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日向荘にて(第16話)

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 その時、杏里たちの背後に、さっきまで縄に縛られていたはずのニャンドラゴラが姿を現した。

「ふっふっふ・・・」

 ・・・しかも、なぜか不敵な笑みまで浮かべているではないか!

「ああ、いた~」

「ニャンドラゴラさん、今までどこに?」

 背後に突然現れたニャンドラゴラに驚愕する二人。当のニャンドラゴラはというと、

「姐さん、あっしはもう、ただ嬲られるだけの存在じゃあありやせんぜ」

 ニャンドラゴラのーやたらに細い糸目ーがキラーンと光った・・・ような気がする。

「おお、ずいぶんと強気だね~ニャンドラゴラ君」

 やたらと態度がでかくなっているニャンドラゴラだったが、早苗は今までと全く変わった様子もなく彼と接している。杏里だけが、ニャンドラゴラの放つ異様な気に圧倒されていた。

「さ、早苗さん・・・何か、ニャンドラゴラさんの様子が、かなり変ですよ・・・さっきまでとは感じる魔力の波動の桁が違うというか・・・」

 杏里の指摘に、さすがの早苗も少しは緊張感が出て来たらしい。さっきよりは顔を引き締めてニャンドラゴラを見据えた。

「うーん、確かに、杏里ちゃんの言うとおりだね~。これは・・・さすがにちょっと本気で折檻しないと駄目なタイプなのかな?」

 折檻という言葉とともに、早苗は一瞬の早業で鉄扇を取り出した。いうまでもなく、既に早苗は臨戦態勢に入ったのだった。

「杏里ちゃん・・・危険だから下がってて」

 ニャンドラゴラが放つ風圧が、だんだん強くなるにつれ、早苗の口調にも段々真剣さが増してくるーもっとも、どこか間延びした口調は相変わらずのことではあったが、これは元々の彼女の喋り方なので、すぐに変化するというものでもないのだが。

「早苗さん・・・お一人で大丈夫ですか?」

 杏里が心配そうに尋ねてくるが、当の早苗自身はうっすらと微笑を浮かべながら、

「大丈夫だよ~杏里ちゃん。ニャンドラゴラ君の扱いについては、他の誰よりも私がよくわかっているから、何も心配はいらないよ~。ただ、いざという時に、後ろから援護してくれると助かるかなぁ」

 どうやら、この戦いは、杏里の訓練も兼ねているようだった。杏里の治癒術を遠距離にまで影響を及ぼすレベルまで引き上げるという目標に、確かに合致していると言えばそうだろう。

「・・・わかりました、早苗さん。私も背後から早苗さんの援護に回ります。ただ・・・気を付けてくださいね、私はまだ治癒術の遠距離化をうまくできるわけではありませんので」

 早苗は、そんな杏里に対して軽くウィンクすると、

「もちろん、そのための訓練でもあるんだよ、このは」

 そして、ニャンドラゴラへと向き直ったー。
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