テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
448 / 464

日向荘にて(第19話)

しおりを挟む
 日向荘の中庭に置いてあった庭石を無残にも打ち砕いた憤ドラゴラー。

 対する早苗も、その圧倒的なパワーを目の当たりにして、さすがに緊張を隠せない様子だった。

「うーん、あの体当たりをまともに受けちゃうと、私もぺしゃんこだねぇ~」

 口調こそ間延びしているが、彼女なりには真剣であるー周囲にはそうは見えないかもしれないが。

「ふっふっふ、ぺしゃんこどころか、粉々でっせ、扇女!!」

 憤ドラゴラが纏う気が、一段と濃くなっていくー。

「それにしても・・・さっきまでおとなしく捕まっていた君が、どうやってそんな力を手に入れたのかな~?」

 それは杏里も気にはなっていた。訓練中のニャンドラゴラには全く力がないように思われたからだ。

 いや、思われたーというよりも、実際に力はなかったはずなのだ。そうでなければ、おとなしく木に吊るされるなんてこともなかっただろう。

「それを知りたければ、見事あっしを倒してみせることでやんすね、扇女!!」

 早苗の疑問には直接答えず、再び突進してくる憤ドラゴラ。相変わらず、その軌道は見切りやすいが、ただ、確かに力は半端なく、まともに食らえばひとたまりもない。

 さらには、これ以上日向荘にある物を壊されるわけにもいかない。

 早苗は、ふうう、とため息をついてから、

「仕方ないねぇ~ここからは本気で行くよ!!」

 言うが早いか、口元を隠すように構えていた鉄扇を突然跳ね上げるかのように、頭上に振り上げる早苗。それに合わせる形で、憤ドラゴラに対し竜巻が襲い掛かった。

「むむ、これは・・・」

「見ての通り、風属性の魔法だよぉ。君は、この竜巻を乗り越えられるかな?」

 早苗が風属性の魔法で竜巻を作り出し、突進してくる憤ドラゴラに対して一撃を浴びせたのだ。

 ーしかし。

「ふふふ・・・この程度で、あっしの突進を止められるとでも思っていやがるんですかね・・・全く、これだから、小娘は・・・」

 竜巻の影響もあって、多少移動速度は落ちたものの、早苗に近づいてきているのは変わらない。このままだと、竜巻を乗り越えてそのまま早苗に突撃してしまうー。

 その時、早苗がふっと笑みを浮かべた。彼女特有の、余裕を見せる時の笑みであった。

「甘いよ、憤ドラゴラ君・・・単に力だけじゃ、この私を倒すことはできないよぉ~」

「な、何ですと!!生意気な小娘でやんすね!!ならば、自分が追いつめられているということを自覚させてやるでやんす」

 憤ドラゴラの気迫は凄まじい。どうやら、彼は本気で早苗を倒しにかかってきているようだ。

 だが、それでも、早苗は余裕の笑みを絶やすことはなかったー。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパー忍者・タカシの大冒険

Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...