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第1章 開幕
第11話 想いを武器に・・・
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先に駆けだしたのは、洋子の方だった。
「はあぁぁ!!」
洋子自身には剣道の経験はない。当然ながら、竹刀すら持ったことがなかった。それなのに、なぜかその刀は、洋子の手に馴染んでいたのだ。まるで、最初から扱い方を知っていたかのような、不思議な感覚だったー。
「・・・!」
対する美奈も、基本的には洋子と同じだ。チャクラムなんて手にしたことがない。それなのに、それが投擲用の武器であることを理解していた。遠距離の相手を攻撃するのには適した武器だが、刀など、近接系の武器で間合いに入られると致命的である。なぜか、そのことも自然と理解できた。
洋子が早業で、美奈の首めがけて横なぎに刀を払うーもちろん、擬体破損率が100%に達しない限りは、首を切断することはおろか、相手の体に傷一つつけることは不可能だ。
だが、擬体の破損率は、それを纏う肉体の部位の影響をもろに受ける。例えば、擬体を纏った状態で心臓をえぐられた場合、確かに擬体がダメージを肩代わりするものの、人間に例えれば即死ーつまりは、その時点で擬体破損率は100%確定となるのだ。擬体がはがされ、生身の状態となってしまう。
そして、擬体が剝がれると同時に、敗北者は武器も失う。つまり、その場に残されるのは、ただ首を刎ねられるのを待つばかりの敗北者と、もはや首を刎ねること以外に用途がない武器を構えた勝利者ーあとは戦いをジャッジする判定者のみとなる。
洋子の斬撃を、後方に跳び退んでかろうじてかわす美奈。わずかに刀の端が擬体の一部に触れ、そこから微粒子が漏れ出たが、擬体破損率にはほとんど影響がないようだった。おそらく1%にも満たない程度の破損率だっただろう。
後方へ飛び回避する一方で、美奈も負けじと左手のチャクラムを放つ。洋子のように、一撃必殺を狙おうとはせず、あくまで牽制のつもりで放った一撃だ。洋子も、それ以上は深追いしようとせず、飛来するチャクラムをかろうじて回避しながら、美奈と距離との距離を保つ。
本当なら、一気に間合いを詰めたいところだが、先走っても失敗する可能性が高い。それに、今の一撃で、美奈に自分の瞬発力がどのくらいのものかも悟られてしまった。
「・・・ふーん、勘がいいじゃん、美奈」
洋子が、刀の背を肩に預けながら、
「今の一撃で、擬体を壊してやろうと思ったのに」
速攻で決めるーつもりが、予想外に美奈の反能速度が高く、失敗した形ではあるーが、洋子自身はそれでもまだ余裕の笑みを浮かべている。いや、余裕というより、美奈とやり合うのが楽しくて仕方がないといった、どこかいたずら小僧を彷彿とさせる微笑。お互いの命を懸けた戦いであり、先ほどは体を預け合った美奈とは戦いたくないとさえ言い切ったはずなのに、今は違った。なんとも言えぬ高揚感が、さらなる緊張を求め、洋子の体を支配しようとする。彼女の体に纏わりつく擬体も、より一層その光度を増しているようにも見えた。
「そう簡単に終わったら、アンタだって心残りでしょう?洋子」
対する美奈も、洋子と同じくテンションが上がっているーそれが擬体の光度の強さにもよく表れていた。
「これから、どちらかの首が飛ぶのよ・・・ならどっちが勝っても負けても後悔しないよう、めいっぱいやらなくちゃ」
美奈が、今度は右手のチャクラムを投擲する。擬体しか切断できない武器のはずだが、まるで空気を切り裂くかのような鋭い音とともに、洋子へと迫る。
「・・・!!」
洋子が刀でチャクラムを弾く。だが、美奈の左手にはもう一方のチャクラムがまだ残っていた。弾かれたチャクラムと入れ違いになる形で、洋子へと迫るもう片方のチャクラムーその一方で、弾かれた方も主の下へと帰っていくーおそらく、この武器は主の意志である程度はその方向や動きを制御できるのかもしれない。
「簡単には近寄らせないよ・・・!」
洋子のような近接系の武器を持つ相手は、可能な限り距離を取りながら、相手の消耗を誘い、そしてミスを誘発させるのが有効だ。したがって、しばらくの間は今のまま洋子の動きを止めて、釘付けにー。
「・・・そうはいかないよ!!」
洋子の刀から、擬体の微粒子が放出される。まるで、刀そのものが長くような錯覚を、一瞬だが覚える美奈。
「はああ!!」
その隙をついて、再び、洋子が駆け出した。
「はあぁぁ!!」
洋子自身には剣道の経験はない。当然ながら、竹刀すら持ったことがなかった。それなのに、なぜかその刀は、洋子の手に馴染んでいたのだ。まるで、最初から扱い方を知っていたかのような、不思議な感覚だったー。
「・・・!」
対する美奈も、基本的には洋子と同じだ。チャクラムなんて手にしたことがない。それなのに、それが投擲用の武器であることを理解していた。遠距離の相手を攻撃するのには適した武器だが、刀など、近接系の武器で間合いに入られると致命的である。なぜか、そのことも自然と理解できた。
洋子が早業で、美奈の首めがけて横なぎに刀を払うーもちろん、擬体破損率が100%に達しない限りは、首を切断することはおろか、相手の体に傷一つつけることは不可能だ。
だが、擬体の破損率は、それを纏う肉体の部位の影響をもろに受ける。例えば、擬体を纏った状態で心臓をえぐられた場合、確かに擬体がダメージを肩代わりするものの、人間に例えれば即死ーつまりは、その時点で擬体破損率は100%確定となるのだ。擬体がはがされ、生身の状態となってしまう。
そして、擬体が剝がれると同時に、敗北者は武器も失う。つまり、その場に残されるのは、ただ首を刎ねられるのを待つばかりの敗北者と、もはや首を刎ねること以外に用途がない武器を構えた勝利者ーあとは戦いをジャッジする判定者のみとなる。
洋子の斬撃を、後方に跳び退んでかろうじてかわす美奈。わずかに刀の端が擬体の一部に触れ、そこから微粒子が漏れ出たが、擬体破損率にはほとんど影響がないようだった。おそらく1%にも満たない程度の破損率だっただろう。
後方へ飛び回避する一方で、美奈も負けじと左手のチャクラムを放つ。洋子のように、一撃必殺を狙おうとはせず、あくまで牽制のつもりで放った一撃だ。洋子も、それ以上は深追いしようとせず、飛来するチャクラムをかろうじて回避しながら、美奈と距離との距離を保つ。
本当なら、一気に間合いを詰めたいところだが、先走っても失敗する可能性が高い。それに、今の一撃で、美奈に自分の瞬発力がどのくらいのものかも悟られてしまった。
「・・・ふーん、勘がいいじゃん、美奈」
洋子が、刀の背を肩に預けながら、
「今の一撃で、擬体を壊してやろうと思ったのに」
速攻で決めるーつもりが、予想外に美奈の反能速度が高く、失敗した形ではあるーが、洋子自身はそれでもまだ余裕の笑みを浮かべている。いや、余裕というより、美奈とやり合うのが楽しくて仕方がないといった、どこかいたずら小僧を彷彿とさせる微笑。お互いの命を懸けた戦いであり、先ほどは体を預け合った美奈とは戦いたくないとさえ言い切ったはずなのに、今は違った。なんとも言えぬ高揚感が、さらなる緊張を求め、洋子の体を支配しようとする。彼女の体に纏わりつく擬体も、より一層その光度を増しているようにも見えた。
「そう簡単に終わったら、アンタだって心残りでしょう?洋子」
対する美奈も、洋子と同じくテンションが上がっているーそれが擬体の光度の強さにもよく表れていた。
「これから、どちらかの首が飛ぶのよ・・・ならどっちが勝っても負けても後悔しないよう、めいっぱいやらなくちゃ」
美奈が、今度は右手のチャクラムを投擲する。擬体しか切断できない武器のはずだが、まるで空気を切り裂くかのような鋭い音とともに、洋子へと迫る。
「・・・!!」
洋子が刀でチャクラムを弾く。だが、美奈の左手にはもう一方のチャクラムがまだ残っていた。弾かれたチャクラムと入れ違いになる形で、洋子へと迫るもう片方のチャクラムーその一方で、弾かれた方も主の下へと帰っていくーおそらく、この武器は主の意志である程度はその方向や動きを制御できるのかもしれない。
「簡単には近寄らせないよ・・・!」
洋子のような近接系の武器を持つ相手は、可能な限り距離を取りながら、相手の消耗を誘い、そしてミスを誘発させるのが有効だ。したがって、しばらくの間は今のまま洋子の動きを止めて、釘付けにー。
「・・・そうはいかないよ!!」
洋子の刀から、擬体の微粒子が放出される。まるで、刀そのものが長くような錯覚を、一瞬だが覚える美奈。
「はああ!!」
その隙をついて、再び、洋子が駆け出した。
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