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第1章 開幕

第4話 グループ分け

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 長い開会式が終わり、参加者たちは4つのグループーそれぞれ玄武、白虎、青龍、朱雀ーに分けられることとなった。
 大会運営側の説明によると、この選別は全くのランダムであるらしいが、その話を鵜吞みにする者は少なかった。

「・・・鏡香とははぐれちまったか・・・」
 青龍グループに配属された薬師寺咲那が、玄武グループへと移った和泉鏡香の方へと目を向ける。鏡香もこちらに気が付いて、軽く頷いた。その表情には、いささか寂寥感が漂っていた。
 薬師寺咲那と鏡香は、今までであれば「友達以上恋人未満」の関係であった。だが、この大会へ参加することが決まり、ある決意が二人に芽生えていた。
 他のやつらにはどちらの首もとらせないー。
 他人の手にかけられるくらいなら、自分の手で相手を討つー。
 であるからこそ、咲那も鏡香も、二人同じグループになることを望んでいた。真っ先に戦い、そしてお互いを討つためだった。だが、現実はそうそう、二人の思い通りになるわけではない。
「さっき、あの事務屋が話してたな・・・グループ内で協力し合うも殺し合うも自由だと」
 ただし、ペナルティのことも考えなければならない。仮に、現グループ内で一時的な協力体制をとることができたとしても、長期間性行為や戦闘行為を行わなかった参加者は、運営側から制裁を科せられる。ペナルティポイントの状況にもよるが、火刑か水責めである。
 言うまでもなく、どちらとも斬首よりもはるかに苦痛は大きいだろう。
 大会運営側は、開会式が始まる以前に、前大会での違反者を処刑する映像を参加者一同に視聴させた。
 効果は、抜群だった。
 人間において、一番苦しい死にざまは窒息死だと言われている。水責めは当然のこと、実は火刑もその直接の死因となるのは窒息死なのだ。周りの酸素が燃焼のために費やされるため、業火の熱に苦しむだけでなく呼吸困難の果てに死に至るのである。水責めは、苦痛だけでなく、あることが精神面で少女たちにとって受け入れがたいものだった。呼吸困難の果てに垂れ流す汚物が水中の映像でも確認できたのだった。少女たちにとっては絶対に人に見られたくないものだったのは言うまでもないだろう。
 この二つの刑罰に比べれば、まだしも斬首の方が苦痛は少なかった。斬られた直後の生首に意識が残っているのかという問題もあるが、おそらく意識が仮に残っていたとしても、それは火刑や水責めに比べれば一瞬のことで、しかも確実に死に至れる。
 少女たちが、処罰よりも戦いを選ぶのも無理からぬことである。しかも、もし優勝すれば、自分は生きて出られる可能性も残されている。少女たちの取る選択肢はおのずと限られたものとなっていた。
 果たして、グループ内での協力はどこまで可能なのかー結局、鏡香のいるグループまでたどり着くためには、自分が勝ち進めていかなければならないのではないか。
「結局は、自分だけしか頼れねえ戦いってわけか・・・」
 鏡香に頷き返しながら、
「鏡香、頼むから、あたし以外のやつにはやられないでくれよ・・・」
 と、咲那は願いを込めて独り言ちていた。
 
「咲那さんとの約束を果たすためにも、なんとしてもその時まで生き残らなくてはいけませんね・・・」
 同じグループの面々を軽く見まわし、表情を引き締める鏡香。彼女は今、玄武グループに所属している。
 当然ながら、自分以外の人間は全て敵ーしかし、大会運営側は「一時的な協力も可能」と言っていた。
 とはいえ、戦闘行為が長期間にわたり行われなければ、残酷な処罰も待っている。当然、他の参加者たちもそれはわかっているから、否が応でも戦いには巻き込まれるだろう。
 もちろん、敵は同じグループの少女ばかりではない。先ほど新たに説明が追加されたのだが、一応グループごとに地域は割り当てられているものの、それをまたぐことになったとしても特に問題はないというのが運営側の説明だった。
 要は、通常時でも他陣営の少女とやり合う機会は巡ってくるということになる。
 咲那と戦うために、何人の少女と戦うことになるのか、そして、どれだけ血で汚すことになるというのか。
「咲那さん、どうか、私との約束を果たす時まではご無事で」
 豊満な胸元に拳を当て、祈るような気持ちで咲那を見つめ返す鏡香だった。

「・・・うーむ、我が愛しの妹弟子は、どうやら別チームになっちゃったようだねえ」
 白虎グループの中、陽光を浴びて銀色に輝く長い髪を風に靡かせつつ、美少女ぞろいの本大会においてもひときわ目立つ少女が独り言ちた。
 その妹弟子とは、「死ぬ」前には同じ剣術の道場に通っていた少女のことで、どうやら同じグループにはいなかったようだ。
「・・・まあ、あいつ以外にも摘まめそうな可愛い子はたくさんいるからね、ここは」
 自分の周囲を見回して、改めてその「レベルの高さ」に満足げに頬を緩める少女。
 彼女の名前は一条紗耶香という。
 紗耶香は、辺りを見回して、ふと傍らで会話している二人の少女に目を向けた。
「ほほう・・・あの子は私のお気に入りになりそうだね」
 紗耶香の視線の先にいるのは、二人のうち、特にその豊満なバストが人目を惹く美しい少女の方で、赤毛に近い髪は伸ばされてはいるものの、その先端はことごとくカールしており、それがまたこの少女を年齢よりも少し幼げに見せていた。
 その彼女の印象を一言で言えばー。
「まあ、胸に頭の養分まで吸い取られていそうな馬鹿そうな子ってところかな」
 紗耶香にとってはねらい目となる少女だった。
「やりがいはありそうだ・・・あいつの前に、少し遊んじゃおうかな」
 少女の胸元に目を向けつつ、満足げに鼻を鳴らす紗耶香。
「この大会では、強姦、和姦は一切問わないはず。なら、開幕早々襲っちゃっても別に問題ないか」
 メインディッシュである妹弟子の前に、まずはこの少女からやる。
 犯る、そして、殺るー。
「待ってなよ・・・君とはすぐに遊んでやるからさ」
 さっそく見つけた獲物に対し、人差し指を突きつけ、そしてー
「BANG!」

「・・・?」
 赤毛の少女ー彩木穂乃果は、誰かの強い視線を感じ、思わず振り返った。
 だが、その視線の先にはもはや誰もいない。
「・・・どうしたの、穂乃果」
 ショートカットの少女が、穂乃果に尋ねてくる。
「ん・・・ええと、誰かに見られていたような気がしたんだけど・・・」
 きょろきょろと周囲を見回すが、もはや先ほどのような強い気配は感じない。
「ごめん、気のせいだったみたい」
 幼馴染みの方を振り返り、再び会話に戻ろうとする。
「明子・・・私はできることならあなたとは戦いたくないけれど」
 家が隣同士ということもあり、家族ぐるみでの付き合いもあった二人。当然、本音を言えば幼馴染みと命がけの戦いなどしたくはないーが。
「でも、他の誰かに渡したくない・・・あなたのことを」
「それは私も同じだよ、穂乃果」
 ボーイッシュなショートカットの少女は小川明子という。残念ながら穂乃果ほどのスタイルは誇ってはいないものの、それでも均整のとれた体は、逆に魅力的に映る。穂乃果とは異なるタイプの美少女である。
「幸い、同じグループになってよかったと思ってる。穂乃果が他のやつらとやる場面を思い浮かべるのは嫌だからね」
「大会が始まったら、真っ先にあなたの場所に行くから」
「もちろん、私も待ってるよ、穂乃果」
 二人の少女は、お互いに向き合い、手を絡ませながら、改めて誓い合ったのだった。

「もう間もなく、大会が始まります。参加者は、それぞれのグループの割り当て地域まで移動し、合図があるまで待機してください」
 運営側のスタッフの説明も終わり、いよいよバトルロワイヤルが開始されるー果たして、最後まで生き残ることができるのは、いったい誰なのかー。



 

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