テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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咲那と鏡香(第11話)

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 焦る気持ちを落ち着けるため、蒼穹の空へと視線を向けていた咲那と鏡香ー。

 ふと、その視線の先に、何やら黒い点のようなものが見えた。

「・・・あれは・・・」

「はぐれ害蟲、といったところでしょうか」

 遥か彼方の黒い点ーそれは、害蟲の個体だった。

「発している魔力の波動から察するに、大体B級クラス・・・といったところでしょうか」

 鏡香が、こちらに向かってくる害蟲の個体を注視しながら、その強さを推し量った。

「ちょうどいいじゃねえか、あの低級女神と言い、マッパ生活と言い、もううんざりしてたところなんだ」

 咲那が、こちらに突っ込んで来る害蟲を睨みつけながら、しかしどこか楽しそうに口角を釣り上げて、エクセリオンを構えた。

「憂さ晴らしにはうってつけってところだな・・・鏡香、こいつはあたし一人で十分だ」

「そうですね・・・ここは咲那さんにお任せしようかしら」

 鏡香は、穏やかな笑みを浮かべつつ、しかし目元だけは涼やかな様子で咲那に応じた。

 このレベルの相手ならば、チームマスターの鏡香自身が出向くまでもないーそれに、咲那もここ2日間は色々あってストレスが溜まっているようだし、確かに「憂さ晴らし」も必要だろう。

「この発着場に何らかの被害があれば、それだけで船が出るのが遅れちまうからな・・・手っ取り早くけりをつけるぞ!」

 害蟲が次第にこちらに接近してくる。まるでトンボのような透明な翅と竜によく似た頭部をもつ害蟲だった。B級クラスとは言え、実際にはC級に近いレベルだろう。亜人種型デミヒューマンタイプとは比べるべくもない相手だった。

 彼我の実力差もわからないのか、そのままの勢いで咲那と鏡香めがけて突っ込んで来る害蟲。それを・・・咲那が迎え撃つ!

「消えやがれ、虫けら風情が!!」

ーー

 咲那と害蟲との戦いが始まった。さすがに、この浮遊小島で依頼で倒した個体よりは手ごわそうだが、今の咲那にとっては敵ではなかった。

「がぁぁ!!」

 害蟲が、口から火球を吐き出してくる。それを、咲那のエクセリオンが切り裂いた。

「こんなチンケな火花じゃあ、あたしらに傷一つ付けられねえぜ」

 自分の攻撃が無効化されたことに怒りを感じたのか、害蟲は耳障りな雄叫びを上げながら、でたらめに火球を吐き散らした。複数の火球が、発着場の地面に向けて放たれる。

「おおっと、いけねえ!!」

 咲那が、エクセリオンに風属性の魔法を纏わせる。そして、エクセリオンを横なぎにして一度に複数の火球をかき消した。

「ここ壊されると、船に影響が出るんだよな・・・手間はかけられねえ、一気に行くぞ!!」

 弱い個体とは言え、攻撃は本物ー当然ながら、発着場に被害が出れば、次の便に遅れが生じてモリガンの待つ浮遊大陸まで行けなくなってしまう。

 咲那が害蟲めがけて疾走する。このまま一気に害蟲を一刀両断にするつもりだった。

 だがー。

 害蟲が透明な翅を激しく震わせた。

「!!」

「・・・かまいたち・・・ですね」

 咲那が火球を竜巻で消し去ったのを見てか、害蟲の方もかまいたちで反撃をしてきたのだ。

「あぶねえ!!」

 放たれたかまいたちは、発着場のアスファルトの表面を削り取っていた。穿たれた跡を見ても、決して侮れない威力があることがわかる。人間がまともに食らえばひとたまりもない。

「この野郎・・・やるじゃねえか」

 咲那が、さも面白そうだといった表情で、害蟲を睨んだー。
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