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咲那と鏡香(第10話)

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 浮遊小島にある唯一の飛空船発着場まで訪れた咲那と鏡香ー。

「しっかし、わかっちゃいたけど、ただ待つだけしかないっていうのもやっぱ落ち着かねえもんだな・・・」

 後頭部で両手を組みながら、咲那がぼやいた。

「まあ仕方がありませんよ・・・あのヴァルキリーの手は借りたくはなかったですし・・・それに焦っても始まりませんよ。私たちが行くまで、モリガンちゃんが無事でいることを信じるのみです」

「・・・そうだな」

 それにしても・・・と咲那は少し考えを巡らせた。

 なぜあの浮遊大陸に複数の勢力が入り込んでいるんだ?いったいそいつらは何が目的なんだ?

 疑問は次々に出てくるが、今のところわからないことだらけだった。

「悠久王国に冥府・・・それに、おそらくだが教会の連中か・・・その他の勢力も入り込んでいるみたいな感じだったな、あの低級女神の口ぶりは」

「あの浮遊大陸に、いったい何があるんでしょうか・・・?他の大陸と比べても、さして大きなわけでもないし特に重要な何かがあるとも思えないのですが・・・」

「まあ、それも含めて確認する必要はあるだろ」

 咲那は、後頭部で組んでいた両手を広げて、今度はうーんと背伸びをし始めた。

「モリガンを救出したら、なるべく冥府の連中には手を出さず、それとなくあの浮遊大陸の状況を探る・・・まあ、こんなところか」

「そうですね・・・もちろん、モリガンちゃんの無事を確認するのが最重要ですが、あの浮遊大陸の状況を確認して、カイトさんや水無さんにそれとなくお知らせしないといけませんからね」

「特に、水無にとっては故郷だからな・・・肉親や友人の無事も確認しておいた方がいいかもしれねえ」

 ふと、咲那は発着場の時刻表を再確認する。時刻自体は先ほど確認してわかってはいたものの、どうしてもそちらに目が行ってしまうのだった。

 ここから、惑星Σ-11行の便が出るのはあと2時間後となっている。1分でも惜しい状況だが、文句を言っても始まらない。

 浮遊小島から見上げる蒼穹の空も、この状況下ではゆっくりと眺める気にもなれなかった。

「こういう時でなければ、観光を楽しみたいものでしたが・・・」

 そんな咲那の気持ちをわかっているのだろう。鏡香もそんなことを言ってくる。

「まあ、あたしゃ風情とかそういうのは全くさっぱりだけどな・・・でも、たまに一人で風景を眺めていたいという気持ちになることはある」

「この件が片付いたら、晶君たちも誘って空の旅をしましょうか」

「・・・それもいいかもな」

 何とか無事でいてくれ、モリガン・・・。

 咲那は、蒼穹の空を見上げ、未だ連絡のつかないモリガンのことを思ったー。
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