百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
38 / 499
第2章 確かなもの

第38話 その表情が宿すもの

しおりを挟む
 氷上に指摘を受けた紗耶香が口角を釣り上げる。
 ーこの女は結構いい線行ってるなー
「まあ、かなり正解に近いとだけ言っておくよ」
 実際には「ほぼ」正解なのだが、見抜いたと思われるのは、さすがに悔しいので、そう言うことにしておく。
「ふふふ・・・」
 紗耶香の言葉に、なぜか含み笑いを返す氷上。
「何がおかしい・・・?」
「おかしいわけではないのよ、ただ・・・」
 紗耶香の問いかけに、氷上は相坂の首を見つめながら、
「もしあなたがこの子のお相手をしていたなら・・・とか、ついそう考えちゃって」
 テーブル上の相坂の首には「無念」の表情が浮かんでいた。
「負けず嫌いな子だったわよ・・・あたしとエッチしてた時も、戦ってた時も、ね」
 氷上は、相坂の髪を優しく撫でたーそれはまるで、愛しい我が子の髪を撫でてやるかのような仕草だった。
「本当のことを言うとね、この子は殺したくはなかった・・・でも、戦いには手を抜くつもりもなかったの。だから・・・」
「結果的には、より強いアンタの方が勝ってしまった、と」
「そう」
 少しの間、相坂の髪を撫でた後、今度は相坂の頬に手をあてがいながら、
「このまま、あたしの傍に置いておきたいのよね・・・彼女。できれば手放したくはない」
 そんな彼女の様子に、ふと紗耶香は一つの疑問が浮かんだ。
「あれ、さっきアンタはこいつのこと往生際が悪いとか、愚痴零してただろ?」
 ついでに言えば、紗耶香が相坂の首をいい表情だと評した時も、そんなことを言うのはあなたくらいよ、と返されたはずだ。
「そうね、表情は確かに私の好みじゃないんだけど・・・でも」
 氷上が相坂の首から手を離し、ため息交じりに紗耶香たちの方に向き直った。
「一度は交わった相手だから、できれば2人で生きたままこの家で暮らしたかったわ」

「ああ、それあたしもなんかわかりそうな気がするっす!」
 それまで黙って聞いていた葉月が横やりを入れてくる。
「おいおい、お前の場合は自分が生きたままこの島で遊び暮らすが狙いだろ?誰かと添い遂げるとか、そんな感性がお前にあるとは思えないね、あたしは」
「・・・先輩、相変わらず言葉に棘があるっすね・・・」
 紗耶香と葉月のやり取りを聞いて、クスっと笑う氷上。
「あなたたちなら、それもできるんじゃない?殺し合いにならない程度に抱き合うくらいなら」
「こいつとか?冗談・・・」
「ええ!?・・・先輩、あたしとエッチするの、いやっすか?」
「葉月、いいからお前は黙ってろ・・・」
 後ろで騒ぐ葉月を諫めながら、紗耶香はいずれ訪れるであろう自分たちの未来に思いを馳せた。
 最終的には葉月は紗耶香自身の手でその首級を上げることになるだろう。なんだかんだ言っても生前からの付き合いだ。可愛い後輩でもある以上、他のやつらに渡したくはない首である。
 尤も、葉月自身は何とかうまいこと大会運営側の手から逃れ、この島で狩りを楽しみながら、しかし優勝は目指さず生きながらえようとしているのだろうが・・・おそらくそれは無理だ。葉月がどうやってもそれは不可能だということに気が付いた時点で、紗耶香は葉月をレイプし、そして戦いの果てにその首を刎ねるつもりだった。
 ただ、その時が来るまでの時間稼ぎだけはしてやりたいとは思っている。なるべく長い時間、葉月が遊んでいられるよう、うまいこと立ち回る予定だ。
 大会運営側は、大会終了がいつなのか、驚くべきことだが、実のところ参加者たちには説明していない。そのことに何の狙いがあるのかも、もちろんわからなかった。
 したがって、その終了が、遥か先である場合もあるし、せいぜい2~3日後であったとしてもおかしくはなかったーまあ、あまり近日中というのは、さすがに無理があるかもしれないが。
「しばらくの間は、このノーパン娘の相手はしてやるつもりだけどな」
「ああもう、先輩、今日あたしがノーパンなのは先輩のせいなんすからね!!」
 ーまあ、しばらくの間はこいつの遊び相手にはなってやるかー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...