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第1章 開幕

第10話 その首をかけて・・・

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「天童高校2年、荒垣洋子、東第一高校2年、川村美奈、それぞれの生体反応を確認・・・擬体フィールドの展開も確認しました」
「・・・!?」
 向かい合った二人に、突如頭上から機械的な声がかかった。その声のした方を見上げると、そこにはレンズが搭載されたバスケットボールくらいの大きさの球体のようなものが浮かんでいた。
「なんだ、こいつは・・・?」
 何らかのドローンのような物なのだろうか・・・どういう原理で浮かんでいるのかはいまいちよくわからない。バスケットボールくらいの大きさで、まるで風船のように浮かんでいるように見える。一方で、その中央にレンズのようなものが搭載されているのも確認できた。
 おそらく、今から二人が戦うのを、高みの見物しているあの連中のものだろう。
「・・・高みの見物でのぞき見か・・・いい趣味してるよな、この大会の運営側は」
「・・・双方の擬体フィールドを確認・・・これより、荒垣洋子、川村美奈、両者の戦いを開始します」
 おそらく、この球体は、二人の戦いのジャッジー要するに、審判のようなものなのだろう。一応、フェアな基準で双方の戦いを監視するーというわけだ。
「こいつが審判・・・そして、あのレンズで動画撮影して、あたしらを見てるやつらがいるってことなんだろうな・・・」
「腹が立つけど、ぶっ壊しちゃまずいわよね」
「気持ちはわかるけど、多分それはまずいし、そもそも壊せないよ、あたしらには。あたしらの武器は擬体を斬るか首を刎ねるかしかできないんだから」
「全部あいつらの掌のうちってわけね・・・本当に腹立たしい」
 二人が鋭く睨みつけるが、当の球体の方は文字通り機械的に戦闘開始を宣言し、早く戦闘行為に移行するよう促すだけであった。
「両者、戦闘態勢に移行後、速やかに戦闘行為を実施してください」
「・・・まあ、こんなのに腹を立てるだけ時間の無駄か・・・美奈、そろそろ始めるか」
「ええ、いつでも」
 謎の球体の出現に、出鼻をくじかれた格好となったが、気を取り直して改めて向かい合う二人だった。

ーー

「おお、いよいよ朱雀のグループで戦いが始まるようだよ」
 大会の開会式も終え、名目上は「理事長室」になっている部屋のさらに隠された奥の部屋で、数多くのモニターの中、その一つに、ちょうど今しがた擬体を纏い、戦闘行為に移行しようとしている二人の少女の姿が捉えられていた。
 そのモニターに目をやり、満足そうに独り言ちる一人のー青年?いや女性・・・?声音もまた、男性なのか女性なのか判断しづらい。
 相変わらず、黒のローブとフードに全身や顔を覆われ、その姿は隠されたままの人物ー結城司が、傍らに立つ相棒の来栖に、件のモニターを見るように促した。
「朱雀の・・・神社か。これはまたずいぶんと飛ばされた連中みたいだな・・・」
 顎に手を当て、来栖は映像の中の少女たちの姿を確認する。
「転送システムの見直しも、した方がいいかもしれんな・・・一か所に集まりすぎるのもよくないが、離れすぎるのも問題だ・・・ペナルティの問題もあるが、できれば速やかなデータ収集のため、もう少し街中に転送できるようにしといたほうがいいだろう」
 来栖の生真面目な言葉に、司はため息をつきながら、
「今はそんなのいいよ・・・それより、今大会の初の殺し合いが始まるんだ・・・今回はどれだけのレベルに達しているのか、さっそく見届けようよ」
「やれやれ・・・」
 既に観戦する気満々の司に半ば呆れながらも付き合う来栖。
「荒垣ーこちらは刀使いか・・・そしてツインテールの・・・川村とか言ったか、こっちはチャクラムとは、これまた変わった獲物を扱うみたいだな」
「チャクラムは投擲用の武器・・・しかも両手持ちだから、遠距離主体で行くなら、川村の方が有利だね・・・ただ、間合いに入られたら荒垣の刀は強いだろう。来栖、どっちに賭ける?」
「我々自身の賭けは禁止されているぞ、司。賭けが許されるのは、この戦いを見物している金持ち連中だけだ」
 二人の会話の合間にも、洋子と美奈が少しずつ距離を詰め始める。お互い、どっちが先に仕掛けるか・・・。
「・・・!始まった・・・」
 先に仕掛けたのは、洋子の方だった。
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