのだがー。
「大会運営側の配慮により、自分がなぜ死んだのかははっきりとわからないのよね」
気が付けば、この島でこの大会に無理やり参加させられていたーが。
勅使河原にとっては、この島はむしろ天国のようなものだった。
ここでは、殺人は罪に問われることはない。それどころか、逆に相手の首を取ることこそが栄誉となるのだ。さらにはー。
「この島には、本当に美しい者達しかいない」
それも、勅使河原にとってはありがたいことだった。彼女が生前に殺した3人の少女は、決して不細工ではないのだが、かといって人目を惹くほどの美人というわけでもない。ランクとして例えるのなら、中の下~中の上くらいである。
やはり、これから自らが作り上げていく工芸品は美しくなければならないのだ。
「まっててね、天内さん・・・近いうちに、あなたの首をもらい受けるわ」
今はまだ、力を温存し、蓄える時期だ。狩りは、その時が来たら、でもいいはず。
勅使河原は、その長い黒髪を風に靡かせつつ、校舎に背を向け、住宅街へと足を向けた。
ー近くに獲物がいる気配があったからだー
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