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第2章 確かなもの
第52話 あり得ない・・・
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突如、学校の玄関口に現れた謎の少女・勅使河原マヤ。
ーあたしの背後をつくなんて・・・この女、見た目と違ってかなりの使い手のようっすねー
葉月自身も、自分の力量には自信がある。おそらく、全力を出せばこの目の前にいる女にだって、負けるようなことはないだろう。だがー。
「ふふふ・・・」
どことなく作り物めいた美貌を持つ勅使河原。その長い黒髪も、昔の日本人形を連想させるものだった。
ーまさにお人形さんのような存在ー
「あなた、お名前は?」
勅使河原が名前を尋ねてくる。妖艶な笑みを浮かべつつ、どことなく優雅さを保ちながら尋ねてくるその姿は、相手の拒絶を許さぬという有無を言わさぬ威圧感のようなものを放っていた。
「私の方は、今名乗ったわよ・・・次は、あなたの方ではないかしら」
少女が重ねて問いかけてくる。
葉月は、勅使河原を慎重に見定めながら、自分の名を名乗った。
「天内葉月」
「天内さんね・・・よろしく」
勅使河原が手を差し出してくる。その動作も優雅さを伴うもので、逆にそれが葉月の中の警戒心を刺激することとなった。
「何のつもりっすか?握手なんて・・・ここじゃあ、基本的には自分以外全て敵っすよ」
勅使河原の手を握り返すことなく、睨みつけたまま葉月は勅使河原から少し距離を取ろうとする。
「まあ、そんなに警戒なさらずに」
「・・・気配を断って人の背後を取ろうとするやつに、警戒するな、なんて言われてハイそうですかって従うバカがいると思うんすか?・・・アンタ、この学校を・・・あたしらの居場所を奪いに来たんすかね?」
「・・・先ほども言った通り、私自身はたまたまここを通りかかって、そして隠れ家にはちょうどいいかなと思ったから、ここに来ただけよ。そして、あなたに出くわした」
相も変わらず、余裕を見せつけるような笑みを浮かべながら、どこまで本気なのかよくわからない返答をする勅使河原。
「・・・ふざけないでほしいっすね・・・ならなんで、敢えて気配を消してあたしに近づいたんすか?明らかに、隙あらばやる気満々だったんじゃないっすかね?」
「あら、隙あらばやる気なら、あなたに気が付かれないうちに襲うと思うわよ。実際に、さっきまでのあなたが隙だらけだったのは確かだし」
勅使河原は、差し出した手をようやく引っ込める。さすがに、握手をこれ以上求めるのは無駄だと思ったのかーしかし、相変わらず、表情自体は変わらず、であった。
「あなたみたいな可愛らしい子なら、さぞかし襲いがいがありそうでしょうしね」
「・・・舐めないでほしいっすね・・・アンタ」
葉月が、一段と声を低くしてすごむ。彼女の直感が、舐められたらおしまいだと語っていたからだ。自分を弱く見せればスキを突かれる。
「このあたしはそうやすやすとは襲われないっすよ。逆に、あたしの方がアンタのことをレイプしてやってもいいくらいっす。アンタ、なかなかの美形だし、次の獲物としてはねらい目・・・って!」
ほんの一瞬だった。勅使河原は、一瞬で葉月との間合いを詰め、葉月の両手首を下駄箱に押さえつける形で、葉月を拘束したのだった。
「・・・な!?」
葉月の瞳が、驚愕に見開かれる。さっきといい、認めたくはないが、何が起こったのかきちんと把握することができなかった。ただ、気が付けば、今自分は勅使河原に両手首を押さえつけられ、下駄箱を背に拘束されているような形になっていたのだ。
「・・・アンタ、いったい何者っすか?」
葉月が、自らの狼狽を悟られないように、必死に表情を取り繕い、声を低くしながら、勅使河原に再度同じ問いかけをする。
「あら、私は先ほど名乗ったわよ、私の名前は勅使河原マヤ」
「・・・名前を聞いちゃいねえっす!」
いったい、こいつは何者なのかー。
ーあたしの背後をつくなんて・・・この女、見た目と違ってかなりの使い手のようっすねー
葉月自身も、自分の力量には自信がある。おそらく、全力を出せばこの目の前にいる女にだって、負けるようなことはないだろう。だがー。
「ふふふ・・・」
どことなく作り物めいた美貌を持つ勅使河原。その長い黒髪も、昔の日本人形を連想させるものだった。
ーまさにお人形さんのような存在ー
「あなた、お名前は?」
勅使河原が名前を尋ねてくる。妖艶な笑みを浮かべつつ、どことなく優雅さを保ちながら尋ねてくるその姿は、相手の拒絶を許さぬという有無を言わさぬ威圧感のようなものを放っていた。
「私の方は、今名乗ったわよ・・・次は、あなたの方ではないかしら」
少女が重ねて問いかけてくる。
葉月は、勅使河原を慎重に見定めながら、自分の名を名乗った。
「天内葉月」
「天内さんね・・・よろしく」
勅使河原が手を差し出してくる。その動作も優雅さを伴うもので、逆にそれが葉月の中の警戒心を刺激することとなった。
「何のつもりっすか?握手なんて・・・ここじゃあ、基本的には自分以外全て敵っすよ」
勅使河原の手を握り返すことなく、睨みつけたまま葉月は勅使河原から少し距離を取ろうとする。
「まあ、そんなに警戒なさらずに」
「・・・気配を断って人の背後を取ろうとするやつに、警戒するな、なんて言われてハイそうですかって従うバカがいると思うんすか?・・・アンタ、この学校を・・・あたしらの居場所を奪いに来たんすかね?」
「・・・先ほども言った通り、私自身はたまたまここを通りかかって、そして隠れ家にはちょうどいいかなと思ったから、ここに来ただけよ。そして、あなたに出くわした」
相も変わらず、余裕を見せつけるような笑みを浮かべながら、どこまで本気なのかよくわからない返答をする勅使河原。
「・・・ふざけないでほしいっすね・・・ならなんで、敢えて気配を消してあたしに近づいたんすか?明らかに、隙あらばやる気満々だったんじゃないっすかね?」
「あら、隙あらばやる気なら、あなたに気が付かれないうちに襲うと思うわよ。実際に、さっきまでのあなたが隙だらけだったのは確かだし」
勅使河原は、差し出した手をようやく引っ込める。さすがに、握手をこれ以上求めるのは無駄だと思ったのかーしかし、相変わらず、表情自体は変わらず、であった。
「あなたみたいな可愛らしい子なら、さぞかし襲いがいがありそうでしょうしね」
「・・・舐めないでほしいっすね・・・アンタ」
葉月が、一段と声を低くしてすごむ。彼女の直感が、舐められたらおしまいだと語っていたからだ。自分を弱く見せればスキを突かれる。
「このあたしはそうやすやすとは襲われないっすよ。逆に、あたしの方がアンタのことをレイプしてやってもいいくらいっす。アンタ、なかなかの美形だし、次の獲物としてはねらい目・・・って!」
ほんの一瞬だった。勅使河原は、一瞬で葉月との間合いを詰め、葉月の両手首を下駄箱に押さえつける形で、葉月を拘束したのだった。
「・・・な!?」
葉月の瞳が、驚愕に見開かれる。さっきといい、認めたくはないが、何が起こったのかきちんと把握することができなかった。ただ、気が付けば、今自分は勅使河原に両手首を押さえつけられ、下駄箱を背に拘束されているような形になっていたのだ。
「・・・アンタ、いったい何者っすか?」
葉月が、自らの狼狽を悟られないように、必死に表情を取り繕い、声を低くしながら、勅使河原に再度同じ問いかけをする。
「あら、私は先ほど名乗ったわよ、私の名前は勅使河原マヤ」
「・・・名前を聞いちゃいねえっす!」
いったい、こいつは何者なのかー。
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